なぜ利用しないのか
市政モニターアンケート結果などをもとに分析
- 写真あり -
現状から浮かび上がる問題点
■厳しい運営状況…。伸び悩む利用者数
〈問題点その1〉財政上の問題
コミュニティ交通は、在来のバス事業が成り立たない、利用者の少ない地区で運行しているため、非常に採算がとりにくい状況にあります。
現在、市内各地区で10路線運行していますが、昨年度は、100円の収入を得るために、約500円の費用が必要となり、運行に係る欠損額の、約4088万円を市・県など行政が負担しました(左参照)。
しかし、欠損額をすべて行政が負担するのでは長続きしないため、本格運行をする場合の条件として、行政の負担は、地区ごとに不公平にならないように運行経費の3分の2までとしています。
つまり、残りの3分の1は、運賃収入や地元負担金などで賄うことになります。
運賃設定やバス・タクシーによって違いはありますが、昨年度は運賃収入だけで3分の1を賄える路線はほとんどありませんでした。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 平成22年度 コミュニティ交通の事業実績
〈問題点その2〉伸びない利用者数
運賃収入が少ない理由は、もちろん利用者数が少ないことです。市内のコミュニティ交通は、平成19年度に田子浦地区の「しおかぜ」が運行開始したのをきっかけに、利用者数は年々わずかに伸びているものの、どの路線も定員に対して少ない状況です。
コミュニティ交通を運行する事業者の視点
■午後の利用者が少なく寂しい
自家用車を持っている人がふえている現代、コミュニティ交通を利用しているのは、移動のための交通手段に本当に困っている人だと思います。
そして、利用している人の大半は高齢者で、通院や買い物に利用しています。そのため、午前中の利用者は比較的多いのですが、午後の利用者は少なく、運転している側として、とても寂しい状況です。どの路線についても残念ながら目標としている利用者数に達していません。
コミュニティ交通は、認知度が高まることによって、利用者数がふえていく傾向にあります。
もっとたくさんの皆さんに暮らしの足として、コミュニティ交通を知ってもらいたいですね。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 5路線を運行する 石川タクシー富士(株)
社長 佐野充弘(みつひろ)さん
市政モニターアンケートによる市民の本音
■なぜコミュニティ交通を利用しないのか
マイカーのほうが便利で楽
ことし10月に市政モニター100人にアンケートを実施しました。その中で、過去1年間でコミュニティ交通などを利用しなかったと答えた72人のうち、「利用しない理由」(下グラフ参照)として約9割の人が「マイカーのほうが便利で楽だから」と答えました。
次いで、「利用したいバス路線の便数が少ないから」、「自宅や目的地の近くにバス停やバス路線がないから」が約4割でした。
その他の理由として、
○子どもと一緒だとほかの利用者に迷惑がかかる
○小さな子ども(赤ちゃん)を連れていると大変
○時間を気にしたくないから
などの意見があり、小さな子どもがいる家族はコミュニティ交通の利用を敬遠してしまう傾向が見受けられました。
市政モニターが住んでいる地区にコミュニティ交通が通っているかいないかによっても結果に違いはありますが、アンケート結果からは、「マイカーのほうが便利」で、「コミュニティ交通は利用しづらい」と感じている人が多いことがわかります。
果たして、コミュニティ交通は、本当に必要と言えるのでしょうか?
- 図表あり -
( 図表説明 ) コミュニティ交通などを利用しない理由(棒グラフ)
将来運転できなくなったときのことを考えたことがありますか
■コミュニティ交通は絶対に必要
住民が当事者意識を持つことでコミュニティ交通は変わる
少子高齢化が進む中で高齢者の運転免許証所持者はふえていますが、だれしも運転できなくなるときはいずれやってきます。そのとき、幹線道路から離れた地域の高齢者は、移動手段がないと行動範囲が狭まってしまいます。高齢者が元気に生活していくためには、自分の意思で移動できる交通手段としてのコミュニティ交通が、日常の生活において絶対に必要なのです。
コミュニティ交通は、地域に合わせて育つ可能性を持っています。地域の人が当事者意識を持ち、自分たちの地域に合ったルートや運行の仕方を積極的に考えれば、もっと使いやすいものに変えることができます。
これからは、地域住民とコミュニティ交通の運行事業者、行政それぞれが役割分担をしながら力を合わせ、コミュニティ交通を作り、育てることが大切です。そのことが、より地域の実情に合った公共交通を持続的に構築し、新たなまちづくりにつながります。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 交通ジャーナリスト 鈴木文彦さん