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【広報ふじ平成7年】富士の民話あれこれ

柚の木(ゆずのき)
 柚木(ゆのき)と浦町の境あたりに、柚木(ゆずのき)神社があります。
 古文書によると、この神社は治安(じあん)2年(1022年)に建てられ、柚木という地名の由来となった神社だと書かれています。
 今回は、長年この神社の氏子総代を務めていた磯野龍彦(たつひこ)さんから、お話を伺いました。

 約1,000年もの昔、今の柚木周辺が、まだ富士川の河原だったころのことです。ある年、大水が出て甲州(山梨県)の方からユズの木が流れてきました。ユズの木は、そのままそこに根づき、だんだん大きくなりました。やがてその木の太さは、大人3人で幹の周りを囲んでやっと手が届くほどに、高さは五丈八尺(約17メートル)もの大木になりました。そして、そのユズの大木を中心に何本ものユズの木が生えて、林になりました。生命力の強いユズの木を見て、村人たちは、「この不思議なユズの木には、きっと神様が宿っているに違いない」と、柚木神社を建ててあがめていました。
 そのころ、全国で大地震が起きて、多くの人が死んだり、ひでりが続いて作物ができず、飢え死にする人が出たりしました。そこでユズの木の近くに住んでいた百姓、秀安という人が、ユズの葉を全国へ配ったところ、たちまち地震はおさまり、雨も降って作物がよくできるようになりました。
 お上(かみ)では、柚木神社に感謝し、祭りの費用だとして、毎年、秀安に黄金50枚をくださったということです。


磯野龍彦さん(柚木)
- 写真あり -
 神社の祭りは、今も毎年9月に行っています。しかし、残念ながら今では、柚木神社の周辺に大きなユズの木はありません。8年前に神社の境内にユズの木を植えたんですが、なかなか大きくならなくて…。
 今もなお、家の敷地内の鬼門にユズの木を植えるところがあります。ユズの木にはとげがあるし、香りのある実もなるので、きっと魔よけの霊力があると信じられているんでしょうね。
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