水害から、市民の命と財産を守るために活動する「富士市水防団」。水防団という言葉から、何をしているのか何となく想像できるものの、その活動はあまり知られていません。
そこで今回は、皆さんに広く知ってもらうため、水防団について紹介します。
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( 写真説明 ) 津波や高潮被害から地域を守るための門、田子の浦港陸閘(りくこう)(元吉原水防分団)
水防団って?
水防団って何をするのだろう
主な活動はその名の通り、水による災害を防ぐための活動です。
水防警報が発令されると、市から水防団長に連絡され、団長から連絡網で各分団長に伝達されます。そして各団員が河川流域の見回りをしたり、水害が起きないよう水防工法を行ったりします。
また、市内には10の水防分団があり、各分団ごとの判断や地域からの要請などにより、活動することもあります。
県内で水防団があるのは4市町
富士市水防団員数は現在512人。水防団の団員は、みずからの職業を持ちながら活動をしています。以前、団員の職業は農業が多かったようですが、時代の流れとともに、現在は会社員がふえてきました。
「水防団」として水防を目的に活動している組織は全国的にも珍しく、県内では富士市のほかに、静岡市・浜松市・大井川町にあるだけです。それ以外の市町村では、消防団が水防の仕事を兼ねていることが多いようです。
昨年の警戒災害出動は6回
毎年、7月から10月ごろにかけて、台風や集中豪雨などにより、水害が発生しています。
昨年は、観測史上最多の10個の台風が日本に上陸し、全国各地に被害をもたらしました。10月に発生した台風22号は、伊東市などに大きなつめ跡を残し、皆さんも記憶に残っていると思います。
昨年の水防団の出動数は例年より多く、市からの要請による「警戒災害出動」は6回。そのほかにも地域からの要請などにより出動しています。須津や元吉原などで水害が発生し、延べ142人の水防団員が被害の対応に当たりました。大抵、民家に水が入らないように土のう積みなどを行います。
また河川だけではなく、元吉原と田子浦水防分団は、静岡県から委託されて、田子の浦港陸閘の管理や田子江川の水門操作も行い、高潮や津波に対しても警戒を行います。
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( 図表説明 )
水防団が出動するまで
台風や集中豪雨の発生
↓ ↓
水防警報 各水防分団ごとの判断や地域からの要請
↓ ↓
市からの連絡 ↓
↓ ↓
水防団出動 ←←←←←
万が一に備え、訓練しています
水防団の活動は、大雨警報が発令されたり、水被害が発生したりしたときだけではありません。
分団長以上が集まる水防団会議を2か月に1回ほど開催し、各分団間の情報交換などを行っています。
また、富士市水防訓練や総合防災訓練、富士川水防訓練、津波避難訓練などに参加し、万が一に備え、さまざまな水防工法の訓練を行っています。
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( 写真説明 ) 昭和54年 台風20号による被害 天間沢川
ちょこっとメモ
−市内各所にある水防倉庫−
皆さんは、「水防倉庫」という言葉を聞いたことがありますか?市内には、25の水防倉庫があり、各分団ごとに管理しています。
倉庫の中には、いざというときに備え、土のうやくいなどが常備されています。
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( 写真説明 ) (小)水防倉庫の中には200個以上の土のうが保管されています
( 写真説明 ) (大)岩松中学校南側にある富士川水防分団の水防倉庫
富士市水防団の歩みと水害のつめ跡
明治22年
岩松村・加島村・田子浦村の三か村で水防組を組織する(富士川左岸)。
大正2年
富士川左岸水防組を発足。
大正6年
静岡県会第30号により水防組設置規程が定められる。
潤井川右岸(加島村内の蓼原・五味島・本市場新田・松本・中島の5区)水防組発足。潤井川左岸(伝法村)水防組発足。
昭和24年
「水防法」を公布。
昭和41年
台風26号(死者15人、行方不明者1人、負傷者134人)。
昭和42年
「富士市水防団条例」を公布。条例の施行により、水防組が水防団と名称を変える。
須津・吉永・田子浦水防団発足。
昭和49年
富士市連合水防団発足。七夕豪雨(死者1人)。
昭和51年
豪雨(負傷者4人)。
昭和53年
浮島水防分団発足。
昭和54年
台風20号(行方不明者2人、負傷者2人)。
昭和55年
原田水防分団発足。富士市連合水防団が富士市水防団と名称変更。
昭和57年
元吉原・鷹岡水防分団発足。
市内各地にある水防分団
市内には、10の水防分団があり、それぞれの地域にある河川などを担当しています。
皆さんの地域にある水防分団をご存じですか?
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( 図表説明 )
富士市にある河川の分布図と各水防団の担当図
(1) 潤井川左岸水防分団
(2) 潤井川右岸水防分団
(3) 吉永水防分団
(4) 須津水防分団
(5) 浮島水防分団
(6) 原田水防分団
(7) 元吉原水防分団
(8) 富士川水防分団
(9) 鷹岡水防分団
(10) 田子浦水防分団
富士川水防分団
富士川水防分団長
石川 進さん
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富士川水防分団は、岩松・富士南地区の、富士川近くに住む人たちで構成されています。団員は40人で、富士川左岸(富士市側)の警戒に当たります。
以前は、水防警報が発令されると富士川を見回りましたが、4年前からはまず情報収集を行うようになりました。富士川下流事務所では、富士川に幾つか観測地点を設けています。あと何時間後に富士市域に水が流れてくるか、水害の心配はないかなどがわかります。地域を水害から守るため、その情報をもとに活動しています。
浮島水防分団
浮島水防分団長
高橋 勝己さん(左)
富士市水防団副団長
高橋 正己さん(右)
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浮島水防分団員は49人で、主に春山川と江尾江川右岸の警戒に当たります。
昔は春山川などで水害がありましたが、現在は河川の整備が進み、浮島地区での水害はあまりないですね。でも、県営江尾団地辺りの江尾江川左岸は、大雨になると道路などが水につかってしまいます。須津水防分団の担当区域ですが、私たちも出動し、土のう積みを行います。
水害から地域を守るため、各分団が協力し合って活動しています。
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( 写真説明 ) (上部右)越水防止のためによく用いられる土のう積み工法
元吉原水防分団
元吉原水防分団長
影島 昇さん
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元吉原水防分団員は38人で、主な担当場所は沼川や田子の浦海岸です。昨年は、柏原三丁目の前川で水害があり、交通整理などの対応に追われました。
元吉原地区は、昭和41年に高潮被害を受けたこともあり、海水から地域を守ることにも力を注いでいます。防波堤に海水をとめる門が5つあり、毎月その清掃・点検を行っています。
水害による悲劇を繰り返さないよう、水防活動に取り組んでいきたいですね。
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( 写真説明 ) (上部左)元吉原水防分団では、田子の浦港陸閘の清掃・点検活動を行っています
ちょこっとメモ
−水防訓練が行われます−
土のうづくりなど、水害を防ぐ工法の訓練を行います。皆さんも見学できます!
ぜひごらんください。
とき 平成17年7月17日(日曜日) 8時〜
ところ 富士川河川敷(かりがね堤内)
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( 写真説明 ) 水防工法には、さまざまな種類があります
( 写真説明 ) (右)決壊・崩壊を防止する「川倉(かわくら)工法」
( 写真説明 ) (左)堤防の漏水を防止する「月の輪工法」
市民の安全・安心のために
富士市水防団長
野田 裕彦(ひろよし)さん(久沢1)
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水防団のことを知ってほしい
団員は、会社員などの職業と兼務していることが多く、活動には周囲の人の理解が必要になってきます。ぜひ、私たちの活動を皆さんに知っていただきたいですね。
残念なことに、水防団の存在やその活動はあまり市民に知られていないようです。「何をしているの?」と聞かれることがよくあります。これは、市民の皆さんが私たちの活動を目にする機会がほとんどないからだと感じています。
活動のほとんどは夜中です
水防活動は、夜中に行うことがほとんどです。また、私たちが活動する大雨のときは、昼間でも市民の皆さんが河川や海に行くことはなく、その周辺に住んでいる人以外の目にふれることはないと思います。
最近では、水防団のことを皆さんに知ってもらうように、地域の行事などに参加しています。これからも水防団をPRしていきたいと思います。
団員の高齢化が進んでいます
富士市水防団が発足して、ことしで31年目を迎えます。20〜30歳代のときに団員になった人がそのまま継続して活動しています。そのため、現在、団員の高齢化や後継者不足という問題を抱えています。
水防活動は、夜の活動が多いので体力的に厳しく、危険が伴うこともあるため、高齢化は深刻な問題です。もっと若手団員がふえてくれるとうれしいですね。
いつでも出動できるように
近ごろは、河川などの整備が進み、氾濫することは少なくなりましたが、台風や集中豪雨などによる被害が全国各地で発生しています。このところ、富士市では大きな被害を免れていますが、災害は忘れたころにやってくると言います。日ごろから、訓練などを行い、万が一のときのために備えています。
また今後は、水防のためだけでなく、地震などの災害時にも出動し、地域のお役に立てればと考えています。
市民の皆さんの安全・安心に向けて、これからも活動していきます。
ちょこっとメモ
−団員を募集中−
富士市水防団では、地域のために水防活動できる人を募集しています。
あなたも自分の地域を守るために、活動しませんか。
詳しくは河川課へ。
私たちが暮らす地域のために活動する「富士市水防団」。その活動を直接目にすることは少ないものの、とても心強く、ありがたい存在です。
日ごろから、感謝の心を忘れずにいたいですね。
水防団に関する問い合わせ先
河川課 電話 55−2721