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【広報ふじ平成9年】富士の民話あれこれ

猿番道 
 大渕中学校の北側から大渕2丁目に通じる細い山道があり、地元の人は「猿番道(さるばんどう)」と呼んでいます。今ではすっかり整備されたこの道のわきに、大きな石があります。今回は、この石に座って道の番をしていたという大猿のお話です。

 昔、大渕本村や中野村から大渕新田へ通じる道は、たった1本しかありませんでした。その細い山道には、林の枝葉が覆いかぶさり、昼間でも薄暗いほどでした。
 この林の中に、いたずら好きの大きな猿が1匹すんでいました。この猿は、どこで覚えたのか火打ち石で火をおこすことを知っていました。
 ある日、猿は道の中ほどにあるケヤキの大木に登り、人が通るのを待っていました。しばらくすると、一人の女の人が荷物を背負って、木の下を通ったので、猿は枝を折って火をつけ、女の人の真上から落としました。頭上から火が降ってきたので女の人はびっくり仰天。悲鳴を上げて逃げていきました。
 猿は、そのおもしろさに味をしめ、通行人を毎日驚かすようになりました。ところが、その話が広まり、火を落として通行人を驚かしていたのは、猿のしわざだとわかってしまいました。村人たちは、大勢で猿を追い回し、とうとう生け捕りにしてしまいました。
 人々が、「こんないたずら猿は殺してしまおう」と言うのを聞いた猿は、両手で拝みながら「これからは決してしません」と、涙を流して謝りました。そして、村人たちは、その言葉を信じ、猿を放してあげました。
 それから間もなく、この猿は、ケヤキの根元の大きな石に座って道の番をするようになりました。そのおかげで、人々は薄暗い道も安心して通れるようになったということです。それからというもの、人々は、この山道を「猿番道」と呼ぶようになりました。
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「猿番道」を題材にアニメビデオを制作した

平井弘雄さん(大渕)
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 約10年前、公民館のビデオ講座に入門してから、私はビデオ撮影に熱中し、今まで多くの作品を制作してきました。  
 私が、「猿番道」の話を制作しようと考えたのは、数年前に広報ふじでその話を読んだのがきっかけ。地元のおもしろい民話だと思ったので、アニメ手法のビデオ制作に初挑戦してみました。切り絵を380枚使い、すべて独自で工夫しながら撮影を行いました。約7分間の作品ですが、構想から完成まで2年以上かかりましたよ。
 大渕地区には、さまざまな民話(題材)があるので、次は影絵を使った映像に挑戦しようか、と思っています。
*平井さん制作の「猿番道」は、広報広聴課で無料貸し出ししています。
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