富士市 FUJI CITY Official Site

富士市
広報ふじ > 平成13年 > 平成13年10月5日 788号 > 【広報ふじ平成13年】我が街 紙の街

【広報ふじ平成13年】我が街 紙の街

私たちの富士市は日本有数の紙の街。その礎は今から100年以上も前の明治時代に築かれました。今回の特集では、紙の街の歴史などをご紹介します。

紙の街の歴史 History

富士市の製紙業の始まり
 江戸時代、富士山南西ろくの大宮(現在の富士宮市付近)では、駿河半紙の生産地としてミツマタを原料とした和紙づくりが盛んに行われていました。
 明治に入って宿場制度が廃止されると、吉原宿で働いていた大勢の人々は職を失ってしまうことになりました。こうした人々を救うため、吉原宿の内田平四郎らは明治2年(1869年)に愛鷹山西ろくの内山地区の開墾を手がけ、ミツマタや茶、桑などの栽培を行いました。そして、紙すき、製茶、養蚕などの産業を奨励しました。
 明治12年(1879年)、内田平四郎は栢森貞助(かやもりていすけ)らとともに、伝法村国久保に手すき和紙工場「鈎玄(こうげん)社」を設立。苛(か)性ソーダなどの薬品を使って原料を処理するなど、洋紙生産の技術を取り入れて紙をすいていました。しかし、明治13年(1880年)ころから需要が低下して生産過剰となり、紙やミツマタの価格も下がったため、工場は長く続きませんでした。
 明治20〜30年代になると、わき水の豊富な今泉地区を中心に手すき和紙工場が相次いで設立されるようになります。明治20年(1887年)、芦川万次郎らが設立した手すき和紙工場では、軽便和紙乾燥機を開発して生産性をより高めたほか、手すき和紙の技術者を養成するための伝習所も開設されました。こうして地域の人々により、富士市の製紙業の基礎が築かれたのです。

工場の機械化が進む
 同じ時期に、東京からの大資本による製紙工場が富士市に設立されることになりました。明治23年(1890年)、現在の富士市域で最初に誕生した近代的な製紙工場は、入山瀬に建設された富士製紙会社でした。工場の設立とともに地元住民に新たな職場が提供され、多くの優秀な製紙技術者が育成されていきました。
 一方、富士製紙会社という洋紙を生産する大規模な製紙会社ができたことで、手すき和紙に携わってきた人々はさまざまな面で影響を受けました。
 明治の終わりころから大正時代にかけて、和紙工場の機械化が進み、手すき和紙工場は激減しました。そして、第一次世界大戦時の紙・パルプ輸入禁止で紙の需要が増大し、今泉・原田地区を中心に地元の資本家によって機械すき和紙の小工場が次々と設立されました。こうして今日のような富士市の工場群ができ上がっていったのです。
 このころ地元の資本家が設立した工場の中には、日本独自の※「ねり」を使って、独特の風合いを持つナプキン原紙を生産しているところもありました。また、吉原の佐野熊次郎は、印刷機を独自に開発し、多色刷りのナプキンを生産し、製品をアメリカに輸出していたほか、日英ロンドン博覧会では銀賞を受賞するなど、その技術は高い評価を得ていました。
※トロロアオイなど植物の根をすりつぶしてつくった粘液

不況や戦争の影響を強く受ける
 昭和に入り、世界恐慌と呼ばれる大不況の影響を受け、中小の工場の中には休業・倒産に追い込まれるものも多くありました。この不況も昭和8年(1933年)ころになって戦争の機運が高まるとともに回復に向かい、岳南地域での製紙会社の設立も急激にふえていきました。
 しかし、昭和12年(1937年)、日中事変が始まると、産業活動は統制され、軍需優先へ。昭和16年(1941年)、太平洋戦争に突入してからは、工場は強制的に軍需工場へと転換させられるなど、縮小や統合を受けました。

戦後、全国有数の生産地に
 昭和20年(1945年)に終戦を迎えると、岳南地域ではこの年のうちに39工場が製紙業を再開し、さらに昭和23年(1948年)までの4年間に42もの製紙工場が新たに設立されています。この時期、現在の富士市域では、戦時中も操業していた工場を合わせて120工場が操業していたことになります。これは戦後の出版ブームが大きく影響したことによるものです。
 その後、昭和30年代の貿易自由化に伴う業界の再編成、昭和40年代の田子の浦港ヘドロ問題などが起こりました。各種の環境保全対策が講じられ、企業の自助努力もあり、昭和50年代に入り公害問題について一応の解決をみました。
 戦後のこうした歩みを経ながら、古紙再生技術の向上など製紙技術の高度化が進んだことによって、富士市は全国有数の産地を確立したのです。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 和紙の原料・ミツマタ
( 写真説明 ) 富士市域で最初に誕生した近代製紙工場「富士製紙第一工場」(入山瀬)
( 写真説明 ) 明治23年(1890年)に建設。原料の木材や潤井川の豊富な水量を得ることができ、また、鉄道が開通して輸送の便がよい場所でした。
( 写真説明 ) 富士川での原木流送
( 写真説明 ) 原田製紙で使われた第1号抄紙機(模型)
( 写真説明 ) すいた紙を乾燥させる「ドライヤー」(上)、紙を切る裁断機(右)
【写真提供:市立博物館】

紙の街の現在 Now

全国の約13%の紙が富士市産
 平成12年4月現在、市内にある製紙会社は70社、95工場。平成11年中、市内で生産された紙全体の生産量は390万8,861トンで、全国生産量の12.8%を占めています。特にトイレットペーパー、ちり紙、ティッシュペーパーなどの衛生用紙は、全国の22.4%を生産。中でもトイレットペーパーの生産は全国一の産地となっています。また、白板紙や包装用紙などの紙の生産量も高い割合を占めています。

リサイクルなどの課題も
 今日、環境保全意識が高まる中、市内の企業も古紙利用の拡大を図り、新しい技術開発などさまざまな取り組みを行っています。それと同時に、古紙リサイクルシステムの確立のため、再生紙製品の利用拡大が求められています。
 また、製造途中で発生する製紙かすのペーパースラッジ(PS)などの廃棄物処理とその有効利用も大きな課題となっています。

- 写真あり -
( 写真説明 ) トイレットペーパーの生産量日本一29万4,418トン 全国比32.2%
●主な紙製品の生産量 ()内は全国比
印刷・情報用紙 117万8,196トン(10.4%)
包装用紙     17万8,000トン(17.5%)
衛生用紙(トイレットペーパーを含む)
         38万1,585トン(22.4%)
雑種紙      16万5,205トン(15.8%)
段ボール原紙  108万9,251トン(11.9%)
白板紙      68万8,608トン(37.4%)

富士市の工業における紙・パルプ産業(平成11年 従業者4人以上の事業所)
●年間製造品出荷額 ()内は構成率
 5,138億2,423万円(38.5%)
●従業者数
 1万2,347人(29.3%)
●事業所数
 291事業所(24.3%)

記者として紙業界に40年以上携わった 高瀬 四郎さん
- 写真あり -
紙づくりにかける情熱が紙の街を築く力に
 紙づくりには水が欠かせません。富士地区の豊富で質のよい水の存在や、京浜・中京圏の大市場に近いなど、条件がそろっていたことも紙産業が発展した大きな要因です。製紙機械など技術の進歩も目覚ましいものがありました。また、紙づくりにかける皆さんの意欲や情熱が、紙の街を築く力になり、富士市の発展を支えてきたと言えるのではないでしょうか。
 日本を代表する紙の街として、この地域でいつの日か紙・パルプ産業の国際大会が開催されたらすばらしいですね。

県家庭紙工業組合理事長 佐野 廣彦さん
- 写真あり -
地場産品の愛用と古紙のリサイクルにご協力を
 現在では、製造工程が効率化し、昔に比べ格段に生産性が増加しました。工業用水の供給が大きな変化をもたらし、また、循環水の利用などで、使う水の量も大幅に減少しました。大きな課題である環境対策も進んでいます。消費者のニーズに応じて品質も変化してきましたね。
 地場産業存続のためには、企業の開発力や競争力を強化し、企業と行政が一体となった取り組みが必要です。また、市民の皆さんには、ぜひ地場産品の愛用と古紙のリサイクルにご協力いただきたいと思います。

21世紀の紙文化をみつめて Papertful Collaboration 2001

紙の祭典2001 全国紙業振興大会 in Fuji 11月2日〜4日
 21世紀の幕開けの年、富士市で全国紙業振興大会が開催されます。この大会では、紙・パルプ産業関係者を対象にした式典及びリサイクルセミナーなどが開かれ、紙の街・富士市に全国から紙にかかわる皆さんが集まります。
 大会期間中、一般の皆さんを対象にした展示や紙を使ったイベントも開催します。身近な紙について見て、遊んで、知ってみませんか。
- 図表あり -

ペーパーフェア
11月2日(金曜日)〜4日(日曜日)10時〜17時 (4日は15時まで)
ところ ロゼシアター特別展示室
・紙のクラフト展示
・紙の歴史・虎(とら)の巻
・紙製品展示 など

ペーパーエキスポ
11月2日(金曜日)〜4日(日曜日)10時〜17時 (4日は15時まで)
ところ ステーションプラザFUJI(JR新富士駅構内)
・世界各国の紙製品展示
・世界のトイレットぺーパー
・富士市製紙業のパネル展
・紙製品に関するQ&Aコーナー  など

ペーパーランド
11月3日(土曜日)・4日(日曜日)10時〜17時 (4日は15時まで)
ところ 中央公園富士見の広場
・ペーパープール
・ペーパーコサージュづくり
・ペーパースライダー
・ペーパーブース
・ペーパーリサイクル
・PS(ペーパースラッジ)製品展示
・PS製品によるガーデニング
・チャレンジトイレットペーパー積み上げコンテスト
・チャレンジペーパークイズラリー
・紙すき体験 オリジナルはがき教室
・各社製品展示コーナー
・チャリティ販売
・自宅で再生紙探し など
- 写真あり -
( 写真説明 ) 大人気のペーパープール(昨年の商工フェアより)
・「ふじ商工フェア」を中央公園で同時開催します。詳しくは、9ページをごらんください

問い合わせ 商工労政課 電話55-2779、富士商工会議所 電話52-0995
添付ファイル
※PDFを初めてご覧になる方は、ソフト(Adobe Reader)のダウンロードが必要です。
「Get Adobe Reader」のボタンをクリックし、説明に従いAdobe Readerをダウンロードして下さい。
Get Adobe Reader
広報広聴課 (市庁舎8階北側)
電話:0545-55-2700 ファクス:0545-51-1456
メールアドレス:kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp
〒417-8601 静岡県富士市永田町1丁目100番地 電話 0545-51-0123 ファクス 0545-51-1456
E-mail kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp