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【広報ふじ平成9年】富士の民話あれこれ

大渕八王子の井戸神様
 大渕の八王子1丁目に井戸神様と呼ばれる大きな石の碑と19個の小さな石の碑があります。
 これは、水がなくて困った大渕地区の昔の人が井戸を掘り、水が出た19の井戸の石を、水に感謝する意味で祭ったものです。
 今回は、井戸神様のお話です。

 昔、大渕は水がなくて水なし村と呼ばれていました。雨が降ると、雨水をタンクや水がめにためて飲み水にしたり、洗濯やおふろに使ったりしました。
 それでも水が足りないので、小さい子供たちも遠くの沢まで水くみに行きました。特に冬になると雨の降らない日が何日も続き、野菜はしおれ、食べ物も少なくなってしまうほどでした。
 そこで、みんなで深い井戸を掘ることにしましたが、苦労して掘っても水はほんの少ししか出ませんでした。
 しかし、あきらめずに何年もかかってあちこちに井戸を掘り、水の出る井戸を19もつくりました。村の人たちは「おいしい水をありがとう」と大喜びをしました。そして、井戸を掘ったときに出てきたたくさんの石の中から、形のよい石を1個ずつ選び、19個の石を水の神様としてみんなで祭りました。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 市立大渕幼稚園では、毎年プール開きの日に井戸神様にお参りします


井戸神様の隣に住む 稲垣愛子さん(大渕)
- 写真あり -
 私が聞いた話では、男の人たちが井戸をあちこちに掘ったけれど、水は全然出なくて、井戸掘りに反対する女の人たちと「次で水が出てこなかったらもうあきらめる」という約束をして掘ったら、水が出たということです。
 子供のころは年に1回、3月20日に井戸祭りが行われていました。水への感謝の気持ちを込めて、井戸の底にたまった砂の掃除をしたんです。その日はお赤飯やお菓子が食べられて、とっても楽しみでした。ふだんは井戸の近くで遊ばないように言われていました。井戸は大切で清潔にしておかなくてはならない場所だったからでしょう。
 水道が引かれてから、井戸祭りは廃(すた)れてしまいました。時代の流れなのかもしれませんが、寂しいですね。
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