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【広報ふじ平成10年】富士の民話あれこれ

宮島新田のぴったり観音
 田子浦地区の宮島新田に、馬頭観音(ばとうかんのん)を祭る小さな観音堂があります。この観音は「ぴったり観音」と呼ばれ、訪れる人に親しまれています。

 馬頭観音は、馬をはじめとした生き物の霊を救う仏様です。馬頭観音は市内にも数多く見られ、農業を通じた人と動物とのかかわり合いの深さを示してくれています。
 昔は「つくれ場」と呼ばれる共同の作業所がどこの村にもありました。「つくれ場」というのは、農家の仕事を手伝う馬や牛の足のつめが伸びたり、次第にささくれてきたりしてしまうので、それをかまのような刃物を使って切るなどして足のつめを直す場所でした。宮島新田にもつくれ場があり、いつのころからか、農作業を手伝ってくれる馬や牛の供養をするため、馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)を祭るようになりました。
 宮島新田の馬頭観音が「ぴったり観音」と呼ばれているのは、昔、ここにおじいさんの堂守(どうもり)が住んでいて、村人が病気になると、「なむ、ぴったり。なむ、ぴったり」と痛いところをさすってやると不思議に治ったことからと言われています。また、おじいさんが易をやっていて、ぴたりと当てるのでぴったり観音と言う説もあるようです。
 戦後、観音堂は火事で焼けてしまい、馬頭観音の碑も壊れてしまいましたが、その後、再び観音堂を建て、区の守り神として祭っています。
 また、毎年6月には区を挙げてお祭りを開き、観音さんの周辺は大変にぎわいます。
- 写真あり -
( 写真説明 ) ぴったり観音のお堂
( 写真説明 ) 宮島新田観音太鼓の皆さん
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図


宮島新田区区長 望月 常男(つねお)さん(宮島新田)
- 写真あり -
 私が子供のころも、観音さんはとても身近な存在で、学校へ行く前に友達と観音さんの所で待ち合わせをしたり、境内(けいだい)で馬跳びなどをしたりしてよく遊んだものです。今でも観音さんのご利益(りやく)をいただけるよう、お参りしている人もよく見かけますよ。
 現在、毎年区を挙げてお祭りを行っています。また、観音さんを守護神にした宮島新田観音太鼓も平成5年に発足しました。観音さんを通じて、人づくりやまちづくりにつながっています。これからも観音さんを大切にし、お祭りや観音太鼓などの新しい伝統を伝えていき、区に交流の輪が広がればいいと思います。
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