無償で子供を預かり30年 留守家庭児童会石川学園代表
石川文江(ふみえ)さん(天間・82歳)
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子供が小学校から帰っても、親が仕事などで留守の家庭。そのような家庭は、高度成長期以後、一気にふえました。働くお母さんの増加に伴い、かぎっ子という言葉も生まれたころのことです。
石川さんが「親が仕事から帰ってくるまでの間、学習指導をしたり、遊び相手や相談相手になったりして、明るく素直な子供に成長させてあげたい」と子供たちに自宅を開放したのは、高度成長期と同時期の30年前のことでした。
奈良時代の光明皇后が慈悲を持って施療院や孤児院を設けた話や、御殿場市のある病院の創始者が全財産を売って、らい病患者を救済した話に感銘を受け、石川さんは、いつか自分も人の役に立ちたいと思い続けていました。
「昭和41年、教育に情熱を注ぐ私を応援してくれていたしゅうとめが亡くなりました。そして、それをきっかけに、私は奉仕の仕事に生きようと決心したのです。
最初は、私設養老院をやろうと思いました。しかし、夫に『それよりも、長い間してきた教育の仕事を生かした方がいい』と言われ、ほかにも多くの人の助言を受けて、留守家庭の子供たちの面倒を見させていただくことにしたのです。
夫は全面的に協力してくれました。納屋を改造し、庭の樹木を植えかえ、ブランコや鉄棒も備えつけてくれました。学園を始めて6年後、夫は他界しましたが、多くの皆さんの協力があったから頑張ってこられたのだと思います」
600人余の児童が、石川学園を巣立っていきました。卒園生は今でも、近況を知らせに学園を訪れます。月謝や入園料は無料でも、石川さんから受けた愛情は値のつけられない貴重なものでした。
現在では、15人の子供たちが在園。「複雑な家庭環境の子もいます。命をかけてでもやめることはできませんよ」と石川さんは力強く語ってくれました。