浮島沼
スケッチ画と文
富士市美術協会
久保田明宏さん
富士市伝法995-2
「一面に広がる枯れアシの、寒々とした原野に潜む、新しい生命への力強い息吹。
流れるともなくよどむともなく、大地を潤し湿原を形成し、その腕(かいな)に生命をはぐくむ、白く光る水。
すべてが希望でありたい」
これは以前、県教育委員会から制作依頼のあった「静岡の美」の作品「浅春の浮き島沼」に添えた文章である。
私は制作依頼があると、浮島沼を題材に選ぶことが多い。何度も取材に行くが、そのたびに違う顔がそこにある。時の流れが、確実にこの地にもある。物心がついたころから、既にここが私の遊びのフィールドテリトリーだった。とにかくよく遊んだ。泥靴を洗う母親の後ろ姿とともに、思い出がよみがえる。
今、私の絵画制作に及ぼす感性の大部分は、この大地のぬくもりであるような気がする。風も雲も何げない瞬間が感性の残像となって、イメージが形となりつくられてゆく。
私もここで生まれ、はぐくまれた一人である。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図
- 写真あり -