ことしの6月、大渕に精神障害者が共同生活する「成徳(せいとく)寮」をつくった
渡辺好憲(よしのり)さん (大渕)
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トイレットペーパー加工の工場を経営している渡辺さんが、大富士病院に協力して「職親」を始めたのは約20年前のこと。
職親とは、作業能力が少し欠ける人を預かり、実際に労働させることによって、その人の能力を高め、自立へ向けての足がかりとさせることを目的としています。
渡辺さんが職親を引き受けた当初は、安い労働力としての期待を、患者さんにかけていました。しかし、渡辺さんの思うようには、患者さんが働いてくれない上、周りからの誤解や偏見もあって、職親をやめようと思ったことも何度かありました。
そんな渡辺さんを励まし、後押ししてくれたのが、大富士病院の故・荻野新六院長でした。
渡辺さんは、荻野さんを通して多くの精神障害者の人たちと接する中で、病気が回復して退院しても、社会の偏見などもあり、社会復帰はなかなか難しいということを痛感していきました。
そこで、渡辺さんと荻野さんは、退院した人たちのための寮の構想を練り始めました。しかし、途中で荻野さんは亡くなってしまったため、渡辺さんが遺志を受け継ぎ、私財をなげうって「成徳寮」を完成させるに至ったのです。
成徳寮では、大富士病院から退院した16人が、社会復帰に向けて生活を営んでいます。
「寮生は、市内六か所の作業所に通い、働いています。みんな、おなかを減らして、作業から帰ってきますが、私と妻は、基本的に食事などの世話は、していません。寮生の自立が一番の目的なので、食事の準備や掃除などは、すべて寮生に任せています。みんな当番制で仲良く分担して頑張っていますよ」と、話す表情からは、まるで父親のような愛情がにじみ出ていました。