あなたは、「育児や介護などは女性だけに任せておけばいい」なんて思っていませんか。
一方、最近では、今まで「男の職場」と呼ばれていた業界に進出して、頑張っている女性もふえています。
しょせん世の中は男と女だけ。互いに認め合い、助け合いながら伸びやかに生きていく。そんなすばらしい関係を持ちたいものです。
今回は、すてきなパートナーシップを目指して、さまざまな分野で活躍している皆さんを紹介します。
働くお母さんが好き!
右から渡辺知実(ともみ)ちゃん(7歳)、裕太(ゆうた)ちゃん(5歳)、正義(まさよし)さん(会社員)、拓弥(たくや)ちゃん(3歳)、明子(あきこ)さん(看護婦)、〈江尾〉
- 写真あり -
「結婚するまで、看護婦の勤務形態がこれほど不規則とは知りませんでした。妻が夜勤などの場合、私が子供たちの面倒を見ていますが、自分の時間や仕事を犠牲にしなければならない場合もあるし、さすがに気の長い私でもストレスがたまりますね」と正義さん。しかし、「女性が仕事を持つことには賛成です。女性も生き生きと働いているほうがいつまでも若くいられるのでは…」と理解を示します。
今の社会 仕事と言っても いろいろ。それなのに 「この仕事は男の仕事。あれは女の仕事」なんて 決めつけている人が まだまだ 多いんだよね。男と女が お互いを認め合い 助け合っていく社会。早く そんな社会にならないかな。
私たちの仕事に男女の区別はありません
高橋直輝(なおき)さん〔愛生(あいせい)保育園〕
- 写真あり -
市内でただ一人の保父さん
「保育は女性の仕事と思われがちなので、よく『なぜ、この仕事を選んだの?』と聞かれます。だけど、特別な理由はありません。ただ子供が好きなだけなんですよ」と笑顔を見せる高橋さんは、市内で唯一の保父さん。高校生のころから、養護施設でのボランティア活動などを通して子供たちと接してきました。「3年生になり、進路を決める時期になっても、漠然と大学へ進学しようなどとは思いませんでしたね。自分が本当にやりたい道へ進もうと考えました。そして選んだ結論が、子供たちを相手にする仕事でした」
ところが、保育園への就職活動は、どこも男性の受け入れ体制が整っていないということで、とても苦労したそうです。
「この保育園では“男だから”という特別扱いはありません。もちろん、力仕事を頼まれることはありますけど…。
子供と接する中で、女性特有の細やかさを時々うらやましく思います。一時期、子供に対する言葉遣いなどをまねしようともしましたが、やっぱり変なんですよね。最近では、無理せず自然体で“友達みたい”に接するようになりました。
保父は、自分の夢だった仕事です。今では、毎日が充実して楽しいです」
きょうも高橋さんは、子供たちと一緒に園庭を走り回っています。
中澤洋子さん〔大富(おおとみ)塗装工業(株)〕
- 写真あり -
色彩感覚を塗装の世界で生かす
中澤さんの家系は、塗装業を始めた祖父まで、十代にわたり男が生まれなかった女系家族。そして、祖父以後も女だけ。中澤さんは、誕生と同時に祖父から“跡取り”としての義務を背負わされたのです。
「当然、反発しましたよ。だって塗装業といえば、男ばっかりの汚れる仕事、というイメージですものね。
だから、小さいころから美術が好きだった私は、美術短大を卒業した後も家業を継がず、自分で絵画教室を開きました。
特に、私は色彩が好きでした。家にいろいろな塗料があって、いつも身の回りに“色”が満ちあふれていたからかも…」
そんな中澤さんが家業を継ぐこととなったきっかけは、祖父の死でした。寝ているような安らかな顔を見て、「反発せずに、もっと話をしておけばよかった」と後悔の念に駆られ、家業を手伝い始めたのです。しかし、最初は職人や現場、塗装材料など、わからないことばかりでした。
「私が現場へ行っても、女性というだけで職人さんたちは全く相手にしてくれませんでした。一人前として見られるまでに10年かかりましたよ。
でも、今思えば、この仕事は自分に向いている仕事かも…。塗装業は“汚い部分をきれいにする仕事”。これからも得意な色彩感覚を生かしていきたいですね」
今こそ 女性自身や 周囲の環境が変わるとき そして それを変えていくのも 私たち自身です
'96 女(ひと)と男(ひと)のフォーラム実行委員長 佐藤文子(ふみこ)さん(平垣)
- 写真あり -
佐藤さんは、日ごろどのような仕事をしているのですか?
私は、静岡県中部就業女性センターに相談員として勤めていて、これから働きたいという女性、あるいは既に働いている女性からの就業相談を受けています。
女性を取り巻く法律や制度の問題、進路の選択や適性、資格や生活上の身近な知識習得、職場での人間関係など、さまざまな内容の相談に応じていると、さながら社会の縮図の中心にいるような感じがします。応対に苦労することもありますが、毎日が勉強だと思って頑張っています。
相談員になったいきさつは?
私は12年前「静岡県家庭婦人海外派遣団」に参加しました。その報告書をまとめたり、県から依頼されて県内で活躍中の女性を取材したりしているうちに、県の職員の人から「相談員になってみませんか」と誘われまして…。
長年ガールスカウトのリ−ダー(指導者)を務め、カウンセリングの勉強をしたこともありましたし、会社員だったころの経験も何か役立つかなと思って引き受けました。
最初は、昭和62年に沼津市にある東部県行政センターの消費生活相談員になり、平成4年から静岡市にある県中部就業女性センターに勤めています。
相談員をしていて感じることは?
最近の傾向として、会社内のいじめやセクハラ、上司と合わない、などの人間関係に関する相談内容が多くなっています。これは、女性の就業環境や周囲からの支援がまだまだ未熟であるためではないでしょうか。
しかし、中には働いている女性の側に問題がある場合もあります。例えば、プロ意識の欠如からくるものです。仕事への責任を軽く考えていたり、報告や連絡、相談などをせずに自分だけで判断して、事態を悪化させてしまったり…。女性が「自立する」という意味の履き違えがなければいいのですが。
次に「女と男のフォーラム」とのかかわりについて教えてください
私が相談員になったのは9年前。それまで行政には、保守的なイメージしかありませんでしたが、福祉制度やイベント・講座など、さまざまな分野での施策があることを知り、もっと自分が住んでいるまちに関心を持とう、もっと富士市のことを知ろう、と思ったんです。
そして、まずは自分の仕事に関係するところからと思い、「女と男のフォーラム」に参加しました。
実行委員になったのは昨年からなので、委員長とはいえ何をすればいいのか…。皆さんに肋けられながらやっています。
最後に ことしの「女と男のフォーラム」のPRをお願いします。
ことしのフォーラムは、「変わるとき!変わらなくっちゃ!!」をテーマとした、演劇やトークを予定しています。特に演劇は、脚本を実行委員みずからがつくり、出演を市民劇団「不二芸(ふじげい)」にお願いしました。絶対すばらしいものになると思いますよ。
ことしのテーマにあるように、今こそ女性自身や周囲の環境が変わるときです。そして、それを変えていくのは、私たち自身なのです。
フォーラムの開催日は、7月6日。彦星と織姫が年に一度再会する七夕の前日です。ぜひ、多くの男女に来場していただきたいですね。
県内の女性に聞きました 働いている理由
- 図表あり -
( 写真説明 ) 平成5年度 県就業女性室 働く女性実態調査 個人調査編
今や「男は仕事、女は家庭」なんて時代ではありません。けれど、社会から女性に対する差別や偏見が完全になくなったとは、まだまだ言えないようです。
また、男性が育児や介護に専念しようとして得も、まだ、いくつかの障壁があるのではないでしょうか。
男女がすてきなパートナーシップを保つ社会。私たち自身が意識を変え、築き上げていきたいものです。