緑あふれる私たちのまち、富士市。このまちが、現在抱えている問題の一つに「ごみ」があります。
ごみといえば、汚い、臭いなどの嫌われもののイメージがつきもの。しかし、そのごみを生み出しているのは、私たち自身なのです。
暮らしが豊かになればなるほど増大するごみ。人々のライフスタイルが多様化している今だからこそ、一度立ち止まって自分の足元を見つめ直す時期に差しかかっているのではないでしょうか。
あなたの足元には、それまで気づかなかった大きなごみが落ちていませんか。
そして、あなたはそのごみを一体どうしますか。
ごみを拾う
毎朝8時ごろ、新富士駅と東名富士インターを結ぶ富士見大通りを通ると、ロゼシアターの西側付近で道路を清掃するグループを見かけます。この人たちは、富士見大通り沿いに事業所を構える一企業の社員の皆さん。社長みずからが先頭に立ち、街の美化に取り組んでいます。
「事業所前の道路清掃は約10年前から続けています。知り合いの社長さんの影響を受けて始めたことなんですが、ごみのないきれいな道は気持ちいいですよね。しかし、毎朝清掃しているのに、必ずビニール袋いっぱいのごみが集まるのが実状です。たばこの吸い殻と空き缶がごみの大部分を占め、私たちの集計によると、吸い殻が年間約10万本(1日当たり約270本)、空き缶は1日約7缶という結果が出ています。信号と信号の間の約130メートルの上下線だけなんですが…」と社長の高木さんは苦笑します。
また、営業部長は「毎朝同じ場所に同じ種類のたばこの吸い殻が投げ捨てられています。自宅を出発して車内でたばこに火をつけ、ちょうど吸い終わるのが多分うちの会社の前なんでしょうね。でも、いつもきれいにしておけば、きっとそこにはごみを捨てないだろうと信じて清掃作業を続けているんですが…。残念ながら毎年のごみの量は一向に減っていません」と嘆きます。
しかし、女子社員の一人は「朝の通勤時間で多くの車が走っていますから、道路を清掃していて怖い思いをしたこともあります。だけど、近所の人や通行中の車から『おはよう』『御苦労さま』などと声をかけてもらうと、とてもうれしいですね」と話してくれました。
この事業所の前には、1年中多くの鉢植えの花が咲いています。毎日の水やりなど多少手間はかかっても、確固たる信念のもと、美化活動を継続しているのです。この企業だけでなく、公共の場の清掃や美化を善意で行っている人たちは、市内にもたくさんいます。しかし、一方で平気でごみをポイ捨てしている人もいます。みんなが捨てているのなら自分一人ぐらい構わないだろう、という群集心理。とても怖いことだとは思いませんか。
あなたは、ごみを拾う側の人間ですか。それとも捨てる側?
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( 写真説明 ) 「毎朝、御苦労さまです」 近所の人も高木さんたちへ気軽に声をかけてくれます。地域に根差した活動を通して、企業と市民との交流が生まれます。
( 写真説明 ) 毎朝清掃していても、ビニール袋いっぱいにごみが…。
ごみを持ち帰る
増川新町にお住まいの増田美津代さんの家で飼っている愛犬の名はロッキー。生後8か月のゴールデン・レトリーバーです。生後8か月とはいえかなりの大きさ。美津代さんが散歩に連れていっても、最近では引きずられることもしばしばだとか。
ロッキーは毎朝5時前になると「散歩へ連れていって」と鳴いてせがみます。朝の散歩は夫の隆さんの役目。出勤前の忙しい時間帯ですが、愛犬の健康維持とストレス解消のためには、散歩はとても重要です。
午後の散歩は3時ごろ。美津代さんとロッキーは、約1キロメートルほどの距離を散歩します。散歩に出かけると必ずふんをするロッキー。もちろん、ふんの始末をするためのビニール袋は忘れません。
「毎日散歩していると、ほかの飼い犬もいっぱい見ます。けれど、中には犬のふんをそのままほうりっ放しの飼い主もいますね。犬のふんって人の迷惑になるから、すべての飼い主が片づけてくれればいいんですが…」と美津代さん。
自分の愛犬のふんなら、たとえ汚くても責任を持ってほしいもの。ふんの始末は、飼い主の最低限のマナーです。
そして、公園や海、川などへ出かけたときも同じことが言えるのではないでしょうか。持ってきた食べ物などのごみは持ち帰る。余暇を楽しむ人たちのマナーです。
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ごみを減らす
富士市のごみの量は、年々増加の一途をたどっています。平成7年度に環境クリーンセンターへ集められたごみは約9万2,000トン。1日当たり252トンで、市民1人当たりに換算すると、1日1人約1キログラムのごみを出したことになります。この統計から、富士市のごみはここ10年間で1.4倍もふえたことがわかります。
平成7年度のごみ総量の93.3%は燃えるごみ。しかも、環境クリーンセンターのごみ処理能力は無限ではありません。このままごみがふえ続けると、いつかはパンクしてしまいます。
このような現状を踏まえ、広見コミュニティ推進会のまちづくり推進部では、平成5年から家庭生ごみの減量化推進事業に取り組んでいます。取り組みの当初から推進部長として活動に携わっていた岩崎正明さんは次のように話してくれました。
「平成4年、ある新聞で『生ごみの減量にEMボカシが効果的』という記事を読みました。それをきっかけに富士市のごみについて興味を持ち始めたのですが、まちづくり推進部のメンバーと一緒に本格的に調べていくうち、このままごみがふえ続けたら大変なことになる、と問題意識が芽生えました。そこで、地域を挙げて家庭生ごみの減量化に取り組むことになったのです」。
EMボカシとは、EM(乳酸菌や酵母菌などの微生物群で複合した培養液)をもみ殻や米ぬかなどとまぜてつくった発酵堆肥(たいひ)材のことを言います。岩崎さんたちが取り組んだ「家庭生ごみの減量化」とは、EMボカシを使って各家庭単位で生ごみを堆肥に変えてしまおうというものでした。
まずは、数人のメンバーでボカシを使った堆肥化を実験。その成功をもとに広見地区の各町内会と協力して「生ごみのリサイクル集会」や「実践交流会」などの開催、文化祭でのPRなど、さまざまな推進活動を展開していきました。
平成6年度に実施した住民アンケートの結果、全体の7割が活動の継続を要望。堆肥化の実践者からは「ごみを出すときの重量が軽くなった」、「年末年始の回収がないときも苦にならなくなった」などの声が寄せられました。
岩崎さんは「今でも8〜900世帯が生ごみの堆肥化を実践しており、私たちの活動は定着したと言えると思います。しかし、全市的なごみ減量化に向けてはまだまだ。『ごみを出さない』『ごみとなるものは買わない』など、ごみを減らすための意識改革や自助努力が市民一人一人に求められているのでは…。そして、一人一人の活動の蓄積が社会全体の動きになるのだと思います。すべて行政にやってもらおうという依存体質からはそろそろ脱しないといけませんね」と話してくれました。
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( 写真説明 ) 「生ごみ減量化推進集会」でEMボカシを使った生ごみの堆肥(たいひ)化について説明する岩崎さん
( 写真説明 ) しっかり水切りした生ごみを密閉容器に入れ、EMボカシを加えます。あとは容器がいっぱいになるまで繰り返し、満杯になったら密閉して発酵させるだけ。
( 写真説明 ) プランターに土を3分の1、その上に発酵済みの生ごみ堆肥を3分の1入れます。さらに土を3分の1かぶせ、1週間以上たったら、種や苗などを植えます。
EMボカシによる生ごみの堆肥化についての問い合わせは、岩崎正明方(電話21-4600)または環境衛生課へ
ごみを生かす
宇東川西町にある小規模授産施設「市民ふれあいバンク」は、昭和58年に開所。その1年前に市内の福祉団体などから、リサイクルと福祉をドッキングしたリサイクルバンク設立の要望が出されたことが、開設のきっかけでした。
リサイクル専門の小規模授産施設は県内唯一。知的ハンディや肢体不自由などのハンディを持つ人たちが、指導員の温かな励ましや市民ボランティアの協力のもと、社会参加を目指して作業を行っています。作業内容は、市民の皆さんから無償提供していただく使用済みの自転車や家具、故障していない家電製品などの再生処理が中心。全員でさびた自転車や汚れた家電製品を熱心に磨き上げます。その真剣なまなざしの中にも、みんなの表情は明るく、作業場は活気に満ちています。
市民ふれあいバンクでは、再生処理を施した製品のほか、無償提供してもらった日用雑貨や衣類なども展示販売しています。買い求めに来る客は、周辺地域の人や外国人が多いのですが、中には提供品を持って市外から訪れる人もいるそうです。そのほか、一般家庭や飲食店からもらった使用済み食用油を原料にした廃油石けんの製造・販売も行っており、最近の人気商品となっています。
また、リサイクル可能な不用品の回収も行っており、第1・3火曜日が富士・鷹岡地区、第2・4火曜日が吉原地区の回収日となっています。損傷のひどくない物であれば、電話連絡で、自宅まで指導員と通所生が回収に伺います。必要のなくなった大型家具や家電製品でも、まだまだ使える物もあるのではないでしょうか。電話1本で有意義なリサイクルへの道が開かれます。
捨てればごみ、けれど、そのごみもリサイクルによって立派な品物に生まれ変わります。そして、バザーやフリーマーケットなどを上手に活用することも、不用品をごみにしてしまうことなく「生かす」方法の一つでもあるのです。
あなたは、まだ十分使える物を簡単にごみにしていませんか。
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( 写真説明 ) 廃油石けんは油汚れ、タイル・ステンレス磨き、運動靴の洗濯などに適しています。
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( 図表説明 ) 市民ふれあいバンク 富士市宇東川西町8-39 電話51-3080
ごみを集める
市では、ごみの分別収集の徹底と減量化を図るため、ことしの4月1日から「透明ごみ袋」の使用と、月1回の「古紙回収」を実施します。
今までの収集方法では、ごみの中身が確認できなかっため、本来は「燃えるごみ」として出されたごみの中に瓶・缶、埋立ごみなどが混入していることがありました。その結果、収集作業中の事故を招いたり、環境クリーンセンターでの安定したごみ焼却を妨げたりする原因となっていました。
また、限られた資源を有効活用するため、集団回収やちり紙交換などの自主回収に回らない古紙を市が月1回、回収することになりました。
ごみ問題は、私たちのまちが抱える大きな課題の一つです。これを解決するためには、市民の皆さんと一緒に考え、取り組んでいかなければなりません。ぜひ、御理解と御協力をお願いします。
お知らせ(透明ごみ袋による分別収集と古紙回収)
透明ごみ袋による分別収集
◆ことしの4月1日から透明ごみ袋を使用した分別収集がスタートします。
◆対象となるのは「燃えるごみ」と「埋立ごみ」です。
◆使用できるごみ袋は、市販の「透明ごみ袋」または、スーパーマーケットや小売店などの「レジ袋」です。
「透明ごみ袋」
・スーパーマーケットや小売店などで購入できます。
・透明ごみ袋の指定はありませんので、大きさや厚さなど用途に応じて用意してください。
「レジ袋」
・スーパーマーケットや小売店などで買い物をしたときに、持ち帰り用に使う袋をいいます。
・現在、少人数の世帯では、レジ袋だけで間に合っている場合もありますので、市民の皆さんの負担を考慮して、レジ袋は使用できることとしました。
・市では、スーパーマーケットや小売店に対して、レジ袋を透明なものにするよう要請しています。
*市販の黒や青のごみ袋は使えなくなりますので、注意してください。
*今まで使っていた段ボール箱、紙箱、紙袋、クラフト袋(肥料やお米を入れる茶色の紙袋)は使えませんので、古紙回収に出してください。
古紙回収(月1回)
◆4月1日から、今までPTAや子ども会の集団回収、ちり紙交換などに回らずに「燃えるごみ」として出されていた古紙を「資源物」として回収します。
環境クリーンセンターへの搬入について
◆事業所などからの持ち込みごみの受け入れは、2月1日から透明ごみ袋のみとなっています。
問い合わせ 環境衛生課 内線2051・2053
透明ごみ袋による分別収集と古紙回収についてのより詳しい内容は、広報ふじ2月20日号でお知らせします。