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【広報ふじ平成8年】富士の民話あれこれ

龍巌渕(りゅうがんぶち)のお膳(ぜん)
 鷹岡本町から滝戸へ行く途中、龍巌(りゅうがん)橋という橋を渡ります。その橋の下で岩肌をのぞかせる場所が「龍巌渕」。まさに龍が通り過ぎた後のような景観が広がります。
 今回は、龍巌渕のそばにお住まいの鈴木さんから、龍神にまつわるお話を伺いました。

 昔、滝戸村の名主の家で婚礼がありました。ところが、必要な100人前の膳椀(ぜんわん)がどうしてもそろいません。困った名主は、下男(げなん)に探してくるように言いました。そこで、下男は、毎日あたりの村々を探し回りましたが、どうしても見つかりません。下男は疲れ切って龍巌渕の岩の上にしゃがみ込み、「やれやれ、婚礼は明日だというのに膳椀が見つからない」と、途方に暮れていました。
 すると、「これこれ、そこで何をしておる」という声がしたのです。後ろを見ると、白いひげのおじいさんが立っていました。
 下男が「実は、明日の婚礼に使う百人前の膳椀がなくて困っています」と言うと、おじいさんは「そうか、それでは明日の朝早く、この岩の上に立って願い事を言え。わしは、この渕の龍神じゃ」と言ったかと思うと、スーッと消えてしまいました。
 下男は、次の朝、岩の上で「龍神様、どうか100人前の膳と椀を貸してください」と言いました。すると不思議なことに、水の上に100人前の膳と椀がプカプカと浮いてきたのです。
 そのおかげで無事に婚礼を済ますことができました。翌日、下男は膳椀を丁寧にふき、お礼を言って渕の中へ返しました。
 その後、その話を聞いた村人たちも借りるようになりました。しかし、ある年、隣村の名主の家で法事があり、龍神様から膳椀を借りたのですが、返すときになってみると、なぜか一つ足りません。そして、「一つぐらいわからないだろう」と、黙って渕の中へ返してしまいました。
 ところが、それからというもの、ほかの人がいくら願い事を言っても、願いがかなうことはなかったということです。
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鈴木幹枝さん(岩本)
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 龍巌渕は、「立願渕」とも書きます。きっと、龍神様が願い事をかなえてくれることから、そのように書くのかもしれませんね。
 今では、めっきり水量が減ってしまいましたが、その昔は、大雨が降ると、激しい濁流が橋のすぐ下の高さまで達するほどだったんですよ。そのいきおいといい、その轟音(ごうおん)といい、まさに龍が駆け抜けていくようでしたね。
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