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【広報ふじ昭和58年】森林を守る総合利用推進事業

須津川渓谷周辺を整備

大棚の滝をキャンプ場や林間広場など

 富士市は、総面積の約半分が森林です。この森林は、郷土を災害から守るとともに、“日本一の紙の都”としても繁栄させました。森林を守り、有効に活用していくことは、私たちに課せられた大きな責任です。
 市は、森林の生産機能と保健休養機能の調和を図りつつ、林業の活性化を図ろうとする「森林総合利用推進事業」をすすめています。現在おこなっている、須津川渓流谷周辺の黙備事業もそのひとつです。

- 図表あり -


愛鷹山は壮年期地形

 この事業を紹介する前に、まず、愛鷹山について知っていただきたいと思います。
 私たちが富士山とともに毎日見ている愛鷹連峰は、富士山の土台である小御岳(こみたけ)、箱根の外輪山とともに、今からおよそ十数万年前にできたと考えられています。現在の富士山が約1万年前とされているので、それよりもずっと古いことになります。
 愛鷹山も初めのころは、現在の富士山のように円錘形をしていたものと想像され、その後、侵食によって次第に渓谷をなし、長い年月を絶て現在のような火山の壮年期侵食地形を形造りました。
 越前(えちぜん)岳、鋸(のこぎり)岳、位牌(いはい)岳などからなる愛鷹連峰は、崇高端麗(たんれい)な富士山とは対照的で、探山幽谷を思わせ、その容姿は朝日に映え、夕日に輝いて四季折々の色彩を楽しませてくれます。
 愛鷹連峰にはたくさんの渓谷があり、須津川渓谷は、黄瀬川へ流れる桃沢川と並んで、その代表的なものといえます。


山系随一の渓谷

 須津川は、源を熊ヶ谷と呼ばれる噴火口に発して、沼川と合流するまで約13キロメートル。渓谷の美しさは山系随一で、河川の上・中流に冷い清らかな水が流れています。そして、この川岸に沿って繁殖する植物も多種多様で、植物を観察する上でも貴重な場所といえます。
 秋の紅葉、春の若芽が渓流に映え、山椒魚が小石の間に遊び、夏の夕暮れには小鳥のさえずりがいっそう涼しさを増します。
 春、夏、秋とそれぞれ、渓谷の美しさを満喫させてくれるのが、この須津川渓谷です。市内の登山者やハイカーはもとより、遠く県外から訪れる人たちも少くありません。
 中里登山口から須津川をさかのぼると、6キロメートル地点に大棚の滝があります。落差21メートル、夏の水温は14度から15度位、冬は4度から5度位の清水が、ごうごうと落下する壮観は山中第一の眺めです。
 このように、市内ではまれな渓谷美と清流を持つ須津川渓谷ですが、その整備はほとんどなされておらず、大棚の滝付近に、わずかばかりの施設があるにすぎませんでした。また林業面においても相当立ち遅れているのが現状です。

林業経営の活性化を

 森林総合利用促進事業は、森林に林間歩道やキャンプ場などの野外レクリェーション施設を設け、森林を総合的に利用することによって、経営の合理化を図ろうというものです。
 須津川渓谷周辺の整備計画は、この森林総合利用促進事業として、昭和55年度から行っています。
 おおよそ、昭和59年度までの5か年間を期間とし、事業費は約4,000万円を見込んでいます。
 事業の対象となる地域は、須津川渓谷上流にあたる、大棚の滝を中心とした大沢・金山地区です。
 事業内容としては、大棚の滝周辺に林間歩道や林間駐車場、林間広場、それにキャンプ場などを設け、これらの施設が利用しやすいように、案内所や休憩所なども設置します。
 この事業は先にも述べたように、ただ単に森林内に野外レクリェーション施設を設けるというものだけでなく、森林の生産機能を向上させるという点にも重点が置かれています。したがって、森林の生産機能を破壊するような、大面積の伐採はもちろんのこと、小面積の伐採といえども、必要最少限にとどめるように留意しています。


“滝見橋”が完成

 事業内容について、もう少し詳しく紹介します。
 昭和55年度の事業開始から現在までに、キャンプ場、林間広場、林間駐車場、林間歩道の一部を設置しました。それに今年度事業として、つり橋も完成。
 林間駐車場は、敷地としてまとまった面積がとりにくいため、林道沿いに適宜空地を見つけて駐車場としました。
 林間広場は約1,000平方メートルで、広場内の立木はなるべく伐採せず、枝打ちや切りすかし程度にとどめました。
 林間歩道は、すでに完成したつり橋から小麦石展望台に登り、さらに金山展望台と続き、既設歩道を経て柵上橋に戻る2,100メートルこの周遊コースとしました。
 つり橋は、大棚の滝展望台から階段を下りきった所に設置し、長さ33メートル、幅1.5メートルで、“滝見橋”と名づけました。
 キャンプ場は、林内の空間を利用して配置し、テントサイト26か所を設けてあります。
 今後は、管理施設として総合案内所、休憩所、給配水施設、照明施設などを設置していきます。

絶滅寸前の植物も

 大棚の滝を中心とした須津川渓谷の自然景観は、清流に四季折々の姿を映し、すぐれた自然環境を形成しています。
 しかし、近年心ない人たちのために、春の山肌を美しく染めたアシタカツツジなどの代表的な植物が、めっきり少なくなってしまいました。
 清流にはごみが散乱し、良好な自然環境が損なわれようとしています。
 自然は、私たち人間の祖先よりずっと古い時代から育まれてきています。いわば人間は、自然の中で生活し、自然に守られて生きているといった方が妥当かもしれません。
 山の中へごみが捨てられたり、植物が取られたりすることによって、景観ばかりでなく、自然のサイクルも変わってしまいます。一度壊した自然は容易に取り戻すことができません。私たちと共に生きている自然を大切にしましょう。

- 写真あり -
( 写真説明 ) 自然豊かな須津川渓谷
( 写真説明 ) 滝下に設けられた“滝見橋”は目玉の一つ
( 写真説明 ) ごみは絶対にすてないで…
添付ファイル
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