大淵小僧
大淵の丸火自然公園の東側に、小さなほこらがひっそりと建っています。そこには、「大淵小僧」と呼ばれる子供が祭られています。今回は、この「大淵小僧」の悲しいお話を紹介します。
昔、大淵新田におばあさんと男の子が暮らしていました。男の子は小さいときに両親と死に別れ、おばあさんに育てられました。物心がつくとお母さんやお父さんが恋しく、ほかの家の子供たちをとてもうらやましく思っていました。そのうえ、近所の子供からは「親なしっ子」といじめられ、だんだん心がすさんでいきました。そして畑を荒し回ったり、子供に石を投げたりして、悪いことをするようになり、「大淵小僧」と呼ばれるようになりました。小僧は人々に嫌われれば嫌われるほど、物を盗んだり、人をだましたりと、さらに悪いことをするようになりました。
困った村人はおばあさんに注意するように言いましたが、おばあさんも村人の言うことを聞こうとしません。村人は小僧を捕まえて遠くへ置き去りにしましたが、すぐに戻ってきてますます悪いことをするようになりました。とうとう村人の中に小僧を殺してしまえと言う者が出て、村中が殺気立ち、名主の反対を押し切って小僧を殺してしまいました。
それから、小僧を殴った人が次々と急病で死に、村じゅうに原因不明の病気がはやりました。だれからともなく「これは小僧のたたりだ」と言うようになりました。村人は「ひどいことをした」と悔やみ、子供の霊を神として祭りました。すると、村人の病気はたちまち治ったということです。
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( 写真説明 ) 「大淵小僧」を祭るほこら
「大淵小僧」を祭る 石川昭一さん (大淵3)
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「大淵小僧」の話は本当にあったこととして子供のころから聞いています。また、一緒に暮らしていたのは、母親だったとも言われています。
「大淵小僧」は地の神様として、大淵3丁目に祭られていました。昭和45年に地元の人で祭ろうと当時祭っていた人から払い受け、それ以後は大淵3丁目4組で祭っています。毎年9月28日は縁日で、3年ほど前から「大淵小僧」の家があったという大淵2丁目の人たちも参加してくれています。このようないわれのある「大淵小僧」のほこらですから、人々が仲よく穏やかに暮らせるように、これからも大切に祭って行こうと思っています。