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【広報ふじ平成8年】救急救命24時

急な発病やけがは、だれにでも起こり得ること。もし、それが命にかかわるような場合、迅速かつ的確に処置を行えるかどうかが救命率を上げる分かれ目となります。富士市の「救急救命」は、救急隊と医療機関とが連携し、市民の生命を守るために24時間体制で稼働しています。まさに時間との戦いでもある「救急救命」。あなたは、この戦士たちの姿から何を感じますか。
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( 写真説明 ) 最新鋭の救急救命資機材を搭載した「高規格救急自動車」で、いざ出動!
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救急救命は人の命を救うための時間との戦い

■一次救急医療と二次救急医療
 富士市の救急救命体制には、一次救急と二次救急があります。
 一次救急とは、病気・けがの状態が軽い人を搬送する場合のことで、通常、救急車はその地区に一番近い医療機関へ搬送します。平日の夜間や休日の場合、内科・小児科・外科は救急医療センターヘ搬送し、産婦人科は市内の開業医、眼科と耳鼻科は県東部の医療機関が、輪番で対応しています。
 また、二次救急は、一次救急では対応困難な心疾患や脳疾患、広範囲のやけどなどの重症の場合を指し、市立中央病院(救急外来)を初め、吉原病院、川村病院、芦川病院が二次救急の指定病院となっています。

■富士市の救急の特徴
 富士市における平成7年中の救急活動は、出動件数が4,459件、搬送件数が4,100件、搬送人員が4,345人となっており、毎年、前年よりわずかにふえています。(P2のグラフ参照)
 市内には、現在、中央消防署と吉永分署、西消防署と南分署に計四隊の救急隊が配置されており、平成7年中の一日平均出動件数は12.2件でした。
 富士市では、東名高速道路や国道などで交通事故が発生すると比較的大きな事故になることや、工場が多いことなどから、交通事故や労災事故による救急隊出動が多いことが、特徴として挙げられます。また、7、8時台、17時台などの通勤時間帯の交通事故による出動も多くなっています。

■救急隊は3人編成
 救急隊は通常、隊長と隊員、機関員(救急車の運転手)の3人で編成されています。現場では、3人が協力し、迅速な処置を行いますが、現場へ急行する際や、患者を医療機関へ搬送する際の機関員にかかる責務は重大です。市内のあらゆる道路状況を把握し、患者を揺らさないスムーズな運転技術が求められます。そのため、日ごろからの走行訓練と工事箇所などの道路状況調査が大切なのです。

■応急手当が救命率をアップ
 富士市において、救急車が現場へ到着するまでの平均所要時間は約6分半。救急隊は、より早く現場へ急行するために24時間体制で待機しています。しかし、救急車が到着するまでの間に、現場で応急手当を行うことで救命率は大幅に上昇します。
 そこで、市では、事業所や町内会、自主防災会、学校の教員などを対象に「普通救命講習」を実施しています。平成7年に受講した市民は約1,000人。一人一人が心肺蘇生(そせい)法や止血法などをマスターすることで、万が一の場合に備えることができるのです。

■感染防止対策
 現在、全国各地でO(オー)157が深刻な社会問題となっています。
 救急隊員や医師、看護婦など救急救命に携わるスタッフは、エイズやB型肝炎などの血液による感染症を初め、さまざまな感染から身を守るとともに、患者への感染防止には特に注意しています。
 救急隊は、感染防止に万全を期すため、患者を搬送後、救急車内や使用した資機材を消毒し、次の救急出動に備えます。

■救急隊と医療機関との連携が不可欠
 高度な救急救命が実践できるかどうかは、救急隊と医療機関との間に密接な連携があるかどうかにかかっています。
 しかし、救急出動件数が年々増加している状況にもかかわらず、富士市には、二次救急以上の重症に対応する三次救急体制が確立されておらず、救急医療機関にかかる負担が増大しています。
 設備や人員確保など、救急救命体制における、より一層の充実が望まれています。


富士市救急医療センター看護主任 市川孝子さん(富士見台)
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救急医療センターは一次救急専門の医療機関
 富士市救急医療センターは、昭和61年4月1日に開設された、一次救急専門の医療機関です。一次救急というのは、軽度のけがや急な発病に対応するもので、平日は午後7時から翌朝8時、土曜日は午後2時から翌朝8時、日曜日・祝日は午前9時から翌朝8時までが診療時間となっています。
 平日の夜間や休日に直接センターへ受診する人への処置はもちろん、救急車で搬送されてくるけが人や病人への対応も大きな任務の一つです。まず、事故や発病の場合、救急隊から患者の状態についての連絡が入ります。それには看護婦が対応し、症状に合った処置の準備を行います。そして、救急隊員によって患者が運び込まれるのを受け、患者に処置を行います。
救急医療に求められる迅速かつ正確な判断と処置
 救急医療に求められるものは、「迅速かつ正確な判断と処置」であると思います。身体に何らかのダメージを受けた場合、素早く処置を行うことによって、症状の回復度も上がります。そして、その一分一秒を争う状況下で、私たちは正確な判断をもって処置に当たらなければなりません。そのためには、数多くの経験を積んでいくことが大切なのだと思います。
 そこで、ことしから市立中央病院救急外来(二次救急)への看護婦派遣研修も始めました。そこへは重症患者が搬送されてくるので、その対応や処置など、派遣された看護婦にとって、とても貴重な体験になるのではないでしょうか。
素人判断は危険
 事故や発病の場合、現場に居合わせた人の対応が、その後の治療に大きな影響を及ぼします。当然、正しい知識を持って処置を行ってもらえればいいのですが、素人判断による誤った処置は、逆に治療を妨げる場合もあります。例えば、出血時は、出血部の圧迫が最適なのに中途半端な止血をしてきたり、切り傷に市販薬を塗ってきたり…。中にはやけどにみそを塗ってきた人もいましたよ。家庭内の備えは大切ですが、病院へ行くなら薬はつけない方がいいですね。
 また、救急医療センターは休日夜間診療所ではありません。しかし、残念ながら、気軽な気持ちで利用している人が年々ふえています。救急時に対応する医療センターとしての本来の機能が損なわれる場合がありますので、正しい利用をお願いします。


富士市中央消防署(救急救命士) 大村高之消防司令捕
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救急救命士が医師の指示のもとに行う救急救命処置
 現在、富士市には3人の救急救命士がいます。3人とも富士市中央消防署に勤務しており、24時間体制で市民の急な発病やけがなどに対応しています。
 救急救命士とは、厚生大臣の免許を受け、医師の指示のもとに救急救命処置を行う人のことを言います。通常の救急隊員との大きな違いは、医師の具体的な指示を受けて、重度傷病者のうち心肺機能停止状態の患者に「半自動除細動」「静脈路確保のための輸液」「指定器具による気道確保」の三つの特定行為を行えることにあります。
 まず、「半自動除細動」とは、心臓が無秩序に動いている状態(細動)の患者に電気ショックを与え、正常な心拍に戻すことです。
 また、人体がショック状態の場合、筋肉同様、静脈までも収縮してしまいます。「静脈路確保のための輸液」は、医療機関へ搬送した際に点滴針が入りにくくなるのを防ぐため、事前に点滴を行い、静脈路を確保することを指します。
 3番目の「指定器具による気道確保」とは、嘔吐(おうと)物が気道に入って肺炎などを引き起こさないよう、食道を閉鎖して気道だけを確保する特別な器具(ラリンゲアルマスク)を使用できるという意味です。
救命とは人命を救助すること失敗は許されない
 救急救命士になり、これらの救急救命処置を行うためには、長期間の研修を受け、厳しい国家試験をパスしなければなりません。私が試験に合格したのは平成5年11月。当時では県内5人目でした。年齢がちょうど40歳になったころだったので、医学用語を覚えるのには一苦労でしたよ。(笑)
 私が消防署へ入った当初はレスキュー隊員。そして、救急救命士になる前も、長年にわたり救急隊員として勤務してきたので、さまざまなケースに立ち会ってきました。例えば、食物をのどに詰まらせたお年寄りや脳疾患の患者に対して迅速な処置を行った結果、一命を取りとめることができ、本人から「おかげで助かりました」と感謝の言葉をもらったときなどは、とてもうれしかったですね。
 救急は一般的な応急処置、救命とは人命を救助することです。医師や看護婦より先に患者を診て、的確な判断で処置を行わなければならず、決して失敗は許されない仕事です。ですから、救急救命士として、自分と隊員たちとの協力で人の命を救うことができるのは、大きなやりがいになっています。

富士市の救急救命体制24時を追う!

現在、市内の消防署には、50人の救急隊員が配属され、日夜、交代制で市民のために働いています。その救急隊員たちの24時間を追跡取材しました。
 
 8時30分
 8時30分、前日から勤務していた隊員との交代時間です。
 前日の業務内容の引き継ぎを行った後、消防庁舎の前で車両点検と、高濃度酸素マスクや人工呼吸器、心電計などの救急救命資機材の点検を行います。
 いつ出動がかかってもいいように、点検と準備には余念がありません。

 9時50分
 9時50分、鈴川防波堤付近にて、男性が倒れているとの通報あり。救急指令(出動命令)が発せられました。
 救急隊員は、三人一組となって現場へ急行します。その男性は、勤務中に突然、吐き気と目まいに襲われ、家族に連絡。救急依頼の通報は、駆けつけた家族によるものでした。
 隊員たちは、家族の車の中で、ぐったりとしている男性を救急車の中に搬入し、脈拍や呼吸、意識の程度などを素早くチェック。診断データに基づき、搬送先の医療機関を選定します。
 そして、搬送先は芦川病院と決定。救急車は、病院に向け現場を出発します。
 搬送途中、救急車は急ぎながらも患者を揺らさぬよう慎重に進みます。一般車両は路肩に寄り、救急車の進行を促しますが、中には、一瞬ドキッとするような運転をする車も…。
 
 10時20分、病院へ到着。静かに患者を運び入れ、医師に細かく状況を説明しました。

 13時
 12時から13時は出動の多い時間帯。隊員たちは早目の昼食をとり、午後からは救急救命資機材の取り扱い訓練を行いました。
 まず、救急車内で素早く心電図や脈拍などを測定し、そのデータが、救急医療機関にしっかり伝送されるかどうかを訓練します。
 次に、救急救命士である大村消防司令補と植田消防士長は、救急救命士が行える特定行為(5ページ参照)を訓練。
 いかなる場合でも失敗は許されません。救急救命士を目指す後輩たちに教えながらも、自分自身の訓練に臨む姿は真剣そのものです。
 なお、訓練中の14時15分に大渕で交通事故が発生との救急指令。自転車に乗っていて自動車にはねられ、頭を打った女性を芦川病院へ搬送しました。

 21時42分
 21時42分、誤ってやかんの熱湯を足にかけてしまったという男性からの通報。
 台風が接近しつつある風雨の中、現場へ急行し、その男性を収容。左足の甲全体に火ぶくれができるほどのやけどでした。早速診断し、救急医療センターへ搬送することに…。
 救急医療センターへ患者を運び入れ、医師に状況を説明します。救急隊と医療機関との連携はとても大切。適切な応急処置が、その後の治療に結びついていくからなのです。

 22時39分
 22時39分、若い女性が急性アルコール中毒のため倒れたとの通報を受け、出動。救急医療センターへ搬送しました。

結局、この日は、夜中から朝までの出動はなく、24時間の出動件数は4件でした。救急隊員の皆さん、御苦労さまでした。
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 救急隊の出動、救急医療機関への搬送などが年々ふえています。そのため、現場における病人やけが人への応急処置、または医療機関へ搬送する途中の早急な医療処置の強化が重要な課題となってきました。そのような状況のもと、平成3年8月に「救急救命士法」が制定されました。
 それ以降、富士市にも救急救命士が誕生し、救急隊と医療機関との連携において、中心的な役割を担ってきました。
 もちろん、それ以外にも多くのスタッフが富士市の救急救命体制に携わっています。
 万が一の場合、私たちの命を救う「救急救命」。その活躍にかける期待は、これからもっと大きくなっていくことでしょう。
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広報広聴課 (市庁舎8階北側)
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