広報よしわら 昭和41年12月に富士市と鷹岡町と合併した吉原市広報紙の全記録

昭和41年 5月5日発行 内容

工業用水確保へ万全

私たちの岳南地区は、山ろく一帯から湧出する豊富な地下水をもとに“紙の都”として栄え、いまでは全国1の生産量をあげています。ところがここ数年、製紙産業にもっとも必要な「水」に塩水が混入し、機械がさびたり、紙が変色するなど大変心配され、良質な工業用水の確保へあの手、この手が講じられています。昨年4月から給水された富士川工業用水道もその1つ。それに待望の「東駿河湾工業用水道」の建設がいよいよ、ことしから8年計画ではじめられることになりました。岳南地区民にとって“福音”というべく、東駿河湾、富士川両工業用水を紹介しましょう。

東駿河湾工業用水道 46年に一部給水

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岳南地区に日量30万トン
東駿河湾工業用水は、日本軽金属蒲原工場の発電余水300万トンを水源に=写真=吉原市、富士市、鷹岡町、富士川町、蒲原町、由比町、清水市、静岡市の4市4町に工業用水と家庭用の水道用水を供給するために行われるものです。
 この地域の人口は、約80万人。富士川のデルタから安倍川までの50キロの臨海地帯で、田子の浦港と清水港があり紙パルプ、化学、石油などの工業が発達しています。昭和39年の生産額は4,470億円と、県工業生産額の約42%を占めています。
 ところでこの地域の工業用水は1日に207万トンが使用されています。とくに、わたしたちの岳南地区は工業用水の使用量が多く、1日に170万トンを数えています。
 岳南地区の45年の使用量は313万トンになる見込みですから、どうしても新しい工業用水が必要なわけです。
 また静清庵地区は、現在、1日38万トンの水を使っていますが、昭和45年には58万トンの水が必要になる見込みです。しかし、1日に9万6,000トンの給水能力のある静清工業用水も給水能力は限界なので、新しい工業用水が必要というわけです

上水道にも19万トン
 ところで東駿河湾工業用水道の計画は、日本軽金属の第2発電所の発電余水300万トンを、途中から取水します。これを取水ポンプで岳南地区に日量30万トン、静清庵地区に日量15万の合計45万トンを取水し、浄水場で浄化して送水するほか、上水道用水として、19万トンを取水する計画です。
 総事業費は91億円で本年度から8ヵ年継続事業で行われています。昭和46年には一部に給水を始め、昭和48年には全区域に給水を開始する予定です。
 41年度の事業費は3億円で、浄水場用地の取得や測量調査を行い、42年度から本格的な工事に着手することになっています。

富士川工業用水道 すでに18社使用 ボーリングで拡張計画も

 富士川工業用水道は、本来の農業用水を分流して、富士市内および吉原市内の製紙工場に給水しているものです。またこれは前項の東駿河湾工業用水が完成するまでの応急措置対策ともいえるものです。
 吉原市内の臨海地域、つまり鈴川の一部と和田川流域地帯は、昭和38年の夏ごろから、折りからの地下水位の低下に加えて、塩水の混入が目立ち、39年には抄紙機能が阻害されるまでになり、関係各社の要望とともに市は、この実情を県当局に訴え、善処分を要望したのです。
 結果、富士川からの取水供給となったもので、現在すでに中小企業を主体に18社が使用し、残る5、6社も近く、この用水を使うことになっています。  しかし、この給水量は会社の要望をみたすものではなく、なお不足の状況にあるので、県では市とともに富士川工業用水の拡張を計画し、現在須津地区に、地域住民の協力をいただき新たに水源を求め、いまテストボーリングにあわせ、各種の調査を行っています。
 この拡張工事が予定通り完成すれば、これで一応当面の水不足は、なんとかきりぬけることになります。
 このように、工業の原動力となる「水」は、富士川工業用水道、東駿河湾工業用水道、須津地区のボーリングなど、いろいろな策が講じられています。

‐ 写真あり ‐
(写真説明)・・・写真は昨年4月から吉原市内の製紙工場に日量4万トンを給水している富士川工業用水道=富士川滝戸の沈砂地=

白ばらコーナー 初めと終わりの投票

○…選挙がたけなわになると、85才のお清ばあさんは、街頭演説はもちろんのこと、個人演説、立会い演説会へ、とことこでかけいちばん前のほうで耳を傾ける。聴きながら、いちいちうなずいたり、ここぞと思うところでは拍手をしたり、なかなか熱心である。
○…「みんな、自分が当選したらすぐ物価が安く暮らしよくなって、道路もよくなるみたいなことをいっているからいやだね。だけど“自まん党”としての政策に気に入ったものがあるから、わたしゃ好きなんだよ。それにこの歳じゃ、こんどが最後の選挙になるかもしれないから、いちばんいい投票をしなくちゃ‐
○…こんなわけで、一家はおばあさんの熱意に動かされて、だれも棄権するものはいない。
○…ことし初の選挙権をもった孫の正子さんは、まだどの党とも、どの人とも見当はつかないし、第1投票が自分のものという実感がわいてこない。その正子さんが、ふとしたことから”社かん党“の畑楽造氏の選挙事務所へ手伝いにゆくことになった。
選挙事務所といっても、正子さんは、ほとんど奥のほうの手伝いで、畑氏の演説も事務所前でしたのを聞いたくらいのものであるが、だんだん心を引かれていくのは、畑氏の心の清潔さであった。
○…畑氏だけでなく、奥さんも、むすこさんもそうで、それが選挙を前に急ごしらえしたものでなく、身についたものであることだった。畑氏はもう60歳近かったが、その情熱的なことも正子さんを驚かせた。清廉潔白で仕事に打ち込める人というのであろうか。正子さんは今まで見たり、開いたりした選挙裏の醜さや、議場でのあの争いに少なからず嫌気がさしていたのに、この人こそ、白亜の殿堂におくって恥ずかしからぬ人という気がした。
○…いよいよ、あすは投票日という夜、畑氏は「正子さんは初めての投票だね。ここで手伝っていたからと感情的にならず、だれにも左右されず、あなたの心に恥じない、清い初の投票をしなければいけないよ」と言った。
○…正子さんは、じっと畑氏の顔をみた。そして自分のもっている1票がどんなに大切かとしみじみ知ると、澄んだ声ではっきりと「ハイ」と答えたのである。
(選挙コントから)

くらしの便利帳

◇こどもの生活管理
5月初旬の連休あけにはこどもに休みぐせがついて、生活がだれ気味になるものです。5月も10日をすぎたら、規則正しい生活に早くもどるように気をつけてあげましょう。
とくに1年生は緊張した1ヶ月がすぎて、こどもによっては、ひどく疲れた様子をみせることがあります。検温をしてみて異状があるときは、できるだけいたわりながら学校に送り出してあげましょう

◇つゆの心がまえ
5月も下旬になると雨の多い日が多くなり、時にはつゆのはしりのような天候がつづくものです。そして、6月の上旬には本格的な梅雨がやってきます。 わが家の不備なところをよく調べ、雨もりなどのないように修理しておきましょう。家の周囲の水はけは、いかがでしょう。雨が床下などに流れこむことのないよう十分注意してくさい。

豆辞典

…ことばのいわれ…
うなぎのぼり
 このところ物価が「うなぎのぼり」にあがってどこのご家庭の生活もたいへんです。
 この「うなぎのぼり」の語源は‐
 うなぎは、つかもうとするとスルスル上へ上へとすりぬけることから、という説が1つ。もう1つは、うなぎは2月から5月ごろにかけて群をなして川をのぼる習性があることからこの文句があるといわれています。
 この「うなぎのぼり」という文句は、江戸末期の文献にもでていることから、かなり古くから使われていたようです。
「こいの滝のぼり」ということもよくいわれますが、こいは滝をのぼりません。  これは中国の古書に「100年たつと大川を上り竜門の滝をのぼって竜となる」とあるところから「こいの滝のぼり」ということがいわれたのです

交通標識

‐ イラストあり ‐止まれ標識
遊び場がほしい
佐藤 俊也
‐ 写真あり ‐
日本じゅうの人々がきをつけても1日に10数人のひとが死んでいる
 いくら気をつけても自動車の方からくるのではたまらない。とくによっぱらいうんてんや、いねむりうんてんはアブナイ。
 自動車の多いところはしんごうや、おうだんほどうをつければいいと思う。ここは自動車のとおる道、ここは人、ここは自転車とわければ死ぬ人もすくなくなるだろう。
 どうろのちかくでやきゅうや、ドッチボールなどをやっていて、もしボールがとんだりして、とりにいって自動車にひかれたらこまる。だから、こどものあそびばを作ってもらいたいと思う。
交通じこはとてもこわい……。(元吉原小)

市民の動き

(4月1日現在)
男 4万6,280
女 4万5,566
計 9万1,846
世帯数 2万1,805