広報ふじ 昭和41年11月に吉原市と鷹岡町と合併した富士市広報紙の全記録

昭和30年 1月15日発 内容

市税の話(その2)納税は組合貯金で先ず安心

 税の理念は負担の公平適正にあると思ふのであるがそれにはまず租税体系が完備していなくてはならないと同時に税制そのものが、その時の経済情勢や社会情勢にも適合していなくてはならない。
 所謂シャープ勧告に基づく昭和25年の画期的な税制の改正は、旧来の地方制度から考へると夢想だにしなかった一大改革であるがシャープ勧告の根底を流れるものは日本の民主化であり日本の民主化は中央集権を排除して地方分権を確立することが必須の要件であるといふ見地からまづ地方自治体を拡充強化することであった。
 それには地方自治体に出来得る限り豊富な独立財源を附与して地方財政を確立しなければならないという考へ方でしかも府県より市町村にその重点か置かれたように感へられる。そして極力上級官庁の指揮監督権を排除して名実共に自治体としての機能を自主的に且機動的に発揮させるようとしたのである。このような理念によって貫かれている筈の地方税制度がその後毎年のように次々と改正されるのは何故だろう?
 現行法がアメリカの地方制度の色彩を多分に帯びており日本の国情に完全にマッチしない点もあるかも知れないし又その施行に当り幾多の問題を残していることも事実であるがそれらの点を是正して順次合理化してゆくのかも知れないが、それとしてもしばしば市町村財政に大きな打撃を与えるような改正が行われしかもそれに対する何等裏付けが措置されていないとしては何としても納得出来難い。
 現行法が短時日の間に生まれ余り洗練されたものではなかったかも知れないし又日本の政治が中央地方を通じ本当に安定していない結果であると云ひ得るかも知れないが何れにしても頻繁な改正で市町村財政を混乱させることは困ったことである。
 その時の国の政治の指針によって国道府県、市町村間の税財源の配分が適宜変更されると共に順次地方分権が中央集権化してゆきつつあるように感ぜられるのはヒガ目であろうか。
 殊に昨年5月の地方税法の改正は当市にとっては甚だ痛い。
 市政だより創刊号にも既に述べたところであるが重ねて皆様方の注意を喚起したい。市民税では個人30%程度法人税割40%が県税に移譲されたのみか個人分県民税は市民税と併せて腑課徴収するので相当の事務量が負荷された。又固定資産税では大規模償却資産に対する市の課税額が制限され一定限度以上は県税へ移譲される(昭和30年度より施行)
 その見返り財源としてたばこ消費税が市税として創設されたのであるが当市の場合到底この減収は補填出来ない。
 加ふるにデフレに起因する各業界の大不況はいよいよ深刻となる税制改正の減収と相俟って市財政の前途は暗い。
 おそらく本年度市税収入は合併前の三ケ町村税法を相当大巾に下廻ることは間違ないであろう。
 明年度に於いては現行法が当市にとって有利に改正されない限り更に減収に拍車をかけるかも知れない。
 デフレ政策の基盤は今後依然として継続されるものと思われ随って政府の緊縮予算も堅持されてゆく以上市町村への起債補助金交付金も余り期待することは無理であろうとするならば市財政の根幹は矢張り市の自力即ち市税より外にない。幸いにして市税の収納状況は全般的に良好であるがこれは市民の御理解と愛市の精神の発露であると確信する次第であるが更に一層の御協力により一段と収納成績を向上させることこそ喫緊の要務であると思われる。
 富士市建設5ヵ年計画を中心とする富士市繁栄のために各種事業が山積しているが要はまづ財源を確保しなくてはならない。
 市税完納を更に声を大にしてひたすらお願いする次第。

昭和30年水稲種籾配布計画

 昭和29年水稲作況は植付当時より全生育期間を通じて天候不順の育成不良に加えて秋の度重なる台風災害による思はざる不作の年でありました。それで30年はぜひ共天候を良くして昨年の不況を克服出来る事を今から念願して稲作準備に努めたいと思います。それには先ず第一に優良なる種籾を選ぶ事と思います、昨年は不良作柄の稲でありますから自然と皆さんの自家採種の種籾は特に厳選して用ふると共に、其の不足分や品種を変へたいものは、県指定による市の採種県指定による市の採種圃生産種籾を用ふる事が先ず安全で確実であります。
 市役所農産課で昭和29年生産県指定水稲種圃は市内採種適地部農会の協力により優良品種13品種を4町歩計画して46名の農家に委託設置致しましたものが30年の一般農家の皆さんの希望により採種されただけ配布するのであります。
 処が本年は異状の災害の為め一般希望数量が多いのと指定採種圃も災害の為め不合格となったものがありますので皆さんの希望全数量を満たす事の出来ない品種もありますが、この不足は農家の自家生産種籾を厳選して満たす様にお願い致します。其処で30年水稲種籾の配布計画は去る12月23日の市農業委員会に於いて次の通り決定致しましたのでお知らせすると共に本年こそ食糧増産に全力を盡して頂きたいと存じます。

1 種籾配布計画品種別数量
‐ 図表あり ‐

2 農家配布価格(配布は重量計算とする)
‐ 図表あり ‐

3 配布期日及方法
(イ)配布期日は1月下旬とする
(ロ)農産課より各申込部農会に配布数量を割当通知致します
(ハ)配布場所は市内各3農業協同組合に於いて現金引換に行う。

生活をおびやかすもの

 結核と云う言葉を聞いただけで誰でも口を覆い額に皴を寄せるものですが、さてこれについては正しい知識を持ち、適切な予防と対策を講じている人は余りにも少ない様であります。
 結核には関係がない、かかった事もないと考える人でも是非この文を一読して下さい。

 日本中の結核患者は290万人以上もあると云われております。これらの患者を統計的に調べて見ますと、三世帯に対し1人、22人に1人となり、患者の内容は自覚患者25%、無自覚患者64%、自分で治癒したと称する者11%と云う割合となります。又伝染の一番源となる所の開放性結核患者に到っては、80万人と云う大きな数字を示して居ります。又これらの患者に至っては、80万人と云う大きな数字を示して居ります。又これらの患者を年令別に調べて見ると、0才〜5才が13万人、6才〜30才が116万人、31才以上が234万人となって  結核と云う病気は菌によってうつる病気です。然かも我々は30才位までには殆どの人が感染するのでありますが、その大部分の人は知らずの間に治っています。あとの極く僅かに人が不幸に発病するのですが自分は決して結核になどかからないと豪語はできません。前記の如く最近の調査に依ると患者が非常に多い事が判ったからであります。
 感染したことを早く知って、日常生活に注意すれば発病しないで済みます、それでツベルクリン反応検査が必要であります、毎年ツベルクリン反応検査を行っていると感染したときが判りますが、うつった後一ヵ年位は過度の運動や無理の労働を避け、夜ふかしなどの不規則の行動を慎み、なるべく栄養物を摂るように心がけることが大切です。
 次に自然感染により免疫体となるのと同様に人工的に免疫をつくることがBCGの接種です。これが徹底的に実施されるなら結核でたおれる人は1/8以下になるだろうとされています。
 ツベルクリン反応で陽性であると判って発病しているかどうかは、レントゲンで診断することが必要であります。そして万一発病していることがわかったら早速療養するのですが、安静と栄養、新鮮な空気は結核の新薬の他に絶対欠かされない条件です。市役所では1月下旬頃から、各町内へ出張してツベルクリン反応検査を行う予定をしています。30才以下の人(学生生徒を除く)は洩れなくこの検査を受けられる様切望いたします。尚結核に対する相談も受けれます。療養の事、医療費用のこと、その他何でも遠慮なく御相談下さい。

字名の改称について

 昨年3月31日3町村合併して富士市として発足しましたが、合併以前、促進協議会に於いても字名のことについては度々議題に上りましたので現在商工会関係者や区長さんその他多数の方々が関心を持って居られると思ひます。当局も、できる丈すっきりした。いかにも市らしい地名を望んで居りますがこれは言ふことは易く行うことは極めて困難であります。
 1、土地台帳の訂正する事
 2、宅地になって居る土地について戸籍簿の訂正をする事
 以上の訂正は総て登記を要します。これには莫大な経費を要しますので国や県の補助金等を貰って区割整理や土地改良と併行してやらねばなりませんから、急速の実現は困難な実状にありますが新議会にも諮って着々推進したいと思って居ます。

昭和30年度に於ける富士郵便局の一事業

 市制施行ここに第二年、輝かしき新春を迎えましたことを衷心よりお慶び申し上げます。
 さて簡易保険は保険料が安く手軽で簡単でしかも国が経営しておりますから、最も安心して信頼できる生命保険でありまして、皆様の生活を安定し、幸福にすることを目的としております。
 一方皆様から集めた保険料の積立金は、公共事業のため運用せられ、例えば市内の水道、中央病院又は富士中学校の建設資金などに融通している次第であります。
 本年は富士市当局の御理解あるご援助によって
 「簡易保険全戸一口新加入運動」を展開することとなりましたので市民各御家庭の絶大なる御協力と御支援を仰ぎたく、年頭にあたりお願い申上げる次第であります。

元旦の本町通り

昭和30年の元旦を迎えた本町通り娘さんの晴衣姿も白雪の富士山に映じて飛躍大富士の前途を祝福しています
‐ 写真あり ‐

◇税金は変わったかたちでかへるもの