かけがえのない人の命と、責重な財産を奪う恐ろしい火災。
その火災から、私たちの安全な暮らしを守ってくれるのが、消防士と消防団員の皆さんです。
秋も深まり、これから火災が発生しやすい季節を迎えます。
この機会に「消防」の姿を通して、火災予防の大切さについて考えてみませんか。
火災による損害は減少
平成6年に市内で発生した火災は130件。過去10年間の出火件数の平均は、122.9件となっており、平成6年の出火件数は、この平均を上回っています。しかし、ほとんどが「ぼや」程度のもので、むしろ損害は減少しており、焼損棟数、り災世帯数、焼損面積、損害額など、いずれも過去10年間の平均を下回っています。その理由として、市民の皆さんからの「早期通報」が挙げられます。
被害を最小限に食いとめるためには、火災現場周辺の住民による初期消火が、とても重要です。しかし、一たん炎上した火災には、消防署や消防団の迅速な消火活動が、欠かせません。
富士市の消防
富士市には、消防本部と二つの消防署(中央、西)があります。
中央消防署には、臨港分署、吉永分署、富士見台分署、大渕分署、西消防署には、鷹岡分署と南分署が属しています。消防職員は合計248人。日夜、市民の安全を守るために働いています。
消防団員は812人
富士市の消防団は、一般市民による、26個分団で編成されています。消防団員は、10月1日現在で合計812人。平均年齢は39.3歳となっています。
以前は自営業の人が多かったのですが、最近では会社勤めの人とほとんど同じ割合になっています。
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( 写真説明 ) はしご車は、地上35メートル(約10階付近)での消火・救助が可能です。
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( 図表説明 ) 市内の月別火災状況(平成6年)
消防士はみんなのスーパーマン!
富士市中央消防署
時田正史(まさし)消防士長
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消防士になろうと思ったのは高校を卒業して1年後のことでした。
時田さんは高校卒業後、(財)富士市施設利用振興公社に勤務していましたが、当時の上司に勧められ、気軽な気持ちで消防士の採用試験を受けて合格。
何しろ高校生のころ野球部で活躍し、3年生のときにはレギュラーとして甲子園に春夏連続出場したほどのスポーツマン。消防士に必要な身体能力の高さに加えて、正義感が強く、心優しい性格が消防士に向いているのでしょう。
勤務は、隔日で24時間交代。朝8時30分から翌朝8時30分までが勤務時間です。
火災がない間、消防士は厳しい訓練で体を鍛え、消防車や消火器具、防火服などの点検をしながら、万が一の出勤に備えます。また、市内の建築物の消火設備の有無や、耐火構造などを調査することも重要な業務です。
「待機中は、みんなリラックスしています。しかし、火災が発生すると一転して署内が慌ただしくなります。何しろ一分一秒が、被害を大きくするか小さくするかの分かれ目ですから。
消火を終えた後の現場に立ち、ちょっとした火の不始末が大きな被害をもたらしたかと思うと、時々せつなくなることがあります。ましてや放火なんて絶対許せませんね」
時田さんは、ことしで消防士11年目の30歳。一男一女の二児のよき父親です。
日ごろは、消防士として厳しい業務に携わっていますが、勤務明けの休日には、子供たちと遊んだり、趣味の野球やパチンコに出かけたり…。気分転換しながら、英気を養っています。
妻の祐子さんは、「夫が家に帰ってくると子供たちはベッタリです。また、食事のメニューは子供中心なので、たまには夫の健康管理にも気を使ってほしいと言われます」とニッコリ。
高校卒業までは野球一筋だった時田さん。今では、愛する家族はもちろんのこと、市民の命と財産を守るため、「消防」に精力を注いでいます。
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( 写真説明 ) 休日は、家族そろってのんびりと…(中央公園)
ことしの出初式から
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( 写真説明 ) 毎年1月に行われる「出初式」では、消防士や消防団員の日ごろの訓練の成果が披露されます。
いち早く火災現場へ急行!
富士市消防団第5分団副分団長
山崎三之(みつゆき)さん (今泉1丁目)
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23年前、山崎さんは同じ町内に住む消防団員に勧められ、消防団に入団しました。
最初は、いくら消防団員といっても、一般市民が消防車に乗って火を消しに行くとは思っていなかった山崎さん。「一緒にやろうよ」と誘われて、気軽に消防団へ入団しました。
消防団員は、自分が所属する分団の担当地域、または周辺で火災が発生すると、仕事を中断して現場へ急行します。年間平均10回程度、出動することがあります。
「私が所属する第5分団は、今泉地区を担当しています。住宅が多く、密接しているので、一たび火災が発生すると大火災になる可能性があります。
また、吉原や原田、大渕など、隣接地域も多いので、火災シーズンはかなり忙しくなりますよ」
火災の多い12月下旬から2月末まで、消防団員は順番で詰所に泊まります。そして、「夜警」として消防車で町内を巡回し、火災予防を呼びかけます。
酒屋を営む山崎さんは、温和な性格と優しい笑顔が近所の人たちにも評判です。
しかし、火災が発生すると、さっそうとした消防団員に早変わり。いち早く現場へ向かい、消防士と協力して消火活動に当たります。
「今までで一番印象強い火災は、18年前の商店火災でした。商品のゴムが燃え、火の粉が雨のように降ってきたことを覚えています。
また、現場へ着いて、『家が燃えている。早く消してください』と家の人に助けを求められたときは、消防の責任の重さを痛感しました。
ことし、第5分団にも若手が入団しました。入団すれば、消防団活動のすばらしさを知ることができます。強いきずなで結ばれた多くの仲間ができます。これから、もっとたくさんの若い人に入団してもらいたいですね」
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( 写真説明 ) 山崎さんは、酒の配達や店での応対など、いつも忙しく飛び回っています。
災害に 備えて日頃(ひごろ)の 火の用心
富士市消防本部
大美賀 一行(おおみか かずゆき)予防課長
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冬は火災のシーズン
平成6年は、市内で130件の火災が発生しました。
そのうちの36.9%に当たる48件が、1月・2月と、12月の寒く乾燥した季節に発生しています。
冬の乾燥した時期は、ちょっとした不注意や火の不始末が大きな火災につながります。しかし、最近では暖房器具の安全性も高まってきているため、ストーブなどが原因の火災は、かなり減少してきました。特に平成6年は、ストーブが原因の火災は1件もありませんでした。
それでは、平成6年に発生した火災の原因はどんなものがあるのか、主なものを挙げてみましょう・・・
火災原因の第一位は放火
火災原因の第一位は、「放火・放火の疑い」です。2年連統の第一位で、平成6年の出火件数は32件でした。
放火は、人の命と財産を奪う憎むべき犯罪です。予防策はないように思われがちですが、「家の周りに燃えやすい物を置かない」「不審な人物を見かけたら、すぐ通報する」などで未然に防ぐこともできるのではないでしょうか。なにより平和で安全な社会づくりが大切だと思います。
他の火災原因とその対策
火災原因の第二位は「たばこ」、第三位は「たき火」と、2年連続で同じ順位になっています。
まず、たばこが原因の火災は、寝たばこや、灰皿に火のついたたばこを残し、忘れてしまうことなどにより発生しています。また、消したつもりのたばこがくすぶり続け、ほかの吸い殻に火がついて灰皿の中で燃え上がり…という火災発生例もあります。
つまり、「消し忘れ」さえしなければ、たばこによる火災は、ほとんど防ぐことができるのです。
次に、たき火が原因の火災ですが、「たき火の周りに燃えやすい物を置かない」「風があるときは、たき火をしない」「火は完全に消す」などが鉄則です。たき火は、周辺の住宅に迷惑をかけることもあるので、十分注意してほしいですね。
そのほか、てんぷら鍋やこんろ、火遊びなどが原因の火災も発生しています。特にてんぷら鍋は、突然の電話や来客のため、火を消さずにその場を離れていると、てんぷら油が過熱し、発火してしまうことがあります。
とにかく油断は大敵。常に細心の注意を払って「火」を取り扱ってほしいと思います。
火災予防運動
消防本部と消防署では、毎年春と秋の2回、火災予防運動を通して市民の皆さんに、みんなの力で火災のない安全な街をつくるよう呼びかけています。
例えば、ことしの11月9日から15日まで行われる秋季火災予防運動では、「災害に備えて日頃(ひごろ)の 火の用心」という全国統一の標語のもと、火災予防PRパレードや消防まつり(11月12日・市役所駐車場)などを実施します。
また、住宅防火診断として、消防職員によるひとり暮らしの老人家庭の防火診断や、消防団員による周辺地域の住宅防火指導を行うほか、町内会などの要請があれば、防火懇談会を開催し、地域ぐるみでの火災予防を推進します。
日夜頑張る「消防」
消防署や消防団は、24時間体制で「火災」から市民の生活を守るため頑張っています。しかし、一度火災が発生してしまったら、被害を最小限に食いとめることはできても、失った命や財産をもとに戻すことはできません。まず、火を出さないことが重要です。
また、場所によっては、現場への到着が遅くなることも考えられるので、現場周辺住民による初期消火がかなり大きな効果をもたらします。市民一人一人が防火意識を持ち、これからもっと「消防」に対して理解を深めてほしいと思います。
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( 図表説明 ) 平成6年 火災原因 ワースト5(市内)
火の用心 7つのポイント
1 寝たばこや たばこの投げ捨てをしない
2 子供はマッチ、ライターで遊ばせない
3 風の強いときは たき火をしない
4 てんぷらを揚げるときは その場を離れない
5 家の周りに燃えやすい物を置かない
6 ふろの空だきをしない
7 ストーブには 燃えやすい物を近づけない
消防士や消防団員もまた、私たちと同じ富士市民。いつもは、ごく普通の心優しい人々です。ところが、火災が発生し、いざ出動となると勇敢な戦士に早変わり。火災から、私たちの命と財産を守るため、恐ろしい炎や煙と戦うのです。火災のない社会は、平和な社会。私たちが願う社会です。