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【広報ふじ平成12年】富士の民話あれこれ

 増川3丁目の圓照寺(えんしょうじ)に「黒仏(くろぼとけ)さん」と呼ばれる仏像があります。これは、高さが90センチメートルくらいで、ヒノキの一刀彫りでつくられ、お寺の初代ご本尊でした。
 今回は、この「黒仏さん」に伝わる話を紹介します。

増川の黒仏さん
 昔、増川・江尾の一帯には浮島沼が広がり、根方街道は北の愛鷹山ろくの山すそを周るようにありました。当時、根方街道は重要な道で、旅人も多く往来していました。
 いつのころからか、馬に乗った旅人が圓照寺の前を通るとき、寺のご本尊の方を向いて礼をしないと、必ず落馬すると言われるようになりました。
 馬に乗った旅人は、必ず礼をして通りましたが、ある日、「そんなばかなことがあるものか」という旅人が礼をせずに通りました。すると、やはり落馬してしまいました。
 なぜ落馬するのか理由がわかりませんでしたが、あるとき、住職が道路の方を向いていたご本尊の仏像を、反対の北向きにしてみました。すると、その日から落馬する旅人がなくなったということです。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図

圓照寺の住職 日比 昭生(ひび あきお)さん
- 写真あり -
 黒仏さんは、その名のとおりー真っ黒な色をしています。圓照寺の初代ご本尊として祭られていたのですが、時代や作者など詳しいことはわかっていません。彫りが密であるという作風から、室町時代のものではないかと言われています。また、この仏像は釈迦如来(しゃかにょらい)像ですが、園照寺は浄土宗で本来阿弥陀(あみだ)如来像を祭るということからも、この寺の創建(寛永10年・1633年)以前に伝わってきたものと言われています。
 現在黒仏さんは、地蔵堂の中に祭られていて西側を向いています。毎年8月26日に行われる*圓照寺岩船地蔵尊大祭と大みそかの日に、地蔵堂を開いて皆さんにお披露目しています。
*元禄元年(1688年)作の石仏。沼地であったこの地域で、船の安全を守り、水に対する厄よけをしてくれる地蔵さんとして知られています。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 圓照寺の地蔵堂
( 写真説明 ) 黒仏さん
添付ファイル
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