西仲町の子育て稲荷
中央町3丁目(西仲町)の大運寺(だいうんじ)に子育て稲荷(いなり)があります。
病気の子供を持った親が、このお稲荷さんへお参りするとたちまち病気が治ると伝えられています。
今回は、子育て稲荷のお話を紹介します。
昔、大運寺のお坊さんのまくら元へ毎晩のようにあらわれる1匹のキツネがいました。そして、キツネは「和尚様起きてください。私をお稲荷さんに祭ってください」と言います。そこで、和尚さんは、どこから、どういうわけで来たのか聞きました。「私は、京都の伏見稲荷の使いです。『東国に病がはやり、子供が育たなくて困っているところがあるので、お前はそこへ行って子供を守ってやりなさい』と言われてやってきました」と答えました。和尚さんは、キツネは人間をだますのが上手なので、伏見稲荷の使いだという証拠があるのか尋ねると、キツネは金のはしを見せました。
早速伏見稲荷へ問い合わせてみると、確かに金のはしが一ぜんなくなっているということでした。
そこで、和尚さんは、境内へほこらをつくり、キツネを子育て稲荷大明神として祭りました。その後、吉原では、はやり病で子供が死ななくなったそうです。
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( 写真説明 ) キツネが伏見稲荷からもらってきたという金のはしと、その事実が記されている掛け軸が、今でも大運寺にあります。
西仲町町内会長 中田 廣(ひろむ)さん
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大正から昭和の初めころまでは、由比や蒲原の方からも、我が子の無病息災を祈願するため、たくさんの人がお参りに来て、にぎやかだったようですね。また、10年ほど前までは、毎年二の午(うま)の日にのぼりが立てられて、お祭りが盛大に行われていました。
現在では、お祭りもなくなりひっそりとしていますが、今でも、夜泣きに効くといって、なぜか人目につかないよう、朝方か夜に子供を連れてお参りに来る人もいます。
吉原地区で行っている史跡めぐりで、このお稲荷さんをコースの中に入れるなど、吉原地区の大切な史跡として後世に伝えていきたいと思っています。