最近は犯罪が多様化し、一般市民が犯罪に巻き込まれることが、多くなっています。私たちは、「住民の安全確保」のあり方について、もう一度見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
今回は、私たちのまちの安全を日夜守ってくれている「交番」について紹介します。
世界に誇るKOBAN=交番
日本は、世界一治安がよいと言われています。その理由は、教育的水準の高さや国民性など、いろいろ考えられますが、やはり、交番・駐在所が果たす役割は無視できません。
現在、全国には約1万5,000か所の交番・駐在所が設置されていて、全警察官の40%に当たる約9万人がそこに勤務しています。このように地域社会に配置された警察官と住民との信頼関係によって、世界に誇れる治安のよさを維持しているのです。
地域住民と協力しながら犯罪を防止していく「交番」。このシステムは世界各国でも高く評価され、シンガポールやタイなど東南アジアのほか、アメリカ合衆国の一部でも採用され始めています。まさに「KOBAN」は、国際的な呼び名になっているのです。
住民の理解と協力が必要
富士市には約200人の警察官がいます。これは、約1,100人の市民に対して、一人の警察官が配置されていることになります。
しかし、最近の犯罪増加や犯罪の多様化などから、交番に対する住民ニーズも変化してきています。より一層のパトロール強化や交番に常駐する警察官の増員などが求められていますが、実際には警察官がふえない限り、簡単には対処できない問題のようです。
そこで必要となるのが、住民の理解と協力なのです。例えば「交番相談員」や「地域安全推進員」などが挙げられます。
交番相談員とは、市内に住む警察OBが平日の昼間、交番で道案内や落とし物の対応を行うもので、市内では、富士駅前交番と御幸町交番の2か所で活躍しています。
また、地域安全推進員は、警察と情報交換をしながら、住民自身の防犯活動を進めています。市内では、自転車の盗難防止や通学路の危険箇所の点検、防犯灯必要箇所の調査など、140人の推進員が活動しています。
富士市の犯罪の特徴
暴力団による犯罪の多さが、富士市の特徴と言えます。けん銃や麻薬・覚せい剤が、一般市民の手の届く距離まで近づいてきたのは、まさに暴力団のしわざなのです。
暴力団に対しては、き然とした態度で対応することが大切です。暴力団の要求に屈して資金を提供したり、問題の解決に暴力団を利用したりしてはいけません。
暴力団についての相談は、最寄りの交番でも応じています。住民の協力が、犯罪を未然に防ぎます。
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( 図表説明 ) 富士市の犯罪発生件数の推移
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( 写真説明 ) 英語にもなったKOBAN。犯罪の多発に悩むアメリカ合衆国では、交番制度を参考に、住民と一体となった警察活動を目指しています。日本でも、地域の“生活安全センター”として、より地域に密着し、住民に愛される交番を目指しています。
広東(かんとん)語が話せるおまわりさん
富士駅南交番
阿部祐士(ゆうじ)巡査
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中国語の一つとして、中国南部や香港などで日ごろ話されている広東語を、阿部さんがマスターしようと思ったのは、警察官になってからのことでした。
地域で生活する外国人がふえてきていることから、阿部さんは外国語を学ぶ必要性を感じていました。しかし、高校時代は英語が好きだった阿部さんが、さまざまな外国語の中から広東語を選んだ理由は、実は香港にあったのです。
イギリス領の香港は、1997年に中国に返還されます。香港映画が好きな阿部さんは、以前から「返還される前の香港へ行ってみたい」と思っていたのです。
警察官に対する研修制度は、とても充実しています。特に外国語は、最近、ニーズがふえていることから、さまざまな研修システムが用意されています。阿部さんは、東京や大阪の研修所で広東語を学んだ後、念願の香港で3か月間、実際の生活を通して広東語をマスターしてきました。
広東語を話せる警察官は、県内に3人。富士市以外でも広東語圏の外国人に関係する事件が発生したときは、捜査などに協力することもあります。
富士駅南交番の所轄管内には中小企業が多く、市内でも就労外国人の多い地区と言えます。交番で道を尋ねる中国人も含め、月に1、2回は広東語が役立っています。
また、巡回で所轄管内の家庭を訪問したとき、広東語を話す中国人が住んでいて、生活相談に乗り、感謝されたこともありました。交番では、さまざまな住民のニーズにこたえながら、住民生活の安全を守らなくてはならないのです。
高校時代、剣道部に在籍していた阿部さん。人一倍正義感の強い青年は、親しい先輩が警察官になったのを見て、その制服にあこがれるようになりました。
そして、阿部さんは高校卒業後、警察官に。実習中に学校の部室荒らしを現行犯で逮補したこともありました。
「交番の電話が鳴ると、ドキッとしますよ。
警察官の仕事は、肉体的にも精神的にも大変です。だけど、毎日が変化に富んでいて、とてもやりがいのある仕事だと思っています」と胸を張って話してくれました。