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【広報ふじ平成8年】富士の民話あれこれ

聖徳太子の富士登山

 聖徳太子が摂政のころ、よい馬を献上させた話は有名です。それらの多くの馬の中で、すばらしい馬が一頭いました。
 太子はとても喜び、大切に飼わせました。そして、その年の秋、調教ができたので試し乗りをすることにしてみました。太子がまたがり手綱を引き、むちを当てると、馬はすごい勢いで飛び出し、東の空へ飛んでいきました。アッ、と驚いた宮人たちは、顔色を変えて騒ぎ出しましたが、どうしようもありません。
 ところが三日目の朝、太子はひょっこり帰り「とても愉快だった。空へ飛び上がって雲の中をしばらく飛んだと思ったら、富士山の頂上だったよ。富士山を見物して帰ってきた」とおもしろそうに話しました。
 御殿へ上った太子は、富士山での出来事を詳しく話しました。
 「頂上におりると大きな岩穴があった。その穴を進むと金色に輝く岩が並び、金銀でつくられた美しい門があった。さらに進み、奥の院らしい境内へ入ると両眼をぎらぎらさせ、剣のような舌を出し、口から火を噴いている大蛇がとぐろを巻いていた。
 私は、これが山の神だと思い、ひざまずいて『人民のためにどのような政治をしたらよいか教えてもらいたい』とお願いした。すると大蛇は、大日如来の姿に変わり、『和をもって貴(とうと)しとなし、厚く三宝を敬い、礼をもって本とせよ』とおおせられた。私は必ず教えに従うことを約束して、再び馬に乗って帰ってきた」と一同に話したということです。
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