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【広報ふじ平成22年】平和特集 「お帰り」そう言える日まで 1

「お帰り」そう言える日まで 平和の陰に残る戦争のつめ跡

終戦から65年。
戦争を体験した人は少なくなり、
戦争を知らない世代が多くなりました。
「戦争は過去のこと」
そう感じてしまうのは仕方がないことなのでしょうか。
皆さんは知っていますか。
平和を感じることすら薄れてしまう今
私たちが知らない、
終戦を迎えることのできない思いがあることを。
「ただいま」
「お帰り」
いつまでもいつまでも
その言葉を待つ
ある仲間たちの願いを。

- 写真あり -
( 写真説明 ) ロゼシアター前富士見大通りに設置してある「核兵器廃絶平和宣言塔」。核兵器の廃絶を訴え、平和を願っている。

戦争/シベリア抑留

 昭和16年、太平洋戦争の突入とともに戦線は拡大し、アジア・太平洋地域一帯が戦場となりました。戦争が長期化すると、連合軍の圧倒的な物量との差などから、前線部隊は退却。続いて本土空襲が始まり、艦砲射撃や原子爆弾の投下によって多くのとうとい命が失われました。
 昭和20年8月14日、ポツダム宣言受諾。戦場にいた日本人は祖国に帰れる喜びを胸にしていました。
 しかし、終戦は悲劇の終わりではありませんでした。多くの日本人がソ連軍によって連行され、シベリアやモンゴルの地に抑留されました。酷寒、飢餓、重労働、約5万5000人の日本人が望郷の念に身を焦がしつつ、異国の土となったのです。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 静岡県抑留犠牲者慰霊碑(中島) 毎年11月第1日曜日に慰霊祭を実施しています

日本に戻るべき兵士が散った地「シベリア」

日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後 各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ(ポツダム宣言第9条)

「私は本当に幸運でした。仲間の多くは今もまだ、シベリアの大地に眠っているのです」

満州に渡って1年5か月。
終戦を告げる玉音放送を一人、部隊で聞いた中根等さんのその後の話

帰国を信じて

 8月17日、各部隊から召集された私たちは、自動小銃を持ったソ連兵に「銃はこっち」「弾はこっち」と言われるまま、武器という武器をすべて取り上げられました。これが武装解除です。「トウキョウダモイ(東京に帰してやる)」その言葉に私たちは故郷に帰れると信じ、ソ連兵が言うとおり貨物列車に乗車しました。

「このときはまだ、これから極寒の地シベリアに4年間も抑留されるとは夢にも思っていませんでした」

 目的地を告げず15日間北進を続けた列車は、ソ連チタ州西方約300キロメートルで停車しました。下車すると、戦場で肌身離さず持っていた大切な品々を突然ソ連兵に奪われました。私たちから奪った腕時計をいくつも腕に巻いたソ連兵の得意げな姿は、今も忘れることができません。
 丸腰の私たちは、自動小銃を持つソ連兵に追われながら収容所に連行されたのです。
 収容所と言っても、そこには何もありませんでした。私たちの抑留生活は自分の宿舎を丸太でつくるところから始まったのです。その後は、毎日木材の伐採作業。この間に栄養失調による死者が続出しました。特に、翌年にかけては厳しい寒さによって、各収容所で8割の人が亡くなったと聞きます。
 作業はいわゆるノルマ制でした。ノルマを達成できない場合はその分食事を減らされました。食事は黒パンやジャガイモばかりで、栄養不足は否めません。しかし、私たちは伐採現場の木になっていた「松の実」を食べることができたおかげで、皆比較的元気に作業をこなすことができました。松の実は脂肪分が多いため、ポケットに入れてある限り、雪中の厳しい伐採にも耐えられるエネルギーを補給することができたのです。 
 「トウキョウ ダモイ」何度となく言われ、収容所を7か所めぐりました。次は本当に帰してもらえるのか、また裏切られるのか…。
 私が帰国できたのは、1949年10月25日、終戦から4年たっていました。

- 写真あり -
( 写真説明 ) シベリア抑留を経験、1949年に帰国した 中根等さん(伝法)
添付ファイル
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