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【広報ふじ平成10年】富士の民話あれこれ

ネギをつくらない宇東川
 今では知る人も少なくなりましたが、原田の宇東川地区では、「ネギをつくってはいけない」という言い伝えがありました。
 今回はその言い伝えをめぐる話を紹介します。

 昔、宇東川地区の氏神様が、白い馬に乗って社殿へ帰ろうとしたとき、馬が何に驚いたのか急に暴れ出しました。氏神様は不意をつかれたため、握っていた手綱(たづな)を放し、馬から放り出されてしまいました。氏神様が落ちたところはネギ畑で、ネギの汁が目に入り、目が見えなくなってしまいました。
 そんなことがあってから、宇東川地区の人たちは氏神様に申しわけがないとネギをつくらなくなりました。
 あるとき、強情な男が「そんなはずはない。おれはそんなことは信じない」と言って、自分の畑にネギをつくりました。
 しばらくすると、その男の家族が次々に病気になったり、心配事が続いたりするようになりました。
 さすがの男も「これはネギをつくったことで、氏神様が怒ったからかもしれない」と思い、畑のネギを全部抜き取ってしまいました。
 するとどうでしょう、男の家に不幸なことは起こらなくなり、家族の病気も治りました。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 宇東川の守り神が祭られている飯森浅間神社
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図


宇東川で生まれ育った 小野 初治(はつじ)さん(宇東川3丁目)
- 写真あり -
 昔は、ネギをつくることができなくて苦労したものです。正月などにネギを使うときは、ほかの地区の親戚(しんせき)に分けてもらったり、隣の町内からネギを買ってきたりして食べていました。戦後になってようやく、ネギをつくり始めたのではないかと思います。
 また、町内にある飯森浅間神社には、氏神様が白い馬をつないだと言われる木もありましたが、昭和半ばの富士川台風で倒れてしまいました。
 小さいころはこの地区から東海道線の蒸気機関車の煙が見えたこともありますよ。今では家がふえ、田んぼや畑は少なくなりましたね。
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