皆さんは、「障害者の雇用」と聞いて何を感じますか?
障害のある人と、障害のない人とが同様に、その能力に応じて、働く機会が平等に得られる社会。市は、そのような社会を目指しています。では、現状はどうなのでしょう。
今回は、「障害者の雇用、就労支援」を特集します。
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障害者の就労状況は
障害者の就労状況について、富士障害者就業、生活支援ミニセンターに、話を聞いてみました。現状はどうなのでしょうか。
富士市の雇用率は、県平均以下
「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、56人以上労働者がいる会社は、労働者数の1.8%に相当する障害者の雇用が義務となっています。
富士公共職業安定所によると、富士所の障害者雇用率は1.48%で、県平均の1.52%を下回っています。
平成17年12月末現在、富士公共職業安定所に登録している障害者は1263人。そのうち、858人が就労していて、求職中の人は337人。また、68人は病気などにより就労していません。
また、平成16年度に障害者へ仕事を紹介したのは209件。そのうち就職に結びついたのは約3割で、64件でした。
富士障害者就業、生活支援ミニセンター
就業支援ワーカー
木村 清子(きよこ)さん
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「障害」と一言で言っても、人それぞれ
私たちは、障害者が就労できるよう、障害者と会社の橋渡しをしています。
障害者には、身体障害者、知的障害者、精神障害者がいます。また、同じ障害でも、障害の程度や特性も人それぞれです。
障害者就労の場合、それぞれの能力に応じて、その人に合う仕事を探していきます。また反対に、会社がしてほしい仕事内容を聞き、その仕事ができる人を探します。
障害者というだけで、「この仕事はできない」と決めつけてしまうのではなく、「何ができるか」という視点に立って雇用を考えていただきたいと思っています。障害者も、「自分はこれしかできない」と決めつけずに、職業訓練センターなどを活用し、自分の可能性を広げてほしいですね。
トライアル雇用と言って、3か月間の試し雇用制度があります。これは、本人にとっても、会社にとっても準備期間となり、双方を支援するものです。ぜひ活用していただきたい制度ですね。
富士障害者就業、生活支援ミニセンター
生活支援ワーカー
半澤 哲永(てつえい)さん
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障害者雇用は、社会貢献の一つ
以前よりも、障害者雇用に理解を示してくれる会社はふえ、とてもうれしいですね。でも悲しいことに、「障害者を雇うより、罰則金のような雇用納付金を払う方がいい」と言う会社もまだあります。障害者雇用は、社会貢献の一つだという意識を持っていただきたいです。障害にはいろいろあり、さまざまな可能性があることを知ってください。
富士障害者就業、生活支援ミニセンター
障害者の職業的自立を実現するため、就職面と生活面の支援を行う機関です。相談は無料です。ぜひ、お気軽にご相談ください。
ところ 大淵2075-3(そびな通勤寮内)
電話・ファクス 35-1148
E-mail shuugyou-seikatu@seishinkai.info
障害者雇用の現場は
「障害者を雇用する」、「障害者と一緒に働く」。 障害者雇用の現場は、どうなのでしょうか。
現場で働く皆さんに話を聞いてみました。
「就職したら終わり」ではない
障害者が就労できても、人間関係でつまづいたり、過度の緊張などにより体調不良を起こしたりして、会社をやめてしまうことがあります。
雇用する人事担当の理解があるだけでは就労し続けることはできません。何より、障害者とともに働く、現場の理解が必要です。しかし、初めて会った人をすぐに理解するのは難しいことです。
皆さんは、現場の環境づくりを手助けしてくれるジョブコーチなどの支援制度があることをご存じですか。ぜひ、障害福祉課やハローワーク富士にご相談ください。
就職したら終わり、ではありません。受け入れる会社側の体制だけでなく、支援する体制、また、障害者本人や家族の体制が整っていなければ、何かにつまずいたとき、離職につながってしまいます。そうならないよう、みんなで支え合いたいですね。
メモリーテック株式会社で働く
瀧 渉(わたる)さん
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ずっと働き続けたいですね
富士就業、生活支援ミニセンターで紹介され、昨年の12月から今の会社で働き始めました。工場の一角で、音楽や映画のCDやDVDのパッケージに使う印刷物に、レンタル用などのシールを張る仕事をしています。もともと音楽が好きだったので、それに関係する印刷物を見ながら仕事ができるのは、楽しいですね。
初めての就職だったので、とても不安でした。最初の一週間は緊張して、一日がとても長く感じられました。でも、今では仕事に大分なれ、作業の段取りも組めるようになりました。
就職できて、うれしいです。給料をためて、何か好きなものを買いたいですね。
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メモリーテック株式会社
富士フルフィルメントセンター長
本間 博さん
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会社にかけがえのない存在になってほしい
私たちの業務は、CDやDVDのパッケージ、配送です。ここ富士市に工場ができて、4年目になります。
基本的に体を動かす仕事なので、工場立ち上げ当初は、障害のある人は向かないと思っていました。しかし年々従業員がふえ、社会的責任という点からも、障害者雇用について考えるようになりました。手作業など、会社のニーズに合う人はいないか打診したところ、すぐに瀧さんともう一人を採用することになりました。正直初めは手探り状態でしたが、今はあまり気を遣いすぎてもいけないと感じています。この会社にとって、かけがえのない存在になってほしいと思っています。
株式会社ジャパンフレッシュ富士工場長
中村 修二郎さん
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彼らの特性を理解し、雇用につなげたい
私たちの会社は、コンビニエンスストアのサンドイッチやお弁当などをつくっています。現在、4人の知的障害者が働いています。
彼らは最初、仕事を覚えるのに時間がかかりますが、一度覚えた仕事は正確です。以前、製品に張るシールの間違いを発見し、助けてもらったこともありました。人は、なれてくると横着を覚えますが、彼らはきっちり仕事をしてくれます。
先日から、新しい仕事を任せてみようかと、5人の雇用実習を始めました。ジョブコーチの支えもあり、だんだんなれてきているようです。彼らの特性を理解し、雇用の幅を広げられたらと考えています。
株式会社ジャパンフレッシュで働く
佐野 昇子(のりこ)さん
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毎日、楽しく働いています
私はこの会社に就職して、3年目になります。バットの洗浄と、トイレや休憩室などの清掃をしています。ずっと立ち仕事なので、最初はとても疲れましたが今は平気です。
「佐野さんなら仕事を任せても大丈夫」と言われるようになり、とてもうれしく思っています。
初めはどのような会社なのか心配で緊張しましたが、皆さんが話しかけてくれるので、毎日、楽しく働いています。
ことしの春から、グループホームを出て、一人暮らしをすることになりました。少し不安ですが、とても楽しみにしています。自立のためにも、これからも頑張って働き続けたいと思っています。
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就労支援ネットワーク富士静岡県ジョブコーチ
芦澤 晴己(はるみ)さん
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障害者も会社も支援するジョブコーチ
平成15年から、ジョブコーチとして活動しています。ジョブコーチとは、会社と障害者の間に立ち、みんなが安心して働ける職場づくりをお手伝いする人のことです。私たちは、障害のある人のためだけに働いているのではありません。
私がこの活動を始めたのは、障害を持つ息子の就職活動がきっかけでした。息子は、8社で職場実習をしましたが、どの会社も就職につながりませんでした。会社から「足手まといだからやめてください」と言われたこともあります。とてもショックでしたが、会社の立場になってみれば、確かに足手まといだと思いました。この状況を乗り越える手だてはないか、支援者はいないかを勉強し、ジョブコーチのことを知りました。障害者も、会社も支援しなければ、障害者雇用につながらないと実感しました。
障害者雇用する会社にはメリットがなくては
ある会社で、「できあがった製品に一つでも失敗を出すと、仕事がなくなる。製造ラインに障害者を立たせるのは怖い」という話を聞きました。「障害者はかわいそうだから」というようなお情けでは、会社は決して雇ってくれませんし、仕事は続きません。障害者を雇う会社が損をしないように、援助が必要だと思っています。ぜひ、私たちジョブコーチなどの支援機関や助成金などの制度を活用していただきたいですね。
就労支援ネットワーク富士
障害者を持つ親たちが、平成15年に立ち上げた組織。現在は元福祉施設職員などもメンバーに加わり、約20人で活動しています。障害者だけでなく、企業も支援する団体です。関係機関と積極的に連携を図り、障害者雇用の最前線で活躍しています。
電話 090-9912-8125 ファクス 63-0268
E-mail shuro-sien.network.fuji@c.vodafone.ne.jp
障害者の就労へのかぎは
あなたやあなたが勤めている会社は、障害者の雇用、就労について、どのように考えていますか。
そして、障害者の就労へのかぎは、何だと思いますか。
障害者の自立と社会参加
今の障害者施策の重点課題は、障害者の自立と社会参加です。「施設入所型」の考え方から、地域で暮らせるようにと「脱施設」の考え方に変わってきました。そのためには、障害者が自分で働き、収入を得ることは、とても大切だと考えられています。
障害者雇用、就労を支援するネットワーク
現在、市の障害者雇用、就労は、さまざまな機関に支えられています。就労支援ネットワーク富士や富士養護学校などの努力のおかげで、3年ほど前から、関係機関がお互いに情報を共有し、連携をとれる場がいくつかできてきました。行政もネットワーク会議に参加し、支援しています。関係機関が連絡を取り合い、会社や障害者を支えています。
また、会社や障害者、障害児を持つ親も会議に参加し、障害者雇用について意見交換をしています。関係するあらゆる人たちがお互いに協力し合い、障害者雇用拡大を目指しています。
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本多 輝行 障害福祉課長
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就労へのかぎは、障害者に対する理解
関係機関のネットワークのほかにも、この数年の間に、会社の負担を軽減するような制度が確立され、障害者雇用の拡大に向け、よい体制ができてきています。
しかし、制度の整備や、私たち関係機関が頑張るだけでは、障害者雇用の拡大にはつながりません。何より、市民の皆さんの障害者への理解が必要です。
まずその人を、障害を、理解するところから始めていただきたいですね。そうすれば、その人の適性や能力に応じた仕事が見えてきます。
そして、「この仕事なら任せられる」と言ってくれる会社がふえてくれたらうれしいですね。
だれにでも均等にある、雇用の機会。働く権利は、障害者にもあります。
障害のある人も、障害のない人も、ともに地域で生活し、みんなで一緒に幸せになれたら…。
だれもが笑顔で生活できる街。そんな街にしていきたいですね。
障害者雇用・就労についての問い合わせ
障害福祉課 電話 55-2761 ファクス 53-0151
ハローワーク富士 電話 51-2151 ファクス 52-7743