いつからともなく夜間、小便に起きるようになり、それも朝までに何回も目が覚めるようになってきた場合(この状態が全部病気というわけではないのですが)60歳代を中心とした実年の男性では、前立腺肥大症が原因していることが多いようです。前立腺は、膀胱(ぼうこう)のすぐ前方下にあって、大きめの栗の実のような形をしたもので、その中心部を尿道が通っており、精液の大部分を作っています。この前立腺にコブができて前立腺全体が大きくなってきた状態を、前立腺肥大といいます。肥大した前立腺は、初めは膀胱の敏感な部分を刺激して小便が近くなり(特に夜間頻尿)、やがて前立腺の中を通っている尿道を絞めつけて尿の通りを悪くしますので、排尿困難が生じ、ついには出し切れない尿が膀胱に残るようになります。そしてこの残尿が増加すると腎臓の働きも低下してきたり、のどが渇きやすくなったり、さらに進むと尿が膀胱にいっぱいたまったまま出なくなったりします。
前立腺のがんでも同様な症状が出ますが、肥大症の場合は、がんのように飛び火しないので、尿が詰まって尿毒症にならない限りは、命をとられることはありません。最近は治療法も進歩して、手術をしなくても治る例が多くなってきているのが強みです。詳しいことは専門医にご相談ください。 〈富士市医師会〉