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【広報ふじ平成4年】シンナーに走る若者たち 彼らの心をひらくのは誰?

 夏休みは青少年の行動が開放的になり、飲酒や喫煙、シンナー乱用などの非行に走りやすい季節です。
 最初は青少年特有の好奇心から始まる行為も、一歩誤ると、人に害を及ぼしたり、自分の命を縮めることにもなりかねません。特にシンナー等の乱用は青少年の心と体をむしばみ、ひどい場合には一生廃人として暮らさなければなりません。
 今回は、シンナー等の乱用者に直接かかわっている3人の方のお話をお聞きしながら、私たちに何ができるのか一緒に考えてみましょう。

●シンナー(有機溶剤等)とは
 シンナーとは、ペンキやラッカーなど塗料を薄めるために各種の有機溶剤を配合した液体です。
 このほか、有機溶剤の含まれるものにはボンド、ゴムのりなどの接着剤、ペンキなどの塗料や洗浄剤などがあり、これらの液体をビニール袋やジュースの缶などに入れ、手のひらで温めながら揮発した蒸気を吸うのがいわゆる『シンナー遊び』です
●脳の萎縮や急性心不全で死亡するケースも
 シンナーなどを乱用すると貧血や肝臓・腎臓・肺などに障害があらわれ、また手足のしびれや発作などの症状も見られます。
 重症になると脳が萎縮(いしゅく)し、理解力判断力の低下などの脳障害を起こします。最悪の場合は『急性心不全』によって死亡するケースもあります
●17歳がピーク
 シンナーの乱用者は10代が約9割を占め、17歳が年齢のピークとなっています。


富士警察署防犯少年課 課長 山下晴久さん
- 写真あり -

覚せい剤乱用に結びつく危険が

 シンナー乱用による検挙数は、毎年平均100件前後。しかしこの数字は乱用者のごく一部で実数はもっと多いと考えられます。
 富士市は工業都市のためか、人の出入りの多い4月〜6月に数字が伸びる傾向にあります。また、中・高校生より、15歳〜18歳の有職(無職)少年の乱用が目立つ点も富士市の特徴と言えます。
 仲間の誘いに好奇心が手伝って始める場合が多いのですが、常用しだすと、シンナーのために金を使い果たしたあげく、シンナーを使用する工場へ盗みに入ったり、酩酊(めいてい)状態で車を運転して交通事故を起こすなどの二次犯罪につながっていきます。
 今一番の問題は、シンナーの闇売買が暴力団の資金源になっており、そこから、青少年が覚せい剤へ引き込まれていくという危険性です。残念な事ですが、平成3年の覚せい剤関係の検挙者は富士市が県下で1位でした。そして、検挙率のかなりの数が、未成年時にシンナー経験者であったというのが事実です。

早期発見が何よりも大切

 思春期独特の現象であるシンナーの乱用防止の基本は、やはり家庭であり、周囲の大人の温かい目です。
 私たちの仕事は青少年を立ち直らせる事です。そのための決め手は、早期発見につきます。街で乱用者を見かけたら通報を、また乱用の事実を知ったら早めに相談してくたさい。
- 図表あり -
( 図表説明 ) シンナー事犯検挙補導状況(平成4年1月〜6月)


聖明病院 院長 鈴木康夫さん
- 写真あり -

有機溶剤の持つ恐しい有害性

 有機溶剤(シンナ一等)を乱用しますと、自覚症状として、初回者は、陶酔感や幻覚の体験とともに苦痛感を伴います。しかし常習者になると苦痛感は減少し、陶酔感、移動感幻覚などが増幅されてきます。
 反復して乱用すると、身体的には手足のしびれや貧血、肝臓・腎臓の障害、肺や気管支などの呼吸器の障害を起こします。また、若いにもかかわらず、歯がボロボロになってしまいます。しかし、最も恐ろしいのは脳の萎縮(いしゅく)で、IQ(問題解決能力)が減退し社会生活に支障を生じるようになることです。

立ち直った青少年に温いまなざしを

 乱用を繰り返し、薬物乱用型から薬物依存型になると、入院して矯正治療をするしかありません。これは、本人の治そうとする強い意思と大きくかかわってきますが、入院した青少年の約7割が社会復帰を果たしています。
 彼らと接してつくづく感じるのですが、彼らの社会逸脱(いつだつ)行為は、大きな苦しみとして自身に返ってくるわけですが、それを乗り越えたとき、彼らは以前より一歩レベルアップした自分を発見すると私は考えています。その意味で彼らには、周囲の温かい目と長いスタンスでの理解が不可欠だと私は思っています。


青少年指導委員田子浦班 班長 深澤信之さん
- 写真あり -

シンナー乱用で悩んでいる人の相談に応じます

 私たち青少年指導委員は、主に小学校区を単位として、青少年への呼びかけや補導などを行い、非行防止のために活動しています。 こうした活動の中で特に深刻化しているのがシンナー等の乱用、公園や海岸、駐車場などで、よく乱用後のビニール袋やジュースの缶などの残骸を発見します。冬と違い、夏は屋外での吸引がふえるためで、私たちも早期発見・早期補導のため、体制を強化していますが、なかなか効果は上がりません。
 この7月から、『青少年シンナー等乱用対策相談員』制度がスタートしました。これは市の青少年相談所と連絡を密にし、地域内でシンナー乱用で悩んでいる人々の応援をして乱用を初期の段階で防ごうというものです。
 この相談員には、青少年指導委員190人がそのまま当たることになりました。乱用を防ぐには、皆さんからの情報が頼りです。私たちから人さまの家庭へ入っていくことは困難です。家庭内からの情報提供に期待します。
もちろん秘密は厳守します。


●青少年指導委員の補導日誌から
・6月13日 16時30分。吉原祇園祭当日、木之元神社南側の公園で16歳〜17歳の女子3名がシンナー入りのビニール袋を持ち吸引しようとしていたのを発見。話しかけ、害を知らせ捨てさせた。入手先は知人の男子高校生とのこと。
・1月22日 親子台団地近くの造成地で不審車発見。近づくと急発進して逃げ去った。現場にはジュースやドリンクのビン計7本にシンナーが分けてあった。密売人のようだ。
・須津駅北側の宇佐八幡で、ボンドを使用したビニール袋六つを発見。須津駅方面へ向かったところ.少年二人の様子が変なので車を止め声をかけた。シンナー袋を隠し持っていたので、同行していた駐在さんにお願いする。(昨年11月21日)
- 写真あり -
( 写真説明 ) 「社会を明るくする運動」キャンペーン(7月1日 富士駅前)


私たち自身の問題として直視する勇気を

 シンナー等の乱用が日本で流行し始めてから、もう30年が経過しようとしています。酩酊(めいてい)や幻覚作用がしだいに乱用する青少年の層をひろげ、周囲の努力にもかかわらず、補導される若者は後を絶ちません。
 覚せい剤の乱用にもつながりかねないこの問題を、私たちの自身のものとして捉え、現状を見詰める勇気と、シンナーに走った若者の心の揺れを理解しようとする努力が今私たちに求められています。

シンナー乱用に関する相談は
富士市青少年相談所  電話52-4152
富士警察署防犯少年課 電話51-0110
富士保健所環境衛生課 電話65-2153
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