いつ起こっても不思議ではないとか、起これば静岡県下に大きな被害が予想されるともいわれている「東海地震」この地震も予知ができれば被害を最少限にくいとめることができます。
東海地震の発生直前に起こると考えられている富士川断層の異常な動きをとらえようと、東京大学地震研究所が市役所屋上に光波距離測定装置を取り付け、市地震防災対策室と協力して毎日観測しています。
そこで、この観測がどのような考えに基づいて行われているのかなどを恒石幸正先生の説明で紹介します。
市役所屋上に光波測定室
市役所の屋上西側に「光波測定室」という看板の掛かった部屋があります。中央に黒い鉄の台が立っていて、その上ににオレンジ色の器械が載っています。
壁ぎわには数字が電光で表示される計器が置かれています。
光波測定室は「東海地震」を予知するための施設です。
2年前東京大学地震研究所が器械を取り付け、毎日の観測は市職員が受け持ち、データの解析は地震研究所が行っています。
これと同様の観測施設は、富士川町役場と富士宮東高校にも置かれ観測されています。
地震も予知できれば
過去、東海地震は150年から200年の間隔でくり返し発生してきました。
最新の地震は、安政元年(1854年)に起こっていますので、131年経過した現在そろそろ次の地震が心配になる時期です。突然、大地震に見舞われたとしたら、ものすごい被害が生じることでしょう。
今日の科学技術では、地震の発生をくいとめることは不可能ですが、地震による被害を軽減するためには「地震予知」が有効です。
地震の発生を事前に知ることができたとすれば、こと人命に関して地震はそれほど恐ろしい現象ではなくなるでしょう。
断層が動けば地震になる
地震予知の方法はいろいろ考えられていますが、どの方法にも共通している点は、平常時から観測を続けていき、その結果から異常の発生を見い出そうとすることです。この意味では屋上の施設も全く同じです。
しかし、ここではいくつかの点で地震予知の新しい試みがとられていますので、その原理と観測方法を説明します。
富士川河口から「富士川断層」が北へ延びています。この断層は、安政地震の際に活動したばかりでなく、過去1万年もの間、くり返し動いてきました。
断層が動けば地震になると考えてください。
ところで断層は自分の力で動くわけではなく、周囲の土地の圧力に押されて動き始めるものです。
地球は硬い岩石からできていますが、岩石といえども、押したり、引いたりするとわずかながら伸び縮みします。ですから断層周辺の土地の伸び縮みを毎日観測していれば、地震の発生時を予測できる可能性があります。
高精度で測定
屋上の光波測定室の中にある器械は、数キロメートルの距離を瞬時に1ミリメートル単位の精度ではかることができます。
空中にレーザー光線を発射して、測定点の反射プリズムから反射されてくる光線と重ね合わせて距離を測定するわけですが、光の速さは、大気の状態によって左右されますので、気温、気圧、そして湿度を正確に測定し補正する必要があります。
光波測定室の壁ぎわにある器械はそのためのものです。
今は異常な変化はない
観測は、毎朝市役所の屋上から鷹岡小学校、松岡の早房マンション、富士南中学校までの距離を測定しています。これらの建物の屋上にはレーザー光線をはね返すための反射プリズムが取り付けられています。
毎日順調に続けられている観測結果ですが、今のところ東海地霞の発生が近づいているというような異常な変化は観測されていません。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 今日も観測する市職員と恒石先生(四角内は反射プリズム)
( 写真説明 ) 市役所屋上の光波測定室
- 図表あり -
( 図表説明 ) 富士川断層と観測点図
( 図表説明 ) Q 市役所
( 図表説明 ) G 鷹岡小学校
( 図表説明 ) A 早房マンション
( 図表説明 ) K 南中学校
( 図表説明 ) O 富士川町役場