【広報ふじ昭和53年】昭和53年度の施政方針『生活と生産が調和する産業文化都市』をめざして
富士市議会3月定例会本会議2日目は10日午前10時開会、昭和53年度一般会計予算ほか議案42件を一括上程したあと、渡辺市長三選後初の施政方針演説を約1時間10分にわたって行われました。
昭和53年度の施政方針の中で渡辺市長は今後の都市づくりの基本理念として落ち着きのある地方都市の魅力が改めて見直され、人口の地方への定住時代が今その幕を開こうとしています。とくに高度経済成長の残した功罪を振りかえるとき、その感をことさら深くしています。こうした点を踏まえ「生活と生産が調和する産業文化都市」の実現、具体的には、次の5つの都市像をめざし、個性と魅力ある“ふるさと”づくりをすすめていく方針です。
1.富士愛鷹山麓の自然や生活と環境を守る人間環境都市
2.こどもや老人を大切にする豊かさとやすらぎのある福祉都市
3.創造性豊かな人づくりと香り高い文化を育てる教育文化都市
4.だれもが希望をもって働くことのできる活力ある生産都市
5.市民を主体とした市民のための市民都市
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( 写真説明 ) 施政方針をのべる渡辺市長
●個性と魅力ある“ふるさと”づくりを
つぎにこの5つの都市像について具体的に説明しましょう。
◇富士愛鷹山麓の自然や生活と環境を守る人間環境都市とは……
都市には、今さまざまな面で多くの都市問題が顕在しています。地震火災による大災害の危険、自然破壊や公害、廃棄物、交通事故、さらには資源不足や物価の高騰など、どれ一つをとってみても、市民の生活そのものに大きなかかわりをもつ問題であり、市民を常に環境悪化と危険から守り、富士愛鷹山麓のすぐれた自然や快適、健康、安全な生活環境のもとで、すべての市民が豊かな生活を享受し得る内容の充実した人間環境都市を目指していきます。
◇こどもや老人を大切にする豊かさとやすらぎのある福祉都市とは…
都市には、こどもや老人等いろいろな人たちが共存しています。これまでも市民の理解と連帯に基づく福祉の風土づくりを積極的にすすめてきましたが、今後とも次の時代をになうこどもや社会をささえてきた老人を大切にするとともに、心身障害児(者)やその他の弱い立場にたたされている人々を暖かい目で正しく理解し人間として尊重されるような環境をつくり、すべて市民が思いやりと助けあいの心をもって生活のできる人間性あふれる福祉都市を築きあげていきます。
◇創造性豊かな人つくりと香り高い文化を育てる教育文化都市とは…
めまぐるしく変ることが予想されるこれからの社会環境に市民一人一人が適確に対応できるためには、自らが新しい時代意識をもち、流動化する社会に適応し得る創造力とたくましい行動力に富む人間であることが望まれます。このためには、人づくりの基礎的な場としての義務教育環境を質、量ともに充実することはもとより、高次教育機能の誘導や市民の心のよりどころとなる郷土文化を育む風土づくりをすすめ、市民のだれもが整えられた教育環境のもとで生涯を通じた教育の機会が保障され充実した芸術、文化活動が行える情操豊かなうるおいのある教育、文化都市を目指していきます。
◇だれもが希望をもって働くことのできる活力ある生産都市とは……
都市には、快適で住みよい生活の場と調和のとれた生産の場が必要です。とくに本市は、これまで地場産業である製紙業を基盤として生産都市の地位を確立してきましたが、これら経済基盤の中核をなす製造工業が商業や農林業とも相互に矛盾することなく調和する状態で存立し、だれもが生きがいと希望をもって働くことのできる活力ある生産都市をつくりあげていきます。
◇市民を主体とした市民のための市民都市とは……
都市は、市民参加によってつくる共同体であり、都市の個性や魅力づくりも、所詮は市民意識の総合力に依存するといっても過言ではないと思います。その意味において、本市はこれまで行ってきた市民との対話行政を貴重な経験として活かし、市民エネルギーを市民参加にまで高めるための条件づくりをさらに推進することが必要であり、市民や企業もその役割と責任に応じ、相互に協力して都市づくりに参加し、郷土のよいもの、特色あるものはこれを積極的に守り育てながら、市民主体の生き生きとした市民都市を築きあげていきます。
53年度の重点施策 豊かさと充実した市民生活の実現へ
昭和53年度は「豊かさと充実した市民生活の実現」を市政運営の基本目標として取り上げ、この基本目標実現のための4つの重点施策を柱に編成されています。
第1に、機能的な都市基盤の整備。
第2に、災害防止対策事業の推進。
第3に、安全で明るい豊かな市民生活の保障。
策4に、人間性を培う教育、文化の充実。
それではこの53年度予算がどのように使われるのか、そのあらましを紹介しましょう。
■機能的な都市基盤の整備
●下水道事業に30億2,000万円
現代的都市生活基準の向上をはかるための基礎的施設としての下水道事業は、新年度も昭和55年の供用開始をめざす富士処理区終末処理場の整備と吉原及び富士の下水管布設等を行うほか、市街地の雨水対策として都市下水路3路線の築造と簡易下水路の整備をはかります。
◇道路整備に 8億1,000万円
毎年度積極的にその整備をはかっているが新年度も、主要な一般市道34路線の新設改良をはじめ舗装や維持改良を実施するほか、都市計画道路についても国庫対象6路線と市単独事業による幹線街路13路線、県施行による4路線を整備します。
また、道路や側溝の修繕等、市民の身近な生活環境をよくするための緊急対策整備事業、いわゆる「すぐやる予算」については、新年度から1件あたり5万円の限度額を10万円に増額し、1,000万円を予算化して市民の要望に直ちに応えることになっています。
◇土地区画整理事業に 11億6,000万円
都市機能の向上と秩序ある街づくりをすすめるための土地区画整理事業は、引き続き富士駅周辺および依旧原新田、富士中部3地区の整理事業に拍車をかけるとともに、組合施行による浜田、および、神谷土地区画整理事業の推進をはかります。
◇水道事業に 4億2,000万円
上水道事業は、昭和46年から実施してきた第4次拡張事業が新年度をもって終了するので、目標年次を昭和60年とし、今後の公共下水道の普及や簡易水道の統合等により給水需要の増大に対応していくことになっています。
◇ごみ・し尿処理に 1億1,000万円
ごみ処理については、地域ぐるみでの巾広い市民の理解を求めながらごみの減量運動と再利用化および分別収集の徹底をはかり清潔な街づくりにつとめていますが、施設整備としては、ロード・パッカー車等収集車両7台の更新と第1清掃工場の焼却施設の補修を行います。
し尿処理につきましては、水洗化がすすむとはいえ第1清掃工場の処理施設の老朽化と浄化槽の汚泥の増加により新たな処理体制を確立する必要があり、現在、プロジェクトチームによってその対応策が検討されこの結果を待って具体的な施設整備をすすめてまいります。
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( 写真説明 ) 急ピッチに進められる護岸工事
●緑と自然の保護・育成に3億円
都市に潤いを与えるうえで欠かすことのできない緑と自然の保護・育成策としては富士・愛鷹山麓の自然を守ることを基調に「自然環境の保全と緑の育成に関する条例」に基づく諸施策を一層すすめるとともに「緑いっぱい市民の会」を中心とした緑化活動等を通じて、市民緑化の輪を更に広げていきたい。
また公園緑地の整備は、富士緑道および総合運動公園をあわせ、10公園の整備と土地開発公社事業による公園用地の取得を行っていきます。
このほか三四軒屋緑道整備や街路樹植栽、みどりのマスタープラン策定委託等にも配慮し、より広い緑の街づくりを推進することになっています。
◇農林業基盤整備に 10億2,000万円
土地改良をはじめとする農業基盤整備は、引き続き県営東部圃場整備事業、沼川および大淵畑地総合整備事業等を推進するほか市、県単独ならびに県営、団体営、非補助土地改良事業による農道、排水路などを整備し、生産性の高い都市近効農業の展開をはかることになっています。
また、林業については、森林のもつ公益的機能を高めるため、新年度から富士市を中心に4市1町により中核林業振興地域整備事業を実施、林道の開設と舗装事業を行い、計画的な林業基盤の整備をはかります。
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( 写真説明 ) 富士愛鷹山麓に広がる大自然
■災害対策事業の推進
市民生活を災害の危険から守り、安全な街づくりを創造することは、人間環境都市を標傍する富士市にとって重要な課題です。とくに一昨年8月の県東部を中心とする豪雨災害や東海大地震を契機として市民の防災に対する意識は一段と高まり、新年度は重点的に取り上げました。
◇河川災害対策に 1,500万円
河川災害対策は、災害復旧助成事業の指定を受けました赤淵川、須津川、滝川、沼川の各水系の抜本改修に拍車をかけるとともに、中小河川21か所の新設改良ならびに浚せつ、工事をはじめ災害住宅復興建設資金融資事業や浸水住宅改良促進助成事業、がけ地近接危険住宅移転事業などがそれぞれ予算化されています。
◇地震対策に 3億1,000万円
昨年当市で行われた県総合防災訓練の成果を踏まえるとともに、去る1月に発生した伊豆大島近海地震を生きた教訓として受けとめ、地域ぐるみで今後に対処することが必要でありますが、当面、震災時における市独自の避難、救急、救援等の具体的計画の策定を急ぐとともに、昨年に引き続き耐震用100トン防火水槽20基と40トン防火水槽35基の設置にあわせ可搬式小型動力ポンプ及び防災用行政無線の整備をはかりました。
■安全で明るい豊かな市民生活の保障
◇公害防止対策に 2億1,000万円
公害防止対策は、これまで市民生活最優先の立場から、これらに懸命の努力を重ねてきましたが、なお多くの解決すべき事項が残されています。とりわけ総量規制に基づく硫黄酸化物の新環境基準の早期達成と対策のおくれている窒素酸化物および悪臭対策の確立をはかり、硫黄酸化物の高濃度汚染地域を中心としたガス転換事業の促進や各測定局の機器の整備による監視体制の充実、公害発生要因の適正な把握と改善指導のための窒素酸化物および悪臭調査の実施を柱として、発生源規制の一層の強化をはかり、市民の健康保持と環境の改善につとめます。
◇交通安全対策に 1億円
官民一体となった努力にもかかわらず、昨年は事故死亡率が人口10万人以上の都市で全国一という不名誉な記録を示し、運転者をはじめとする市民総ぐるみの交通安全運動の徹底が今後とも必要です。新年度は、こうしたことに対する市民意識の高まりと行動をもとに、関係機関等と緊密な連けいを深め、とくに幼児、老人、自転車利用者等の安全に重点をおきます。
◇住宅対策に 7億7,000万円
明るい豊かな市民生活の基礎は、快適な生活環境と調和した住みよい住宅の確保にあります。このため富士見台および田子浦団地にそれぞれ40戸の市営住宅を建設するほか、勤労者持家住宅建設資金融資ワクの拡大と老人同居世帯住宅改良資金事業を引き続き行います。
◇児童対策に 2億6,000万円
こどもを大切にする施設でありますが、周辺の環境条件等から移転が望まれている蓼原保育園の用地先行取得と土地開発公社事業による第3保育園の建設費助成および運営費の増額をしたほか、児童の遊び場の整備、母子家庭等児童の入学祝金等について措置しました。
なお、保育料は、国の毎年の改定にもかかわらず、当市は福祉政策上から本年度は改定を見送りましたが国の徴収基準額との間に相当の格差が生じ、新年度から改定に踏みきりました。改定にあたっては、第2子以降の保育料軽減措置を全階層に設定する等、現行保育料を調整改定し保護者の負担の適正化をはかることにしました。
◇老人対策に 7億1,000万円
かねてから強い要望の富士および吉原老人ホームの統合整備に備え、基本構想、基本計画の策定をすすめるほか、簡易老人憩いの家設置に対する助成、ねたきり老人やひとり暮し老人のための特殊寝台や寝具の貸与、入浴車巡回サービスなど老人福祉の向上をはかっていきます。
また、仮称田子浦福祉センターは土地開発公社で取得済の用地費と設計委託を行い54年度着工に向けて諸準備をすすめています。
◇医療対策に 3億8,000万円
市民の健康を守る医療対策は、新年度も市立中央病院に医療技術の進歩に対応した検査機器の導入をはかるほか、市民の切実な願いであります同病院の整備充実に3億3,000万円をかけ新年度から実質的事業に着手します。
また、休日、夜間の救急医療体制についても医師会の協力をいただき更にその充実につとめるほか、市民要望の強い歯科の救急体制については歯科医師会の協力が得られ、新年度の4月から休日の救急診療が実施されることになりました。このほか心身障害児(者)や乳幼児のための「歯科診療所」の建設は新年度着工予定で諸準備がすすめられています。
◇医療費保障に 6億7,000万円
新年度も乳幼児と母子家庭児童及び老人の医療費の無料化、重度心身障害者と精神障害者への医療費助成。
また大気汚染にかかる健康被害者の補償給付などや成人病検診の公費負担等を引き続き行っていきます。
◇中小企業振興対策に 6億円
新年度は、不況対策として最も緊急な金融対策に特段の力を入れ、今まで要望のとくに多かった小口資金の貸付限度額について県及び信用保証協会と再三にわたる協議の結果、200万円を300万円に引き上げられ、これに伴う資金預託の増額をはかるとともに、地場産業対策の一環として県中小企業緊急不況対策融資制度による助成を措置しました。
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( 写真説明 ) マンモス化する富士見台団地
■人間性を培う教育・文化の充実
明日をになう世代の教育と豊かな郷土文化の創造は、極めて重要であり、これらの活動が常によい環境のなかで行えるよう最大の努力をはかります。
◇義務教育に 28億8,000万円
新年度は、すでに債務負担行為によって工事をすすめてきた仮称富士南小学校および今泉小学校第2期改築事業のほか、新たに仮称天間小学校の新築事業、丘小学校増築事業、東小学校並びに吉原第二中学校改築事業、東中学校特別教室新築事業、吉原小学校改築設計委託、さらに仮称富士見台中学校用地取得や大淵第一小学校増築のための用地取得など児童、生徒の急増対策と校舎の鉄筋化をすすめます。また、学校体育施設としては、仮称富士南小学校と岳陽中学校にプール新設、吉永第一小学枚および東中学校プール用地の取得や富士見台小学校、大淵第一小学校体育館の新築事業をすすめ、児童生徒の体力向上につとめます。
◇社会教育に 2億6,000万円
生涯教育の必要が強く求められている今日、その成否のカギといわれている社会教育の振興にも意欲的に取りくんでおり、とりわけ豊かな郷土文化を振興することは、ともすれば見失なわれがちな心の豊かさを育てるうえで重要な要素となります。
このため新年度は、西富士有料道路埋蔵文化財発掘調査や、懸案であった郷土博物館の54年度着工をめざし用地造成を行うほか、各種文化団体、学識経験者等の意見を聞く「市民文化懇談会」を発足させるとともに、仮称総合社会文化会館などの建設についても検討しています。
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