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【広報ふじ平成7年】平成7年度富士市教育文化奨励賞受賞者 芸術・文化の心を伝える

 教育や文化活動に貢献した人に贈られる「富士市教育文化奨励賞」の受賞者が決まりました。ことしの受賞者は、3個人2団体。芸術・文化の心を人々に伝えてきた皆さんにお話を伺いました。

絵は原色を使って表現
絵画
池田信一(しんいち)さん(中里)
- 写真あり -

昭和5年生まれ。教員として34年間小学生に美術を指導。その傍ら務めた公民館の成人学校の講師は、現在も続けている。イタリアの風物を中心とした創作活動をする一方、作品の保存処理の研究に励んでいる。富士市美術協会副会長、静岡県油彩美術家協会事務局長など。

 30年以上成人学校の絵画教室で教えています。その中で、生徒には「色をまぜないで、原色で表現するように」と指導しています。色が鮮やかになりますからね、私も心がけて描いています。でも、絵の具や筆の使い方など、基本的な技術は指導しますが、絵心については何も教えません。生徒が描きたいものを好きなように描いてくれればいいと思っています。
 小学校のころ見た「ベネチアの十字軍の絵巻」がとてもきれいで、印象深かったので、ずっとイタリアにあこがれていました。そして、何度か訪れているうちにイタリアのとりこになり、今では日伊協会の会員になってしまいましたよ(笑)。明るい光、あふれる緑、人懐こい人々…。生涯かけてイタリアの風物を描いていきたいですね。それと、イタリアのよさや文化などをPRしていきたいと思っています。
 これもイタリアで勉強したことなんですが、絵画というのは管理や保存が大切なんです。でも、日本では重視されていませんね。ですから、地味な仕事ですが絵画修復の仕事も続けています。
 作品は、一枚一枚心を込めて描いたもの。私の分身です。これからも、「この絵を描きたい」という心踊るような気持ちを持ち続けていけるよう努力していきます。


感動を伝える音づくり
音楽
富士見高校吹奏楽部(平垣町)
- 写真あり -

昭和43年に創部。昭和46年から県東部地区吹奏楽コンクールで25回連続金賞受賞。東海大会でも金賞を13回受賞。その一方で、定期的に中国を訪れ親善演奏会を実施。そのほか、福祉施設で慰問演奏会を行ったり、祭りやイベントに参加したりして、積極的にボランティア活動をしている。

 富士見高校吹奏楽部は、多くの賞を取っています。でも、賞の結果よりも、オリジナルの編曲を生かした色彩感あふれる富士見サウンドが出せたかどうかの方が重要です。そして、聞いている人たちが感動するような演奏ができればいいのです。
 私たちの楽団は、活動の範囲を外に広げています。例えば、3年に1回中国で親善演奏会を行っています。また、市民福祉まつりに参加したり、小学校で演奏したり…、さまざまな社会活動をしています。これらは、すべて体験学習の一環で、生徒たちにとって参加して得るものが大きく、今後の人生に役立っていくと思います。
 これほど市民に親しまれている楽団はないのでは…。これからも、感動を伝える音づくりを目指していき、身近な人たちに感動してもらえたらうれしいですね。 (顧問の石川喬雄(たかお)教諭談)


茶道は人間形成への道
茶道
佐野幸子(さちこ)さん(国久保)
- 写真あり -

大正6年生まれ。昭和29年、煎茶道皇風煎茶礼式(せんちゃどうこうふうせんちゃれいしき)〔後に黄檗弘風流(おうばくこうふうりゅう)〕教授となる。翌年から中学校や公民館の成人学校の講師などを歴任。青少年センターの青年教養講座と吉原商業高校の必修クラブでは、現在も指導を継続中。青少年の健全育成と伝統文化の振興に貢献。煎茶道黄檗弘風流富岳支部副支部長。

 女学校のころから茶道を勉強してきましたが、茶道というのは奥が深いですね。茶道は、厳しい作法をマスターするとともに、精神的な修行や茶の文化についての勉強も必要です。私も一生勉強をし続けなければと思っています。
 青少年を主に指導していますが、限られた時間内では実技だけの指導になりがちで、茶の心をいかに伝えていくかが課題となっています。茶の心とは、「客は亭主を生かし、亭主は客を生かす」というお互いに人を思いやる心のことです。生徒には、この心を養ってもらい、今後の人生に役立ててほしいと思っています。茶道は、芸術というだけでなく、人間形成への道なんです。
 茶道の指導者になって活躍している教え子もたくさんいます。私の指導がきっかけで茶道を続けてくれることが、とてもうれしいですね。
 茶道は、私の生活上の指針となるもの。一わんのお茶に感謝をささげ、掛け軸やお花などを見ながら、人と心の交流をする、そんな「茶味」に浸って心静かに生きていきたいですね。


後進に道を開く
彫刻
漆畑勇司さん(柳島)
- 写真あり -

昭和30年生まれ。昭和54年、富士美術研究所を設立。以後、富士高校の美術講師、公民館などの造形・彫刻教室の講師を歴任。アート・セッション(店内に作品を展示)を主宰。アート・スクランブル(小美術館)を開館。また、全国の美術館資料を収集し、情報提供をしているなど、美術振興に貢献。

 今では幼稚園児から一般まで教えていますが、美術大学を受験する高校生など、造形や絵画を勉強する人たちのためにつくったのが富士美術研究所です。自分が大学の彫刻科を受験するとき、教えてくれる所が近くになくて苦労しましたからね。美術をやりたいという気持ちを大切にして、ここで勉強してもらえればと思っています。
 ただ、教えっ放しでもいけない、自分が後進に道を切り開いていかなければと思ったのです。それで、後進のために、作品の発表の場を提供することに努めてきました。平成六年には、芸術を楽しみ、交流できる場としてアート・スクランブルを開館しました。ここが富士市の芸術の中心となるようにと、一般の会員の皆さんに支えられながら運営してきましたが、残念ながら一年間で閉館してしまい、ギャラリー機能は失ってしまいました。でも、事務局は富士美術研究所に移して、芸術に関する情報を発信し続けています。
 彫刻家としては、自然体で創作できればいいと思っていますが、自分の存在理由は何かという、自分を対象にしたものを突き詰めていきたいですね。そして、多くの皆さんに作品を見てもらい、美術に興味を持つようになってくれればうれしいです。


海の文化を伝えたい
郷土芸能
大漁木やり唄(うた)中丸保存会(中丸)
- 写真あり -

 昭和60年に設立。以来ふるさと芸能祭に毎年参加。地区の文化祭や敬老会などに参加し、伝承活動をしている。
 また、後継者育成のため、田子浦小・中学校に郷土芸能を紹介。伝承芸能の保存だけでなく、世代を超えた交流を通しての人づくり・まちづくりに貢献。

 大正から昭和初期に田子浦地域で行われていた大謀網(だいぼうあみ)漁(大きな網を12艘(そう)ほどの船で引いて、ブリやマグロなどをとっていた)で生まれた労作歌が「大漁木やり唄」と「沖上がり音頭」。厳しい海の仕事の中で、船員たちの心を一つにしてきたというこの二つの歌を、ここの土地の伝統文化として残していこうと、田子浦地区中丸の有志で保存会を設立しました。
 現在、会員は12人。6メートルの船、4.5メートルの網、大漁旗などを用意し、力強いかけ声を上げながら、当時の漁の様子を表現します。今まで、新富士駅開業記念アトラクションやふるさと芸能祭、田子浦地区の催しなどに参加して、この郷土芸能を広めてきました。また、お年寄りの人たちにも見ていただこうと、福祉施設にビデオを贈りました。
 海の労作歌って、あまりないんですよ。これからは、シラス船で歌われた田子浦小唄もマスターし、海の文化を多くの皆さんに伝えていきたいですね。それから、後継者育成のために地域内で会員も募集していきます。
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