【広報ふじ平成14年】学校週5日制を考える
ことしの4月から始まった完全学校週5日制。土曜日が休みになって子どもの生活はどのように変わったのでしょうか。また、学校週5日制によってできたゆとりの中で、子どもたちの生きる力をはぐくんでいくにはどうしたらいいのでしょうか。
今回の特集では、学校週5日制について考えてみます。
ねらいは「生きる力」をはぐくむこと
平成4年9月から月1回、平成7年4月からは月2回実施と、段階的に始まった学校週5日制もこの4月から完全実施となり、すべての土曜日が休みになりました。
この学校週5日制は、ゆとりの中で、子どもたちに「生きる力」をはぐくむことをねらいとしています。単なる知識としてではなく、実生活の中で生かすことのできる力であり、生涯にわたって学びつづけるために必要な力です。これらの力は学校だけでなく家庭や地域などさまざまな場で育てられていきます。
学校週5日制導入による授業時数の減少に対応するため、学校でもさまざまな見直しや改善を行っています。基礎・基本の定着を図るため、小人数指導を取り入れるなど、授業改善を進めています。また、新しく設けられた「総合的な学習の時間」には、地域の「皆さんの協力を得ながら体験活動を行うなど、学校や地域の特色を生かした学習を進めています。
アンケートに見る学校週5日制
富士市教育委員会実施 「学校週5日制の完全実施に関する調査」より
調査対象
市内全小中学校(小学校25校、中学校14校)より無作為抽出した児童生徒とその保護者(小学生1万5,238人中1,003人、中学生7,805人中942人)
調査実施日
平成14年9月25日
保護者
Q 学校週5日制になってから、お子さんの過ごし方は変わりましたか?
小学生では36.1%、中学生では41.2%の保護者が、子どもたちの生活に特に変化は見られないと回答。また、家族とのふれあいの時間がふえてきていると感じている保護者も多く、小学生では28.4%、中学生では14.6%を占めています。また、中学生の保護者は、部活動に力を入れるようになってきたと感じている親も多くいます。
- 図表あり -
子ども
Q 休みの日、あなたはどんなことをしていることが多いですか?
休みの日の過ごし方は、小学生では、「友達と遊ぶ」、「テレビやテレビゲームなどをしている」が上位を占めています。
一方中学生は、「友達と外で遊んでいる」、「部活動をしている」がともにほぼ4割を占め、家の人と一緒に行動する子どもは1割以下とあまり多くありません。
- 図表あり -
Q 休みがふえて心配になっていることはありますか?
保護者
小・中学生とも7割ほどの保護者が何らかの不安を持っています。具体的な心配として一番多いものは、どちらとも「テレビやテレビゲームなどに没頭する時間がふえていること」で、約3割の保護者がこの不安を持っています。また、「過ごし方がわからず時間をむだにしていること」への不安も多く、どちらとも23%の保護者が心配と回答しています。
- 図表あり -
子ども
「心配がある」と答えた子どもは、具体的には、小学生では「学校生活が忙しくなることへの心配」、中学生では、「受験勉強に対する不安」、「だらだら時間を使ってしまうことへの不安」を約2割の生徒が挙げています。また、小学生で9.4%、中学生で15.5%の子どもが学習のおくれに対する不安を持っています。
- 図表あり -
富士市青少年会議発 私たちが考える【土曜日・日曜日の過ごし方】
夏休み中の8月9日、「土・日の過ごし方を考える」をテーマにロゼシアターで行われた富士市青少年会議。小・中学生を代表して参加したパネリストによる討論が、会場に訪れた多くの児童・生徒や保護者、教師などを巻き込んで、活発に繰り広げられました。
「学校週5日制」について、この会議に参加した皆さんから出された意見をまとめてみました。
●…パネリストの意見
Q完全学校週5日制になって、土・日はどのように過ごしていますか?
●土曜日に習い事をしているが、家に帰ると計画が決まっていないので、どうしてもだらだらと過ごしてしまう。
●友達と遊ぶ時間が多い。
◎家で趣味や将来の夢に向けて準備をしているが、勉強の時間が少なくなることに不安を持っている。(会場中学生)
◎サッカーをしたり、テレビを見たりしている。勉強もちょっとはしている。(会場中学生)
Q以前と比べて変わったところはないですか?
●自分で気をつけないと生活のリズムがどんどん狂ってしまう。
●地域行事に参加するようになったが、時間の使い方がわからなくて、ごろごろしてしまうことがふえた。
●土・日に何をしていいかわからない人の多くは、地域の行事を知らない現状があると思う。
◎好きなことをする時間がふえたけど、勉強をする時間が減ってしまった。(会場中学生)
◆朝寝坊をするようになった。学校に行っているときと同じように過ごしてほしい。(会場保護者)
◆家の手伝いをしてもらいたいが、自主性を重んじているといつまでもしてくれない。(会場保護者)
Q土曜日・日曜日が休みになってよかったですか?
●時間に余裕ができ、ボランティアに参加するほか、家族で食事に行ったり、友達と練習や話をしたりする時間がふえてよかった。
●「どのように土曜日・日曜日を使いたいか」という質問には、勉強などをしたいと答える人が多いが、「実際にどのように過ごしているか」と聞くと、遊びやゲームをしている人が多くなっていてつり合いがとれていない。土曜日・日曜日の休みがあまり活用されていないように思う。
●だらだら過ごすことが多いから、土曜日に学校があった方が生活リズムもよくなると思う。
●授業時数や習う項目が減ってしまった。私たち中学3年生には受験という壁があるし、後輩たちにも何かしら影響が出ると思うので、週5日制はあまりよくなかったと思う。
●身近な人とのかかわりの時間がふえた分、いろいろな場面で自分も成長していけると思う。土曜日・日曜日が休みになっていいことがまだまだこれからたくさんあると思う。
●だらだら過ごしてしまうことに対しては、過ごし方を自分で考えることでいい方向に行くと思う。
●週5日制の趣旨や、何をしていいのか目的がわからないという人がたくさんいると思う。
●前は部活で土曜日・日曜日がつぶれることがあったが、今はどちらか休みになり、体を休めることができるようになった。
Q子どもにこんな過ごし方をしてほしいとか、期待していることは?
◆地区別懇談会などで話し合う中で、子どもには目的を持ち、めり張りのある生活をしてほしいと考えている親が多くいた。子どもと親の意見のずれを感じたが、親の意見でなくて、子どもが自分自身で考えていくことが大事だと思った。(会場保護者)
▽自分から地域に出て活動したり、親の手伝いをしたりすることを通して、人とふれあう機会を多く持ってほしい。(会場教師)
Q土曜日・日曜日の休みをより充実させるために、何をしますか?
●子ども会や公民館の行事に参加するのがいいと思う。
●自分の趣味を深めていきたい。
●地域の人たちとふれあうことや行事に参加することで交流を深めたい。
●花を植えるなど地域の人たちと協力して、みんなが和やかで落ちついた生活が送れるような環境づくりに使いたい。
●金曜日の夜に、土曜日・日曜日をどのように過ごすか計画を立てておくことも大事だと思う。
●土曜日・日曜日のどちらかはボランティアや勉強に使って、あとの一日は思い切り遊ぶ日にしたい。
●土曜日・日曜日に学校を開放して、ふだんの学校生活でできないことを行ってほしい。
●土曜日・日曜日のどちらかで部活をしているときに、学校を開放して、地域の人たちや小学生が学校に来られるといいと思う。
▽完全週5日制になって、土曜日・日曜日を使って授業の準備をしている先生がとても多く、また自分の家庭を持っている先生も多い。土曜日・日曜日に引率するのが難しい。(会場教師)
●身近な家族との生活を大切にしたい。特別なことをしなくても親や祖父母と一緒に過ごすことはとても勉強になると思う。
●土曜日・日曜日に自分のことをするために、学校のある5日間をけじめをつけてしっかりと過ごしたい。
完全学校週5日制が始まって 子どもを取り巻く皆さんの声
子どもにかかわる皆さんから、それぞれの立場から見た学校週5日制について話していただきました。
子どもと一緒に外でふれあいたい
大淵第一小学校PTA 秋山真澄さん(大淵)
- 写真あり -
週5日制が始まり、与えられた時間をどのように過ごしたらいいのかと不安がありました。いろいろな過ごし方があるとは思うのですが、子どもにはテレビゲームをしたりテレビを見たりするなど、室内で遊んでばかりいてほしくないですね。だからといって外で遊ぶとなると事故や不審者の問題など安全面の心配があります。昔に比べて遊ぶ空間が減ってきたことも、子どもたちの過ごし方に影響を与えていると思います。
ことしから私たちPTAの成人教育部では、毎月第1・3土曜日の午前中に、小学校のグラウンドを使って自由に遊ぶ場を設けました。私も子どもと一緒に参加しています。地域の皆さんが集まり、顔見知りになって交流を深めていく場になることを期待しています。外で遊ぶことで人とのかかわり合いも生まれてきます。子どもたちが自分で考えながら遊ぶことを期待しています。異年齢集団で遊ぶ楽しさを知ったり、体力づくりを目指したりしてほしいですね。子どもたちの見守りは部員が行っています。週末に仕事のある人が多くいますので、無理をせずお互い協力して継続していきたいと思います。
スポーツを生涯楽しむ土台づくりに
富士市スポーツ少年団本部長 高木亮(あきら)さん(中柏原新田)
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私は剣道のスポーツ少年団で、週2回、月曜日・金曜日の夜に子どもたちの指導をしています。週5日制が始まり、金曜日の夜のけいこでは、次の日が休みということからか、子どもたちが伸び伸びと活動し、表情にもゆとりが出てきたようにも感じられますね。
ただ、土曜日にもけいこを入れるなどして、週5日制によってできたゆとりを少年団活動で縛ることはできません。保護者も少年団に子どもの面倒を任せるのではなく、少年団活動を通じた家族の団らんを大切にしてほしいと思います。夏の暑さや冬の寒さに負けず、子どもたちが真剣に汗を流している様子を見てもらいたいですね。共通の話題もふえ、親子のきずなを深めるきっかけになると思います。
これからは、週末を活用して、違う競技の少年団と交流する機会や、競技を離れて野外活動などを行い、交流できる場を設けていければと思います。週5日制になり、多くの子どもたちがスポーツに親しんでもらえるようになることを期待しています。活動を通じ、礼儀や作法を身につけ、スポーツを生涯にわたって楽しめる土台づくりをしたいですね。
子どもたちの自主性にこたえる準備を
天間地区生涯学習推進会会長 渡邊 威(たけし)さん(天間)
- 写真あり -
天間小学校では、開校以来の伝統行事となっているものに米づくりがあります。以前は学校行事でしたが、授業時数の減少に伴い、平成7年から生涯学習推進会や子ども会、PTAなどがかかわり、地区と一体になった行事に衣がえしました。とれた米は給食で食べたり、もちつき大会を行ったり、梅まつりのときに地区のお年寄りに赤飯弁当をつくって届けたりしています。このように子どもたちは米づくりを軸として、多くの地区の人たちと交流が深まり、広がりのある体験ができます。このほか推進会として、ことしから土曜日に小学校の体育館を使ってファミリ−バドミントンなどを行い、親子で参加できる機会をつくっています。
完全週5日制になったことで、学校と地区の各団体とで懇談会を持ちました。子どもたちや学校から、「こんなことをしてみたい」と投げかけがあれば、地区としていつでも応じられるよう準備していきたいと思います。そのためには各団体との連携を図ることが大切だと思います。ただ、子どもの自主性を考えると、大人が積極的になって子どもを対象にした行事をむやみにふやすことはどうかと思います。文化祭や体育祭などの地区行事でも活躍できるような場をつくるなど、子どもたちが地域に溶け込んでいけるような工夫がまずは必要ではないでしょうか。
休日に目的を持った過ごし方ができるような指導を
吉原第一中学校 渡辺利夫教諭
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学校週5日制が始まり、子どもたちが興味・関心を持ったことをみずから追求する授業が多くなり、生き生きと学習に打ち込む姿が多く見られるようになりました。新しく始まった総合的な学習の時間では、福祉や環境など各学年の中でほぼ共通の学習課題を設定し、その課題を解決するために学級内のグループがそれぞれ創意工夫をして授業に取り組んでいます。また、昨年までは月曜日に眠そうな子どもたちが多かったのですが、部活動が土曜日・日曜日のどちらか一日になり休む時間がふえたためか、ことしは元気な顔つきで登校している姿が目立つようになりました。
教師としては、子どもたちの学力が低下しないような授業内容の精選をはじめ、教材研究に時間が必要になりましたが、今まで以上に子どもたちを見つめ、それぞれの個性に合ったきめ細かな指導を心がけています。知識の量を追うのではなく、基礎・基本を定着させて学び方や考え方を育てることを重視し、子どもたちにとって必要な行事を計画していくことが大切になっています。
子どもたちに休日の生活を尋ねると、「テレビを見たり友人と遊んだりしていた」という答えが多く返ってきます。学校週5日制の趣旨を理解させ、目的を持った過ごし方ができるように指導する必要があると考えています。
ふれあい協力員
完全学校週5日制と同時にことし誕生した「ふれあい協力員制度」。地域の皆さんの教育力を生かし、子どもの学びと遊びを支援したり、子どもの安全を守ったりして地域ぐるみで豊かな心を持ったたくましい子どもを育てていこうとするものです。
子どもにかかわりたい皆さんの力を活用して
吉原二中で吹奏楽部の指導に携わるふれあい協力員 山口稔さん(今泉)
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ふれあい協力員になったのは、学校から協力員の話を聞いたことがきっかけです。初めはどのような形で子どもにかかわればいいか全くわかりませんでした。音楽が好きで、楽器に親しんでいたことから、吹奏楽部の指導に協力をしています。放課後や土曜日・日曜日など時間の都合がつくと、練習の指導や演奏会の手伝いに行きます。子どもたちは自分の子と同じくらいの年齢ですし、とても素直にこたえてくれるので、自然と足が向き指導にも熱が入ってしまいます。協力員の活動を通じて、子どもたちや学校の新しい発見にもなります。
子どもたちに積極的にかかわりたいと思っている人はきっと多いはずです。そんな皆さんの力をぜひ活用してほしいですね。また、ふだんから全員が協力員のような意識で、子どもたちや学校を見守り、盛り上げていくことは大切ではないかと思います。
子どもをはぐくむ地域教育推進事業
田島さんは3年前から「たごっこパーク」という冒険遊び場を設立。さらに地区の子ども会やPTAなどと一緒に冒険遊び場づくり協議会をつくり、県から「子どもをはぐくむ地域教育推進事業」の委託を受けるなど、地域の子どもをはぐくむための活動を繰り広げています。
子どもが自由に遊べる居場所の確保を
田子浦地区で冒険遊び場づくりに携わっている 田島浩子さん(川成島)
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子どもの生きる力をはぐくむために、遊びのプログラムを提供することだけにとどまらず、人との関係を築けるような子どもの居場所を身近なところに確保することが大切だと思います。現在取り組んでいる冒険遊び場は、子どもが想像力を働かせ、自分の責任で自由に遊ぶ場所。身近でお金がかからずだれでも来られるところです。協力し合いながら遊びを自分たちでつくり出していくことで、子どもたちにもよい影響を与えてくれると思っています。
大人は子どもの遊びの世界では、じゃまにならないようにいて、必要なときに援助することが大切です。子どもは遊びを通して信頼できる大人と出会い成長していきます。大人は子どもに対して素直に正面から向き合うことが必要ではないでしょうか。週5日制になって、子どもに対する大人の存在が問われているようにも思います。
生きる力をはぐくむために
街全体が生きた教室として子どもたちにかかわって
富士市教育委員会 平岡彦三教育長
- 写真あり -
生涯にわたって学び続ける力を
学校週5日制は子どもたちがゆとりの中で生きる力をはぐくむことを目指しています。さまざまな体験を通して、単なる知識だけでなく、身につけたことを活用する力、学ぶことに対しての意欲、考え判断する力、表現する力など、生涯にわたって学び続けるために必要な力を身につけてほしいと思います。
学校週5日制が始まり、学校では月曜日から金曜日までの5日間を充実したものにするため、授業改善に取り組み、地域に信頼される学校づくりに努めています。各学校の確かな教育実践で、自分のよさに向かって努力する子どもたちを育て、皆さんの不安や戸惑いを取り除いていきたいと思います。
一方、家庭にとっては土曜日・日曜日の過ごし方を見直すいい機会です。家庭だからこそ学べることや身につく習慣があります。子どもとかかわる時間を大切にしてほしいと思います。また、子どもたちの学習に地域が果たす役割は大きなものがあります。
子どもたちには土曜日・日曜日の休みを利用して、今まで興味・関心があってもできなかったことに積極的に取り組んでほしいと思います。公民館、博物館、図書館などでも子どもを対象とした講座を開いています。こうした講座に参加してみるのも一つです。
青少年会議でも土曜日・日曜日の過ごし方について意見や提案が多く出ましたが、何をどう支援していくべきかの答え探しは始まっています。子どもたちの積極的な働きかけに大人はきっとこたえてくれると思います。
学校、家庭、地域の連携を
「人は人間を浴びて人になる」という言葉のように、人は人とかかわり合いながら成長していきます。そして学びながら人は輝き、魅力を加えていきます。学校、家庭、地域が連携を深めながら、街全体が生きた教室のように、子どもたちにかかわっていくことで、子どもたちの命がきらめいていきます。
問い合わせ 学校教育課 電話55-2869
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