広報ふじ 昭和41年11月に吉原市と鷹岡町と合併した富士市広報紙の全記録

昭和30年 5月1日発行 内容

教育の施策

新しい教育行政は、市民のための市民の手による姿ではなくてはならないと思います。
富士市教育委員会は、その発足以来こうした念願のもとにつとめてはまいりましたものの、省みていたらない点のみ多く、今後も益々はげんで皆さんの御期待にそうよう努力いたします。ここに昭和30年度教育に関する施策の大略をお知らせして、皆さんの御理解と御支援を御願い致します。
昭和30年度富士市教育委員会施策大綱基本方針
 我国教育の大道に立脚し、市民の公正な民意に基づき、その協力を得て本市の実情に即して、次の世代を荷う有能な人物の育成と明朗健全なる社会を建設するため、次の通り施策大綱を定めその実施に邁進する。

一、教育委員会運営施策
1、教育委員会組織の確立
2、教育委員会相互の協力
3、広報活動の強化
4、調査統計の活用
5、教権の確立
6、能率の増進
教育行政の中心である教育委員会の運営如何が、直ちに富士市教育の全般に影響することを思うとき、先ず第一に考えなければならないことは、世論にきき広報につとめることだと思います。本年度は広報活動を強化すると共に、事務局組織を合理化し施策の普及徹底を図るために、学校教育課を監励して、総務課、社会教育課と相俟ちその運営に万全を期したいと思います。

二、学校教育
(1)教職員対策
1、教育の中立性確保
2、定数の確保
3、適正配置
4、服務の厳正
5、資質の向上と能率の増進
6、健康の増進
教職員がその全体の奉仕者としての使命に自覚して、学童個々の生命人格を尊重すると共に、良き社会人の育成に全力をあげなければならないことはいうまでもありません。「自己を育つ者のみが、人を育つことが出来る」といわれるように、自己研修による教職員の地位や教養の向上が、教権の確立と相俟って教育の成果に一層の飛躍をもたらすよう、大いに努めたいと思います。
(2)学校の施設
1、五ヶ年計画による本年度事業の早期実現
2、施設、設備の均衡化
3、施設、設備の保全活用
 与えられた予算の最善活用はいうまでもありませんが、既設の施設、設備に工夫改善を加えて、学童のためによりよい学校環境を構成して、教育能率をあげなければなりません。特に施設、設備の均衡化は、地域の要望として大いに研究し、その実現に努力いたします。
(3)教育指導
1、学校経営の合理化と簡素化並に各校の特長の育成
2、基礎学力の充実
3、道徳教育、科学教育、産業教育の振興
4、教育課程の改善
5、体位の向上
6、地域社会との協力
 これはあげて「心身共に健康で明朗な学童」の育成にあたることになります。現在夫々の地域の特殊性、独自性が尊重されて、学区民の協力のもとにその地域に立脚した学校経営が真剣に実践されていることはまことにうれしいことですが、今後に残されている色々の問題は、地域社会の協力を得て着実に解決してきたいと思います。

三、社会教育
(1)社会教育
1、社会学級、青年学級、成人講座等の振興
2、社会教育施設の完備とその活用
3、社会教育指導者の養成
4、各種団体との連絡協調及びその育成
(2)文化振興
1、各種文化団体の育成強化
2、文化財の保護、顕彰
(3)社会体育の振興
1、市民の健全なレクリエーション
2、体育運動の指導奨励
 先ず皆さんに直結して、共に高めあい、楽しみあう、自主的な、自立的ないとなみを、広くみなぎらせ、その動きの上に、社会教育、文化振興、社会体育の振興を豊かにおし展げて、地域社会の要望に応えたいことを期しております。
‐ 写真あり ‐
( 写真説明上・中)・・・富士中学校第三期工事の状況
( 写真説明下)・・・田子浦小起工式

「昭和30年度」農業関係予算の大要 農産課

 本年度富士市総予算は別項の通り決定しましたが、総予算に於いて2億300万円余で内農産課の農業関係予算は産業経済費1,301万円の内594万6,000円計上されました。その内訳予算の大要を事業種目別に説明をしながらお知らせ致しますと次の通りであります。この定められた予算で最大の効果を得る様に当局では慎重に計画を推進する決心ですから農家の皆さんの何卒深い御理解と御協力を御願いする次第であります。

(1)農業委員会費 922,400円
 これは農業委員19名を以って構成し会長は市長兼任であり食糧管理法(米の供出配給)関係と一般農業の生産改良関係及農地法関係の農地移動改良等の主要農業経営全般の事業の計画運営等を審議すると共に実施する機関であり、この計画実施等に必要な会議費(委員報酬事務費)と部落農地係長事務補助金等が主なる経費であります。

(2)勧業奨励費 2,403,600円
 これは一般農林水産経営改善事業費でありまして、次の5種類に大別されている。
(イ) 勧業奨励費 985,000円
(ロ) 農業普及事業費 708,600円
(ハ) 食糧増産奨励費 310,000円
(ニ) 有畜農業奨励費 300,000円
(ホ) 水産漁業奨励費 100,000円
以上の内訳を説明すると次の通りであります。

(イ)勧業奨励費(985,000円)
 これは以上五種類に大別された(ロ)項から(ホ)項までの特別事業を除いた一般勧業事業予算でありまして、先ず部農会長の協力員手当とし25万円と部落生産係長事務補助金6万円が部農会との連絡事務関係で、その他本年度新規事業として従前寄り計画推進して来ました県立農事試験場富士分場設置の前提として先ず県委託試験地と兼ねて富士市農事氏見地設置30万円を計上致しまして今後の農業振興の基礎としする考えです。
 その他家畜防疫費3万円、特産物甘藍、玉葱、品質改善費4万円、果樹、農会、4Hクラブ、農協青年部、婦人部、青年団等農業研究団体育成奨励費15万円が主で農村生活改善事業に2万円もあります。
(ロ)農業普及事業費(708,600円)
 これは皆さんの最もよき指導者であり話し相手であります県より駐在している普及員3名(市内各農業共同組合にいる)が直接農業改良普及事業に必要な予算でありまして、主なるものは事務費、旅費、講習講和会費、各種作物、肥料、農薬、農機等の試験展示費、それから本号別項でお知らせ致しました各種農産物の品評会開催費もこれらに含まれていて、又毎月皆さんのお宅へ届けられる「普及だより」の発行費もあります。
(ハ)食糧増産奨励費(310,000円)
 これは国民食糧確保の主要食糧米、麦の増産事業費であり、先ず優良品種と優良種子を確保する為め採種圃設置費11万円と災害中の人力防除出来る病虫害防除事業費20万円を計上して食糧増産確保に努めています。
(ニ)有畜農業奨励費(300,000円)「農業は家畜がなければ農業とはいえない」と昔から云われていたくらい重要性がある家畜経営改善事業費で前号「酪農経営の富士」のあり方についてお知らせ致しました通りで、乳牛の他役牛、馬、豚、鶏等の農業経営内の有畜関係事業費で先ず「家畜共進会開催費」10万円を主体として部落畜産係長事務補助5万円、乳牛の導入改善、優良種豚の改善など15万円となっていて酪農同志会、養豚同士会等の育成助成も考えております。
(ホ)水産漁業奨励費(100,000円)
これは本年度新規に計上致しまして漁業協同組合と連絡協調致しまして漁業の改善発達を図る為今後諸事業を計画致しまして少ない予算ながらも大いに活動推進致したいと思います。

(3)耕地事業費 347万円
 これは土地改良事業費の内の農道関係(土木費計上)を除いた灌排水事業と急傾斜地土地改良事業費でありまして次の三つの土地改良区に対する受益者(農家)の負担金を市費・ナ補助する経費でありまして、これ等土地改良区の30年度の事業計画は立案されていますが国からの事業補助が決定しておりませんので今後の推進により極力事業補助を計画通り確保する様各土地改良区と市当局は努力して計画実施に努める様に致したいと思います。
(イ)富士川用排水土地改良区(80万円)
 これは現在の入道門より早川本線を上り水戸島東芝社宅附近まで約3,400メートルの河川改修事業で?経費69,952,000円で、この国庫補助50%、残りの25%は県費補助、残り25%は受益者負担となり現在では市費補助となっていて、区債12,750,000、市補助金12,000,000円を計画しています。
(ロ)江川土地改良費1,000,000円
これは藤間鉄道ガード北側まで江川本線の改修が完了致しましたのでそのガード北側の鉄道ぞいの火打島耕地の用排水路約700メートルの改修事業で?経費5,200,000円で、この国庫補助40%で残り60%が受益者負担となっていて、これも市費補助で区債1,500,000円を除いて2,050,000円除いた2,050,000円を計画している。
(ハ)岩松土地改良区(800,000円)
 これは岩本山の急傾斜地帯農業振興臨時措置法による農道設置事業で29年度の継続工事で中宿、貫戸線巾4、5メートル延長約300メートルで総経費3,200,000円で、国庫補助30%、残り70%が受益者負担となっていてこれも市費補助で区債708,000円を除いた1,562,000円を計画している。

上水道布設計画 水道課

 地下の自然水位が、低下の傾向にあることは、独り富士ばかりではないので、自然現象でもあろうが、人口が殖へ、工場も数多くなって、毎日地下から汲上げる水量も昔日の比ではないので必然のことでもあるが、之には拍車をかけたものは、ナント云っても昭和の中頃、日本軽金属が蒲原発電の為、富士川の上流で渇水量の全量とも見るべき取水にあったと思う。
 この影響を最も早く被ったのは、やはり富士川沿で季節的に井戸は涸れてしまい、岩松方面で十数町の道を遠しともせず、水貰の行列がつくられ、森島宮下方面ではドラム缶で水の配給すると云う苦難をくりかえしたばかりでなく、市内の殆ど全井が掘増を余儀なくせられたことも一再に止まらなかったのであった。
岩松地区は、村当時計画された湯沢水道が昨年の暮完成し、今では蛇口をヒネレば4、5分で風呂桶へ一杯になると云う便利さで、曾ての水及行列も過ぎし物語となったのであるが、地下水は依然低下の傾向を辿っており、やがて動力ポンプでないと水が揚がらなくなり、サア水道だと云っても急に間に合わない、万一こんなことがあっては大変である。
 そこで市は全域に亘る上水道の布設を計画し、市議会の協賛を得て今30年度から着手し、ここ4、5年の間に市の隅々まで水道を布こうと云う予定である。

一、計画のあらまし
 市の現在人口は約42,000人である、既往15ヵ年の平均人口増加率で20年後の人口を推算すると、昭和50年には72,000人の都市となるのであるが、この間45,000人が水道を使用するもおとし、之を計画給水人口と定め、一人一日の最大給水量を180リットル(約一石に当る)とすると1日の最大總給水量は8,100立方メートル(約44,550石)となるので、これだけの水源を何処かに求めなければならないのである。
 旧富士町当時この水を富士宮から引いてくることも考えられたが、この案は自然流下式で水道経営の上から誠に理想的のものであったが、送水路が長く、大変な布設費がかかり、皆さんの家庭へ水が出るまでには相当な年月を要しますので、それによりは早く水の出る水道をと云う市民の要望に応えます為、この計画は将来に備えることに致し、これに代わる水源を市の最北部に位する岩本の根太地内に深井をさく井し、ポンプで岩本台地へ揚水し、電休の日でも8時間位給水の出来る配水池を作って給水しようとする計画である。

二、建設費は政府の融資で
この建設費は概算約2億3,000万円位かかる見込であるが、現在の市の財政事情は水道にばかり多額の金をまわすと云うことは、仲々至難であるので、その大部分を政府の融資に依存する外ない次第であるが、これでも緊縮政策に制約され、思う程借りると云う事は容易でないことを予想さるのである。
 だが今年は市も苦しい財政の中から水道事業へ1,500万円を出し、政府から出来るだけ多くの金を借りることに最善の努力を傾注し、事業を進めて行きたいと思うのである。

三、今年はどこをやるか
湯沢水道が完成し、その配水管の末端が、宮島と6軒屋それに柚木まで延びており、而かも水流が予想した以上に豊富で、尚相当給水の余裕があるので、配水管を延長するだけで給水が出来る、森島、宮下を始め、水戸島上、仲町、平垣の一部位には年内に布設したいのであるが、政府の融資を当の仕事であって、この成否は一ツにかかって起債(借金)獲得の如何にあると云うことを知って戴きたいのである。

四、水道貯金のおすすめ
ところで市民の皆さんお願いしたいことは、水道管が布設されても、之を各戸へ引込む給水工事費は全部使用なさる方に負担して貰うことになるのであるが、極く近い所でも5、6千円はかかり、一寸距離があると1万5,000円以上もかかり、之を一度に負担することは仲々容易ではないので、今からでもおそくはありません、各部落で是非水道貯金を始めていただき、折角軒先まで水道が来たら「よい水は健康のもと」であります、全部の御家庭が水道を使用になられます御用意と御協力を御願いする次第であります。