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【広報ふじ昭和51年】南富士ゴルフ場の和解協議あらまし

防災最優先の基本姿勢をもって

 南富士ゴルフ問題は、昭和47年いらい富士市の最もゆるがせにできない重大なる事案として取組んできたものです。「山ろくの大地は市民共有の資産。緑と自然を適正に保全しなければ……」この市の行政方針を無視し、強引に造成しつづけてきた南富士ゴルフ場に対して、“建設阻止”への市民の署名や抗議、市議会の厳しい対応、さらには、国、県の強力な支援を受けて、「既成事実をもってのなし崩しは許さない」強い姿勢を貫いてきました。しかし、この問題も、里道(国有財産)の裁判(国と南富士ゴルフの係争)によって和解勧告がなされていらい富士市も利害関係者としてこの和解協議に加わり、南富士ゴルフに対し防災対策上の諸施設の整備、植栽、災害補償の履行とその保証など市民の生命、財産の安全確保のための必要な諸条件の整備を急がせています。
◇大規模開発に“まった”

 富士・愛鷹山ろくは、自然の美しさとともに、郷土の先覚者たちが他の地域にさきがけて営々と植林し、その造林された“緑”によって、この山ろくの大地が守られているのです。また、この美林は郷土を守るためにも祖先から現代のわれわれへと引継がれてきていますが、そこには営林に携われた多くの方々の労苦があったからこそ、緑の宝庫が培われてまいったものであります。
 しかし、昭和47年から49年にかけて日本列島をおそったゴルフ場、レジャー施設によって代表される土地の乱開発と、投機的な土地取引が行われ、土地問題は当時重大な社会問題となりました。
 この富士・愛鷹山ろくへもゴルフ場などの構想計画が相次ぎ、その面積は鷹岡地区の全面積に匹敵するほどのぼう大なものでした。南富士ゴルフもその中の一つです。
 こうした土地買収や大規模な開発事業を、起業者の思いのままにさせるわけにはいきませんでした。それは、富士市の地形が、富士・愛鷹山の急な斜面の山頂付近から、しだいにゆるやかな斜面となり,平地へと続いていることと、山ろくの森林が地下水をかん養し、治山治水に大きな役割を果しているので、“災害”に通じる恐れのある土地開発に対しては、極めて厳しい措置を講じなけれはならなかったのです。


今日までの行政の対応

 まず、48年3月にゴルフ場等の大規模開発事業の審査保留の措置をとり、引続き、49年4月にゴルフ場の大規模開発事業を認めないとする“緊急避難”の行政方針を打出して、対応したのであります。
 ちなみに、この行政方針は標高200メートル以上の地域で、10ヘクタール以上の開発事業を対象としました。
 この行政方針を打出したことによって、異常な開発ラッシュも“小休止”する一方、また、石油ショックにより経済活動も停滞化し、土地問題もようやく鎮静化の傾向を見せはじめました。しかし、南富士ゴルフだけは、私有財産権の主張と、多くの会員をかかえていることを理由にして、49年8月ころから造成にとりかかり、50年10月には仮オープンの事態に至ったものであります。
◇ゴルフ場などの乱開発への警鐘…市民世論とともに…

 この間、南富士ゴルフの造成行為に対して、富士市は再三にわたり工事の中止を通告いたしました。一方市民自からの建設阻止の署名や市民団体による抗議行動がとられてまいりました。市議会においても富士愛鷹山麓保全対策特別委員会での審議や現地調査が何回となく行われ、この問題に対する検討がなされました。
 また、国、県もこの問題を重視し富士市の方針に全面的に協調して、強力にバックアップの統一行動をとってまいりました。
 ゴルフ場規制の法整備のなされていなかった当時の、法律的には野放しのいわゆる“無規制”の状況下のなかで、このゴルフ場を阻止する手立ては、残念ながら行政指導の場においての対応に留まらざるを得なかったのが実情であります。

河川や里道の復元と国有財産明け渡しで訴訟
 しかし、とりうるあらゆる手段のなかで国、県とともに南富士ゴルフが造成地内にあった普通河川(滝川の上流)や里道(国有財産)を一方的に取込んでしまったり、こわしてしまったため、これらの復元を求めるとともに、告発や国有財産の明け渡しをさせる訴えをおこしました。


◇市議会にはかり和解協議へ…

 国有財産里道の土地明け渡しの裁判は、国と南富士ゴルフとの間で法廷の場で争われてきましたが、昨年10月15日第4回目の口頭弁論の場において裁判長から和解勧告が出されました。また、裁判所において富士市をこの和解協議の利害関係人とする決定もありましたので、市当局は市議会にはかり、和解協議に臨むことになりました。
 和解協議は、昨年11月から今日まで12回にわたって開かれていますが、富士市としては和解に臨む基本姿勢を“防災を最優先させる”ことを条件にして、次の7項目を南富士ゴルフに履行させることにしました。

1.防災工事の実施
2.普通河川の復元と河川の一部補修
3.緑地の確保と植栽の実施
4.森林育成事業拠出金
5.防災工事実施の保証
6.災害補償の履行に関する保証
7.里道の取扱い措置
 以上が和解協議の基本的項目ですが、具体的に実行させるための保証として次の協定をとりかわしたのです。
とりかわされた協定内容は…

■防災工事の施行に関する協定
 この協定は、51年4月15日にとりかわしたもので、1)調整池の総貯水容量60,000立方メートル(ゴルフ場がつくったものより約10倍以上にさせる)とするための調整池の新設拡張をする。2)砂防堰堤を6基築堤する。3)河川の一部改修をするこの工事は今年の8月末までに完了させる。また、工事保証の担保として7,739万円の約束手形と、1億円の定期預金証書が市に預託されています。

■森林育成事業拠出金に関する協定
 この協定は、51年4月15日にとりかわしたもので、富士市の森林育成事業に充てるための拠出金として、1,750万円を拠出するというものです。この拠出金は5月31日に入金されましたので、市は予算計上して、森林の育成のために使うことにしています。

■災害補償の履行及びその保証に関する協定
 この協定は、51年6月10日にとりかわしたもので、ゴルフ場に起因する災害が発生した場合は、その災害補償の履行を保証するというものです。補償期限は無期限ですが、今後4年間については2億円の定期預金証書と、1億円の約束手形が市に預託されています。

■道路整備工事の施工保証に関する協定
 この協定は、51年7月16日にとりかわしたもので、ゴルフ場内を南北に貫通させる1路線の新設道路工事を施工させるためのもので、工事の完了期限は8月末。この施工保証として現金1,500万円が市に預託されています。
 なお、この協定は国有財産である里道の管理者としての静岡県知事、富士市長、南富士ゴルフの三者によってとりかわされています。
 列記した協定は、いずれも公正証書として作成されています。
 いずれにしても、南富士ゴルフ問題は、自然環境を守る市の行政の対応のさきがけのなかで、まさにわが国の土地問題に対しての警鐘を打ちならし、その後の都市計画法や森林法の改正、国土利用計画法などの制定を見るに至った一つの契機になったともいえましょう。
◇約束ごとの完全履行をもとに和解への最終段階に

 富士市は、市民の合意を得ながら南富士ゴルフへ4年間にわたって対応してきました。しかし、この造成行為が法整備以前に引き起こされたことであるので、里道訴訟の和解勧告の経緯を踏え、南富士ゴルフが和解協議事項である諸々の約束ごとを完全に履行することを条件に“和解”への最終的な段階に至っておるところであります。
 なお今後とも、富士・愛鷹山ろくの自然環境の保全と、乱開発の防止については、富士市がこのほど制定した「自然環境の保全と緑の育成に関する条例」や、都市計画法、森林法など各種の法令とあいまって、適切な対応をしていくことにしています。特に、市条例の適切なる運用にあっては、市議会議員、公共的団体の代表、知識経験者などによって構成されている“自然環境保全会議”も設置されていますので、富士愛鷹山ろくの自然に影響を及ぼすおそれのある土地利用事業に関しては市民の合意を得つつ、より適正な措置を講じてまいります。
- 写真あり -
( 写真説明 ) コース内へ復元なった河川
( 写真説明 ) 防災のために拡張させた調整池
( 写真説明 ) 河川へ設置された砂防堰堤
( 写真説明 ) 南北に貫通する新設道路

◎美しい 日本の四季を 子や孫に
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