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【広報ふじ平成6年】富士の民話 あれこれ

虎御前の(とらごぜん)の腰掛石
 伝法3丁目から伝法沢を渡って約100メートル西側(片宿)に「虎御前(とらごぜん)の腰掛石」があります。鷹岡、丘地区には曽我兄弟にまつわる史跡がいくつかありますが、腰掛石もその一つ。
 今回は、曽我十郎の愛人、虎御前にまつわるお話について、腰掛石を大切に祭っている大木何久利(あぐり)さんに語っていただきました。
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 鎌倉時代の建久4年(1193年)に源頼朝(よりとも)、工藤祐経(すけつね)たちが、富士山のふもとへ巻狩りにやってきました。
 父のかたき工藤祐経が、源頼朝とともに巻狩りへ出かけたことを知った曽我十郎、五郎の兄弟は、母に巻狩り見物に行くのだと偽って、工藤祐経を討つために曽我の里(今の小田原市内)を出発しました。
 曽我兄弟が出発した後、兄の十郎の愛人虎御前は、二人のことが心配で、いても立ってもいられません。ついに大磯を旅立った虎御前が、ようやくたどり着いたのは今の片宿あたり。人々に兄弟のうわさを聞いたところ、5月28日の夜、二人は見事本懐を遂げたものの、兄の十郎はその場で討たれて死に、弟の五郎は次の日に首を切られたことを知りました。愛する人がもうこの世にはいないことを聞いた虎御前は、張り詰めた気持ちが一気に破れ、流れる涙をふきもせず、そばの石に崩れるように腰かけたと伝えられています。


大木何久利(あぐり)さん(厚原)
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 この腰掛石の横を流れる小川の水で、石を洗ってやると腰が治るという言い伝えから、昔はお参りする人も多かったようだよ。私が小さいころは、近所の人だけじゃなく、鷹岡や天間から木の宮神社へお参りに行く途中、腰掛石に拝んでいった人もいたなあ。
 毎年5月28日(曽我十郎の命日)は、近所の人や私の親せき、仕事仲間などが集まって、お祭りをしているんですよ。
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