急速に進む高齢化。それに伴い、ますます介護の問題が身近になってきます。介護する側、受ける側がそれぞれ安心して生活できるよう社会全体で支え合う制度として生まれた「介護保険制度」。いよいよ来年4月からこの制度がスタートします。今回の特集では、介護保険制度の仕組みや10月から始まる要介護認定の申請手続などについてご紹介します。
介護保険制度の内容は?
21世紀の半ばには、国民の3人に一人が65歳以上になる「超高齢社会」の時代になることが予測されています。
このことは、介護を必要とする寝たきりや痴呆(ちほう)などの高齢者がふえると同時に、その介護をする人も高齢になり、介護することが大きな負担になってくることを意味します。
介護は家族にも少なからず負担がかかります。介護のために仕事をやめざるを得ないといった事例も少なくありません。核家族化が進み、女性の就労率が高まるにつれて、家族だけで介護することはますます難しくなってきます。
そのような介護を家族で支えるだけでなく、社会全体で支えていくための制度が介護保険制度です。
介護保険制度は医療保険や年金保険などと同じように、社会全体でお互いを助け合う仕組みになっています。この制度は、40歳以上の皆さんが納める保険料と公費で賄われます。そして、保険料を納めることによりサービスを受ける権利が得られます。
- 図表あり -
介護保険ではどんなサービスが受けられる?
介護保険では、介護が必要になっても、できる限り住みなれたところで自立した生活ができるよう、必要な保健・福祉・医療サービスが総合的に受けられる仕組みを目指しています。また、サービスを利用する本人や家族が必要なサービスを選択できることや、さまざまな民間事業者の参入により、競争の原理が働き、効率的で良質なサービスの提供ができることが特徴です。
介護保険によって、実際に次のようなサービスが受けられます。
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( 図表説明 ) 在宅でのサービス
( 図表説明 ) 施設でのサービス
申請はどのように?
介護サービスを受けるには、まず市へ申請することが必要になります。市では、認定作業を円滑に行うため、特別養護老人ホームに入所していたり、在宅で訪問介護や訪問看護を受けていたりするなどの保健・福祉・医療サービスを現在受けている人と、そうでない人に分けて要介護認定の申請を受け付けます。
サービスを受けるには10月から始まる要介護認定の申請をすることが必要です
10月〜平成12年1月は、申請の受付方法が2通りに分かれます。(平成12年2月以降は、随時介護保険課で申請を受け付けます)
申請
●申請が必要な人
・65歳以上で、寝たきりや痴呆などで介護や支援が必要と思われる人
・40歳以上65歳未満の人で、特定疾病(注1)で介護や支援が必要と思われる人
●申請の仕方
本人または家族が申請してください。また、近くの居宅介護支援事業者(注2)や介護保険施設(注3)などに申請を依頼することもできます
現在、保健・福祉・医療サービスを利用している人
受付期間 10月〜11月末
受付場所 現在サービスを利用している施設など(在宅介護支援センター、デイサービスセンター、特別養護老人ホーム、老人保健施設、社会福祉協議会など)
*各施設などで申請期間を定めています。その期間に申請できないときは、11月末までに各施設などへ申請してください。
現在、保健・福祉・医療サービスを利用していない人
受付期間 12月〜平成12年1月末
受付場所 各地区公民館など
*日時を決めて各地区の公民館などを巡回して申請を受け付けます。お近くの公民館などへお越しください。
なお、期間中、介護保険課でも申請の受け付けを行います。
●日時、会場など詳しくは、広報ふじ11月5日号、12月5日号や各町内の回覧などでお知らせします。
申請をしてからサービスを受けるまでの流れは?
- 図表あり -
注1・特定疾病
初老期の痴呆(アルツハイマー病、脳血管性痴呆など)、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞(こうそく)など)、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症、パ−キンソン病、脊髄(せきずい)小脳変性症、シャイ・ドレーガー症候群、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息(ぜんそく)など)、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症、慢性関節リウマチ、後縦靭帯(こうじゅうじんたい)骨化症、脊柱管狭窄(さく)症、骨粗鬆(こつそしょう)症による骨折、早老症(ウエルナー症候群)
注2・居宅介護支援事業者
介護保険のサービスを利用する人などから依頼を受けて介護サービス計画の作成を行う事業者として、県に申請を行い、その指定を受けた事業者のことです。
注3・介護保険施設
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老人保健施設)、介護療養型医療施設(療養型病床群など)のことです(P3参照)。
注4・要介護度区分と在宅介護サービス月平均利用額(仮)
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( 図表説明 ) *月平均利用額は平成11年8月公表分。
注5・介護支援専門員
介護支援専門員(ケアマネージャー)は、保健・医療・福祉の専門職のうち、一定の実務経験があり、都道府県などが行う試験に合格し、実務研修を修了した人です。介護支援専門員は、主に居宅介護支援事業者や介護保険施設などに配置され、介護サービス計画の作成や事業者などとの連結調整を行います。
介護サービス計画の具体例は?
市内に住むAさんはことし78歳になる男性。2年前に事故で足を骨折し、徐々に動けなくなり寝たきりの状態になりました。現在、家族の介護を受け自宅で過ごしていますが、家族の介護疲れが心配なAさんは、介護サービスを受けたいと希望しています。
ある日、Aさんは家族に頼み要介護認定の申請を出しました。その後、Aさんの自宅に市の職員が訪問調査に訪れました。
審査の結果、Aさんには「要介護3」と認定された通知が届きました。Aさんは家族とともにどのようなサービスを受けるか介護支援専門員に相談し、在宅介護サービス計画の作成をお願いしました。介護支援専門員は27万4,000円の月平均利用額の中で、Aさんに次のような組み合わせを提案し、Aさんは、自分と家族の希望をできる限り取り入れた介護サービスを受けることになりました。
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( 図表説明 ) Aさんの介護サービス計画
( 図表説明 ) *巡回型訪問介護…ホームヘルパーが複数の家庭を巡回し、排せつなど短時間の介助をするサービス
( 図表説明 ) ●短期入所が6か月に3週間程度。
( 図表説明 ) ●このほか、車いすと特殊寝台の福祉用具貸与。
( 図表説明 ) このサービスを利用するに当たっては、Aさんはかかったサービス料の1割を負担することになります。
来年4月のスタートに向けて全力で準備を進めています
介護保険課 植松 雅紀(まさのり)課長
- 写真あり -
現在、富士市の高齢化率は13.8%で、全国平均よりは低くなっています。しかし今後、富士市でも高齢化が進み、ますます多くの皆さんが介護を必要とすることは確実な状況です。
介護保険制度は福祉と医療が一体となったサービスを、公平に受けられるこれまでにない新しい制度です。市では、制度の内容などを皆さんに詳しく知っていただくため、各地区などで説明会を実施してきました。説明会では、認定の公平性や保険料のこと、サービスの提供についての質問が多く出され、介護保険への関心の高さとともに、新しい制度に対する皆さんの期待や不安もうかがえました。
来年4月の制度開始まであと7か月になりましたが、市民の皆さんにとって利用しやすい制度になるよう、市では全力を挙げて制度の開始に当たっての準備を進めているところです。
年明けには市の介護保険事業計画を策定しますが、それに当たり市民懇話会を設置し、委員の皆さんからご提言をいただきながら、富士市に合った計画をつくっていきます。
介護保険は皆さんの保険料で支えられる制度です。保険料の額は決まり次第、皆さんにお知らせします。この制度でのサービスを利用するためには、まずは10月から始まる要介護認定の申請が第一歩となります。介護サービスが必要な人は、ぜひ申請をしてください。
介護保険 Q&A
介護保険制度説明会などで、市民の皆さんから多く出された質問とその回答をまとめました。
◇申請
Q 申請書類が多くて面倒なのではないか?
A 申請用紙は一枚で、記入しやすいように簡潔なものになっています。
◇訪問調査
Q 訪問調査ではどんなことを聞かれるのか?
A 訪問調査は、市の職員や市から委託を受けた介護支援専門員が家庭などを訪問します。調査は視力・聴力などの身体機能や、起き上がり、歩行などの基本的な身体動作、衣服の着脱や浴槽の出入りなど日常生活動作に関する87項目を聞き取ります。
◇認定審査会
Q 認定審査会のメンバーはどんな人でどういう審査をするか?
A 保健・医療・福祉の専門家で構成されています。コンピュータによる一次判定の結果が適正であるか5人の審査会委員で検討し、必要に応じて変更します。
Q 認定審査会の公平性は?
A 公平性を保つため、審査判定は一次判定結果をもとに、全国共通の心身の状態の例に照らして行われます。また、審査判定のマニュアルに沿って委員の研修を行います。
◇要介護認定
Q 申請から認定までの間に状態が悪くなったときはどうするのか?
A 随時申請ができますので、再申請してください。また、要介護認定は原則として6か月ごとに見直されます。
Q 認定結果に不服の場合、異議申し立てができるのか?
A 要介護認定について不服がある場合は、その結果を知らされてから60日以内に、県の介護保険審査会に不服申し立てができます。
◇サービスの利用
Q 富士市以外の事業所で行っているサービスも使えるか?
A 介護保険のサービスは他市町村の事業所のサービスも使えます。
Q 現在、特別養護老人ホームなどの施設に入所している人が、自立や要支援の判定がされた場合はどうするのか?
A 施設入所者には5年間の経過措置があります。その間に、自宅で介護ができるように支援していくことになっています。
◇保険料
Q 富士市の第一号被保険者の平均的な保険料はいくらか?
A 各種サービスの単価基準が示されてから決定しますので、現時点で正確な額はお知らせできません。来年3月には富士市の保険料が提示できます。
Q 第二号被保険者の保険料は?
A 現在、具体的にはいくらか決まっていません。医療保険に上乗せされ、事業主と折半して負担していただくことになります。
◇保険証
Q 保険証の交付は?
A 第一号被保険者には全員交付されますが、第二号被保険者へは、認定された人や希望者に交付します。
Q 介護保険を使っているときに、医療保険は 使えるのか?
A 使えます。医療に関する部分は医療保険で、介護に関する部分は介護保険で対応します。
介護保険制度については、広報ふじ20日号の介護保険コーナーや各町内の回覧などでこれからもお知らせしていきます。ぜひごらんください。
問い合わせ 介護保険課 内線 2307
Eメール kaigo@city.fuji.shizuoka.jp