私たちのまち・富士市は富士山からのわき水に恵まれ、発展してきました。水は生命、健康、豊かな実りの源であり、大切にしていかなければなりません。
しかし、昔と比べて川や海が汚れています。私たちは生活が便利になるのと同時に、水の大切さを忘れてしまっているのではないでしょうか。
水も大切な資源の一つです。家庭に運ばれてきたきれいでおいしい水にまた出会うため、水のリサイクルについて考えてみませんか。
水は地球をめぐっている
地球上の水は、液体、固体、気体と姿を変えながら循環しています。雨や雪となって地上に降り注いだ水は、川となり海に流れ込みます。水は太陽に照らされて、地上から蒸発して雲となり、また雨や雪となって私たちの住む地上へ戻ってきます。このことから、水はみずからリサイクルを行っていると言えるでしょう。
しかし、近ごろは川や海の水の汚れが目立つようになりました。この水はいずれ私たちの飲み水となるかもしれない水です。また、水は人間だけでなく、他の生物や植物にとっても重要なものです。自然を守るためにも、水を汚さない努力が必要なのです。
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( 図表説明 ) 〈水の循環図〉
水の汚れの9割は家庭排水
水を汚しているのは、私たち人間です。その原因は何でしょうか。すぐに思い浮かぶのは工場排水ですが、工場排水は基準を設けて規制することができるため、水の汚れに占める割合は年々減ってきています。
では、原因は何かというと一般家庭から流れ出る家庭排水なのです。実に水の汚れの約9割を占めています。しかも、家庭排水は工場排水のように監視することが不可能なため、水の汚れに対する割合は進んでいるのが現状なのです。
トイレで流した水はもちろんのこと、おふろで体を洗ったあかや泡で汚くなった水、食器を洗った水について、もう一度考えてみる必要があります。ちなみに、家庭排水の汚濁源の一番は台所となっています。
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( 図表説明 ) 家庭内の汚濁源割合グラフ
無意識に汚している水
私たちはだれも水を汚そうなどとは考えていません。また、日常生活を送っている中で水を汚しているという自覚は薄いものです。しかし、私たちは知らず知らずのうちに、驚くべき大量の汚れを川へ流してしまっているのです。
例えば、刺身を食べたときに使ったしょうゆ。お皿にスプーン1杯分ほどの量が残っていたとき、あなたはどうしますか。何も考えずに排水溝口に流してしまう人が大部分ではないでしょうか。しかし、少量のしょうゆとはいえ、魚が生活できる水質に戻すにはふろおけ(300リットル)3.8杯分の水が必要に
なります。
また、洗濯や台所で使う洗剤には、自然界の中で分解しにくい性質を持つ界面活性剤や漂白剤が使われているものもあります。当たり前に流しているこうした排水も、実は水を汚しているのです。
富士市だけでも何万という世帯があります。たとえ1軒から出る家庭排水なら環境に与える影響が少なくても、すべての家庭の汚れが合計されれば、想像できないほどの量になってしまいます。
これで、水の汚れの9割が家庭排水だということを理解していただけるのではないでしょうか。
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( 図表説明 ) 川に流れ込むとこんなに大変!!
水を効率よくリサイクルするために
私たち人間の活動が活発になればなるほど、使う水の量はふえ、それに伴い汚れた水もふえます。昔に比べて川や海の水が汚れてしまったのは、川や海が本来持つ浄化能力以上の排水が流れ込んだためです。
そこで、下水道の必要性が出てきました。家庭排水を下水処理場へ集め、まとめて処理してきれいな水にして川に戻すのです。しかし、下水道整備には長い年月と莫大(ばくだい)なお金がかかります。下水道普及率100%達成まで、私たちは少しでも川に流れ込む汚れを減らす努力をしなくてはなりません。
しかし、下水道に接続すれば何を流してもいいというわけではありません。最新鋭の設備を誇る下水処理場ですが、汚れた水をきれいするのに、微生物の力を借りています。微生物が水の中の汚れをえさとして食べるため、水がきれいになるのです。微生物は生き物ですから、食べられる量以上の汚れた水が流れてくると、元気がなくなったり、死んでしまったりします。また、微生物はガソリンや薬品などはきれいにできません。ですから、下水道が整備されている家庭でも、排水を下水道に流すことはリサイクルのスタートと考えて、微生物に対する優しい気持ちを持ち、油類や必要以上に汚れた排水を流すことはやめましょう。
汚い物が目の前から消えて、自分の周りさえきれいになればそれでよいという考え方は、いつか自分自身の首を締める結果となります。そうならないためにも、一人一人ができることから、始める努力が大切です。
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( 写真説明 ) 家庭排水の汚れを食べる微生物
水を大切にするなら、下水道
下水道は、川や海を守るためにあるというのをご存知ですか。家庭から出た汚れた水すべてを川に流さず、地下を通る下水道管を通じて集め、きれいにしてから川に返しますので、環境保全のために画期的なものなのです。
しかし、せっかく下水道の管が整備されても、家庭から出る台所やおふろ、トイレ、洗面所などの汚水を下水道へ流すための排水設備工事を、みなさんに行ってもらわなくては意味がありません。
富士市では平成9年度末で人口の57%の人が下水道を利用できるようになりました。しかし、このうち5人に1人が下水道を使わず、汚れた家庭排水を川に垂れ流しにしているのです。
また、「単独浄化槽を使っていれば、トイレは水洗ですし、下水道に接続しなくてもなんの不自由もない」という声がよく聞かれます。ですが、トイレ以外の家庭排水はそのまま川に流れ込みますし、いくら排水の汚れに気をつけたといっても、川は汚れてしまいます。ですから、下水道が利用できるようになったらすぐに排水設備工事を行い、下水道を使ってください。
富士市では引き続き、鷹岡・広見・石坂・三ツ沢地区を含め、順々と整備を進めていきます。排水設備工事は自己負担となりますが、みなさんの金銭的負担を少しでも少なくするために、工事費を無利子で融資あっせんしています。富士市は、良質で豊富な水に恵まれています。この優れた環境を守り、次世代を担う子供たちのためにも、下水道への接続をお願いします。
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( 写真説明 ) 家庭排水を処理する東部浄化センター(左側)と西部浄化センター
●問い合わせ 下水道部管理課 内線2511
水を汚さないために家庭でちょっとした工夫
家庭排水の汚れは、意外と簡単な工夫で減らすことができます。最初は面倒でも、習慣づけてしまえば苦になりません。いきなり、全部を実践しなくてもいいのです。「これならできそう」と思ったものを、一つでもいいから始めてみませんか。
●台所での工夫
・調理くずなどを出さない
▼食べ残して捨てることのないように人数分だけをつくる
▼三角コーナーには水切り袋、排水溝口には網をつけて、野菜くずなどが流れないようにする
▼野菜は新聞紙の上で皮をむき、そのままごみ箱へ捨てると、流す心配がない
▼三角コーナーなどで回収された野菜くずなどは、小まめに捨てる(水にぬれて小さなくずが流れ出す可能性があります)
▼野菜くずを集めて、ボカシをまぜて肥料にする
▼米のとぎ汁は植木や庭にまく(とぎ汁には赤潮などの原因となるリンが多く含まれています)
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・使い終わった油を適正処理
▼食用油は調理で使い切る努力をする
▼てんぷら油はこして、繰り返し使用する(こした油を使うときは、3分の1ほど新しい油を加えるときれいに揚がります)
▼残ってしまった油は新聞紙などにしみ込ませて捨てるか、廃油石けんとして再利用をするなどして、決して流さない
・洗剤を多量に使わない
▼食後の皿などに残ったソースやマヨネーズ、ドレッシングなどは新聞紙などの再生紙でふき取ってから洗う
▼調理器具についた油はふき取る
▼天然の植物性油脂を原料とした洗剤や廃油石けんなどで洗う
▼カルキのしみは酢で洗ったり、なべや流しの汚れはレモンの皮の内側でこすたっりする
▼アクリル毛糸で編んだたわしで洗う(アクリル毛糸の繊維に洗浄効果があり、洗剤を使わなくても食器などの汚れが落ちます)
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( 写真説明 ) 新聞紙などを適当な大きさに切り、穴を開けて冷蔵庫などにぶら下げておくと便利です
●洗濯での工夫
▼洗濯機に合った量の洗濯物を入れ、まとめ洗いをする
▼粉石けんなど環境に優しい洗剤を使う
▼おふろの残り湯を使う(粉石けんがよく溶け、洗濯の効率がよいです)
▼洗剤の量は表示されている量を守る
▼洗濯の前に、衣服についた大きなごみは取る
▼水に浮いたごみは小まめに取り、一緒に流さない
メモ
25キログラムの洗濯物から泥や汗、洗剤など約1キログラムの汚れが出ます。これらは、水に溶け、一緒に流されています
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( 写真説明 ) 洗剤は計量スプーンなどできっちり計ることが大切です
●おふろでの工夫
▼排水溝などが汚れた場合、汚れやごみを溶かすタイプの洗剤を使わない(らせん状の針金でこするだけで十分汚れが落ちます)
▼シャンプーやリンス、ボディシャンプーなどは、環境に配慮したものを適量使用する
▼ふろおけなどを洗う洗剤も種類と量に気をつける
●トイレでの工夫
▼ティッシュペーパーや紙おむつ、生理用品などを流さない
▼掃除を小まめにする(ふだんからきれいにしておけば、強力な洗剤を使わなくても落ちます)
メモ
家庭排水の中には、何万種類という化学物質が含まれ、処理されないまま川や海に流れ込んでいるものもあります。これは、洗剤が原因の場合が多いのです。
家庭で使われる洗剤を適切な量を守って使えば、1年間で1人当たり約5キログラムの洗剤を減らすことができると言われています。
消費者団体「あけぼの生活学校」代表 高井幸子さん(横割3)
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あけぼの生活学校は身近な暮らしの中で誰にでもできる小さな実践を一つ一つ積み重ね、暮らしの安全を求めていく活動をしています。その活動の一環として、廃油石けんをつくっています。石けんづくりを通して、家庭から何げなく流してしまっている排水や油が川や海を汚していることをアピールできたらと思います。
廃油石けんは自然界での分解が早く、環境に負担をかけません。また、一般に使われている合成洗剤と比べ汚れが落ちにくいこともありません。油汚れが激しい台所の換気扇や食器、靴下など広範囲にわたって使用できます。洗えないものは人間の体だけです(笑)。
環境問題に興味はあるけれど石けんをつくる時間がない人には、保健女性センターの2階で販売していますので、ぜひお試しください。
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( 写真説明 ) あけぼの生活学校の皆さん
廃油石けんのつくり方について詳しくは、高井方電話61-3685へ
主婦 池田春美さん(中里1)
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ふだんから水を汚さないように気をつけていることと言えば、なるべく洗剤を使わないように工夫していることです。食器についた油類は水で湿らせた新聞紙を使ってふいたり、まな板の汚れは酢と塩で落としたりしています。たとえ洗剤を使ったとしても、汚れたものはすぐに洗うように心がけるだけで、洗剤の量は大分減りますね。
また、三角コーナーにたまった野菜くずは、ポカシをまぜて肥料にしているのですが、野菜くずが発酵するときに出る水は排水管の汚れ落としにとても効果があります。台所やおふろ、トイレの排水管の汚れもびっくりするほどよく落ちます。もし、ポカシで肥料をつくっている人は一度試してみてください。
身近なものに ちょっと工夫を加えるだけで、環境は守れると思いますよ。
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( 写真説明 ) ボカシの容器の底にたまった水
「私一人が気をつけたってしょうがないじゃない」なんて言わないでください。たとえ少しでも、みんなで実行すれば大きな効果を生みます。きれいな水にまた会えるよう願いを込めて、水のリサイクルに取り組みましょう。