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【広報ふじ平成8年】富士の民話 あれこれ

清勇の川天狗
 赤渕川と沼川の合流点付近を“清勇(せいゆう)”と言います。
 昔、このあたりは、うっそうとしたところだったので、きつねやかっぱ、天狗(てんぐ)などに化かされたという話が、たくさん残っています。
 今回は、清勇にあらわれた川天狗のお話を紹介します。

 ある夏の、今にも雨が落ちてきそうな暗い晩のことです。虎さんは、清勇まで夜釣りにやって来ました。
 「きょうは、よく釣れたな」といっぱいになったびくを下げて、虎さんが帰り支度をしていると、後ろから「おい、魚をくれ」という声がしました。振り返ってみると、すぐ後ろに恐ろしい顔の川天狗が立っていたのです。
 「うわあ」。びっくりした虎さんは、声にならない叫び声を上げ、びくを抱えて一目散に逃げ出しました。
 すると、向こうから、ほおかぶりをした隣の金さんが歩いてくるではありませんか。「どうした虎さん、そんなに息を切らして」「で、出たんだよ、川天狗が。それがなあ、物すごいんだ」「ほう、そいつはこんな顔だったかい」と言いながら、金さんはほおかぶりを取りました。何と、その顔は、あの恐ろしい川天狗の顔だったのです。虎さんは「ううーん」と気を失ってその場へ倒れてしまいました。
 虎さんの帰りが遅いので近所の人たちが捜しにやってくると、土手の上で気を失っている虎さんを見つけました。虎さんは、大事そうにびくを抱えていましたが、その中は空っぽだったということです。


佐藤錦之助(きんのすけ)さん(中央町)
- 写真あり -
 清勇は、うっそうとしていたけど、川沿いの土手が小高くなっているから、周りがよく見渡せるんだよ。毘沙門さんの祭りのときなんかは、だるまを買って歩いている人の姿を見ることもできたんだ。
 昔、このあたりは水がきれいだった。ふんどし一丁でよく水遊びしたものだよ。魚もたくさんとれたし、投網している人もいたっけ。でも、今では、当時の面影はすっかりなくなってしまったなあ…。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 清勇は赤渕川と沼川の合流点付近の地域
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