ツルまき田
昔むかしのこと、中里にあったお話です。
中里の宇佐八幡宮の境内に、大きな松の木があったそうです。そこには、ツルの親子が住んでいました。
ある日のことです。一羽のひなが、どうしたことか巣から落ちてしまったのです。
さあ、大変。お母さんのツルは困ってしまって、悲しそうに鳴きながらひなの周りを飛ぶのですがどうすることもできません。
ちょうどそこへ、通りかかったおじいさん。
ツルの困った様子を見て、ひなを巣に戻してやろうと思いました。
でも、何と言っても大きな松の木。おじいさんは、やっとのことで木に登り、ひなを無事巣に戻しました。
こんなことがあった次の年、中里村は、大飢饉になりました。
何しろ、全く農作物がとれません。
ついに食べるものがなくなった村の人たちは、大切に取っておいた種もみまで食べてしまったのです。
春になりました。田んぼに、もみをまきたくても、村にはもう一粒のもみも残っていません。
もみがなかったら、米をつくることはできません。村の人たちが困っていると、どこからか二羽のツルが飛んで来ました。
そして、田んぼに、もみをまいてくれたのです。秋になるとそこには、たくさんの稲が実りました。
それからというもの、村の人たちはいつまでもツルを大切にしたということです。