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【広報ふじ平成10年】富士の民話あれこれ

狸久保の犬の字の呪文
 鷹岡の入山瀬に狸(たぬき)久保と呼ばれるところがありました。このあたりはタヌキが多く、通る人をよく化かしたと言われています。
 今回は狸久保に伝わる「犬の字の呪文(じゅもん)」の話を紹介します。

 昔、鷹岡の北部を追って甲州へ塩や魚を運ぶ道がありました。
 ある秋の日の夕方、田子の浦の魚屋が甲州へ行った帰り道、天間沢を渡って坂道に差しかかると、きれいな娘が道端の石に腰をかけて泣いていました。魚屋はその娘に、「一体どうして泣いているのか」と尋ねました。すると娘は、「私は甲州へ奉公に行っています。母が病気との知らせをもらい、ここまで来ましたが、先ほど目の前に人だまが見えました。きっと母が死んだのでしょう。私は悲しくてもうこの先進めません」と話しました。
 気の毒に思った魚屋は、「それはかわいそうだ。私も同じ方向へ帰るから一緒に行こう。お母さんがまだ死んだと決まったわけではないから」と励まし、一緒に歩き始めました。
 しばらくして、あたりもすっかり暗くなり、月も顔をのぞかせました。すると、生温かい風が魚屋のほおをさっとなでました。魚屋が後ろを振り返ると、娘の姿が見えません。不思議に思い前を見ると、そこには一本の大木が道をふさいでいます。魚屋は「さっきの娘やこれもタヌキのしわざに違いない」と思い、足元の石を拾って、そこにタヌキの苦手な「犬」の字を書くやいなや、力いっぱいその木に投げつけました。すると、大木は2つに裂けて倒れたので、魚屋はまたタヌキにだまされまいと一目散に逃げ帰りました。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 現在の狸久保周辺。写真右上の丘にタヌキが登ってあたりを見回したと言われています。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図


地元の様子に詳しい 小林 義弘さん(久沢北)
- 写真あり -
 昔の狸久保あたりは民家があまりありませんでした。木や草がうっそうと茂っていて、男の子でさえ一人で学校へ行くのも怖いくらいでしたよ。
 お寺の和尚(おしょう)さんに化けたタヌキの話など、このあたりにはタヌキにまつわる言い伝えが多く残っています。タヌキが近くの小高い丘に登って犬が近くにいないかどうか見回したという話もありますよ。小さいころよくおじいさんやおばあさんなどが話をしてくれたものです。
 今では家も多くなり、昔に比べると周りの様子も大分変わってきましたね。
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