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【広報ふじ平成10年】特集2 ロゼシアター開館5周年記念事業 市民創作ミュージカル 新・曽我物語 名残りの小袖

脚本−丸茂湛祥(たんしょう)さん、演出・振付−三浦克也さん。そのほかの出演者約100人、スタッフ約100人はすべて市民から一般公募した、市民創作ミュージカル。公演は海組と空組に分かれて行われました。舞台は初めてという人も多く1年間という長く厳しい練習、準備を経てみんなの手でつくりあげた舞台。11月1日・3日、ホールじゅうに感動が広がりました。

鳥は飛ぶ その羽は強く風を切る
鳥は翔(かけ)る その瞳(ひとみ)は西の空を見つめる
なぜそんなに燃えるのか
なぜそんなに赤く染まるのか
たとえ夢が激しく震えていても
たとえ運命が悲しく心を閉ざしていても
山の向こうには何かが待っているから
          テーマソング「鳥は翔る」より

- 写真あり -
( 写真説明 ) 平成9年8月25日 企画発表
( 写真説明 ) 緊張のオーディション
( 写真説明 ) 配役選考をかねた課題練習発表
( 写真説明 ) キャスト&ッスタッフジャンバー
( 写真説明 ) 衣装づくりもすべて市民ボランティアの手で
( 写真説明 ) 曽我まつりに参加。曽我物語ゆかりの地をパレード
( 写真説明 ) 踊りと声がひときわ目立った富士まつり
( 写真説明 ) びっくり箱コンサートにゲスト出演
( 写真説明 ) 練習するみんなを鈴木市長が激励
( 写真説明 ) 本番直前。さあ、1年間のすべてを舞台へ


演劇は「娯楽」。その娯楽が続いて「文化」になる
演出・振付 三浦 克也さん(演出家)
- 写真あり -
 この話をいただいたとき、ミュージカルに曽我物語?和もの?あだ討ち?正直言って、これはだめだ、やっても成功しないだろうなと思いました。でも作曲はジャズ系の方を起用するというので、これはおもしろい、時代劇とジャズの新しい「和ものミュージカル」をつくれるかもしれない、と思ったんです。
 また、1年間という長い期間の取り組み、しかも出演者が素人ばかりで大変ではとよく聞かれますが、少しも大変だと感じたことはありません。好きなことに打ち込むときは楽しく充実しているものです。確かにオーディションを終えたばかりのころは、出演者の多くが歌としゃべりはまずまずでも踊りがだめでした。ですから1年間の前半を体を動かす基礎訓練に当てました。決して易しいとは言えない練習に、きっとやめていく人が多いだろうと思っていましたが、ほとんどの人がやめず練習も休まないんですよ。驚きましたね。踊りも目に見えてうまくなっていきました。
 それにこのミュージカルは細かい動作一つ一つを演出家の言う通りに動くのではなく、その後、その場面、そのせりふを自分たちで考えながらやってみようという姿勢で取り組みました。100回やって100回とも同じ芝居なんてあり得ない。違う芝居で当然なんです。それがまた新しい発見と感動を生むのです。
 それに芝居というのは自己満足だけでなく、またせりふを言う相手のためにやっているのでもありません。そこにはお客様がいる、ということを忘れてはいけないんです。ですから役者は舞台全体を考えて、自分本位にならず自分を押え舞台そのものを引き立てて演技をしなければいけない。そして舞台を終えた後のお客様からの拍手がその報酬なのだということを、出演者には肌でわかってもらえたと思います。
 演劇は「娯楽」です。その娯楽が続いて初めて「文化」になります。富士市にはせっかくこんなにいい施設があるのだから、このミュージカルだけに終わってほしくありませんね。これをきっかけにここで生まれた市民劇団のようなものができればと思います。小さくてもいいから毎年発表の場を設けてやっていくといいですね。またこれからは、出演者同士だけではなく、出演者と観客のふれあいができる交流の場になってほしいと思います。さらに市民劇団の交流を通して、富士市だけでなく日本全国、そして世界中の人々の交流の場、情報の発信基地になってほしいですね。


この舞台の感動は裏方さんたちのおかげですね
製作スタッフ・振付担当 細木(さいき)マリさん(ジャズダンス講師)
- 写真あり -
 私は主にストレッチと子供たちの指導を担当していました。最初は、ダンスは初めてという子がほとんどで大変でしたが、8月くらいからぐーんと真剣になってきて意気込みが感じられるようになりました。ときには厳しく注意したこともありましたが、今では子供たちにすっかり情が移ってしまい、舞台で一生懸命やっている姿を見たら胸が熱くなって涙が出てきましたね。
 また、私は裏方の仕事もしていました。夜遅くまで衣装に色づけしたり、着物と帯の組み合わせを考えたり、次の場の出演者を舞台へ送り出したりと大忙し。一般公募で手伝ってくれた人たちはもっと大変だったと思います。衣装はみんなの家にあった着物を縫い直したものがほとんどで、おばあちゃんまで連れてきて縫っている人もいました。こうした裏方さんたちのおかげで、この舞台の感動があるんですね。


子供たちの笑顔が何よりの励みに
杉山 直希さん(横割本町) 曽我十郎、箱王
- 写真あり -
 大役をいただいて、とにかく難しかった、の一言です。踊りもとても大変でした。でも好きでやっていることですから、苦労とは思いませんでしたね。
 周囲の支えがあってここまでやってこられました。特に、子供たちの屈託のない笑顔が私にとって何よりの励みになりましたね。本当に楽しかったです。


家族と出演者が私を支えてくれた
望月 典子さん(厚原) 満江御前、庵主
- 写真あり -
 曽我物語ゆかりの地に住んでいるので親しみはありましたが、全くの未経験の上に子供も小さく、最初は1年続ける自信がありませんでした。それがこうして舞台に立てたのは、家族と出演者の皆さんが支えてくれたから。
 何の取り柄もない私でもこんなに大きなチャンスをいただき、感謝しています。


部活もやりながら頑張った
佐野 恭史(たかひと)君(田子浦中1年) 好次、清蔵
- 写真あり -
 ミュージカルは初めて。しかもみんなより少しおくれて参加したので、最初は踊りが難しかったです。部活もあったか ら少し大変だったけど、すごく楽しかったから両方とも頑張りました。ここでできたたくさんの友達と一緒に遊んだり、歌ったり、踊ったり、それがもう終わっちゃうのかと思うと何だか寂しいです。


練習は厳しかったけど毎日が楽しかった
嶋 珠希(たまき)さん(吉原小6年) 景太、箱王
- 写真あり -
 とても緊張したけれど、客席から柏手をもらったときは、本当にうれしかったです。一年間厳しい練習が続きましたが、毎日が楽しかったです。年齢や学校を越えた友達ができたし、自分の役も好きでした。それにせりふの言い方などの演技の基本を教わりました。またこういう機会には、ぜひ参加してみたいです。
 

 皆さんの情熱がホールじゅうに響き渡った二日間。
 公演が終わると客席から惜しみない拍手が送られました。まるで鳥が羽ばたいていく音のようで、まさにテーマソングのとおり、感動という名の「鳥が翔(かけ)た」瞬間でした。そのとき多くの出演者、スタッフの瞳(ひとみ)は、これまでの努力と達成感、そしてこの舞台の感動をたたえた涙で輝いていました。
 こうして市民創作ミュージカル「名残りの小袖」は幕を閉じました。しかし、それは富士市の舞台芸術の一端を市民が担うという新しい文化創造の幕開けを、はっきりと告げた瞬間でもありました。
- 写真あり -
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