善光島(今の荒田島2丁目付近)のお宮さん(八幡神社)には、昔、キツネが出たという言い伝えがありました。
今回は、この善光島のキツネにまつわる話を紹介します。
善光島のキツネ
昔の津田村は、家は飛び飛びで道は狭く、それに木が生い茂っていました。吉原1丁目を寺町(てらまち)と言ったころ、津田村の百姓がお祭りでおすしをつくったので、重箱に入れて寺町の親戚へ持っていこうとしました。そして、善光島のお宮さんのところへ来ると、なぜか急に重箱が重くなったり、軽くなったりしました。
善光島のお宮さんは、木が生い茂った森で、昔からキツネが出るといううわさでした。「はてな。キツネのしわざかな」と思いましたが、気味が悪いので急いで寺町の家に行きました。
寺町の家に着いて重箱を開けると、油揚げのおすしが一つもありません。キツネに取られてしまったのでした。
夜になってお宮さんの前を通ると、ごちそうになったお礼のつもりか、キツネたちがちょうちんに火をつけて、お宮さんの周りを昼間のように明るくしていたそうです。
稲垣 ただしさん(荒田島町[右]
近藤武雄さん(伝法)[中央]
大著 進さん(伝法)[左]
- 写真あり -
大正の初めころにはこのお宮さんの付近にキツネが出たという話を、親から聞いたことがあります。私たちが子供のころはこのあたりは一面田んぼで、お宮さん以外にあまり人家はありませんでした。昼間はよくお宮さんの木に登ったりして遊びましたが、夜は怖くて近づけませんでした。
このお宮さんでは、明治のころから1月・6月・10月の年に3回、お祭りを行っています。戦前までは、たくさんの子供たちが集まってきたり、おこもりといって一晩じゅう火をたいてみんなで話をしたりとにぎやかでしたね。近ごろは少し寂しくなりましたが、今でも荒田島2丁目の3組合が、1年交代で当番になってお祭りを開催し、地域のきずなを深めています。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図
- 写真あり -
( 写真説明 ) 善光島の八幡神社(10月17日のお祭りより)