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【広報ふじ平成4年】春一番 若者たちへのメッセージ

私が二十歳(はたち)だったときに

いい顔をしている人に出会うことがあります。
いい笑顔で、いい話を聞かせてくれます。
今回は、二十歳になった皆さんに贈る、本当にいい話。
二十歳は、人生の大きな節目の年。
大切な年を、どう過ごすか、どんなふうに頑張るか、
そして、どう楽しむかを、
いい顔をしたお二人に伺ってみました。
軽い人にも、まじめな人にも、
ぜひ読んでいただきたい、取っておきの特集です。

弁護士 立石雅世さん
さまざまな生き方を、好奇心を持って観察してもらいたいなあと思うことと、自分の意見をキチッと言える大人になってほしいと思います。
- 写真あり -

 二十歳のころは、大学2年生でした。法学部に在籍して、漠然とですけれど「弁護士になりたいな」と思っていました。
 私の年まれ育った環境というのは、父が土地家屋調査士で、母も家事をしながら父の事を手伝っていましたから、「女も仕事をするんだ」というふうに、ごく普通に受けとめていました。
 私は、吉高の出身なんですけれど、あのころホームルームなんかの意見で多数を占めていたのが、「お嫁さんになりたい」。そんな考え方に、私とか、あと一部のひねくれた連中は「そんなの、おかしいよね」なんて反発してました。
 決して、主婦業を否定していたわけではありませんが、「何か資格を取って世の中に出てみたい」。
 結構、生意気なこと言ってましたね。(笑)。
 ですから、そんな延長線上にあった大学2年生であり、二十歳だったと思います。
 でも、理想と現実の違いも感じていたころ。
 授業に出ても、何言ってるのかわからない。六法全書を読んでも、体系的な理解ができないという中で、「これは、なまはんかなことじゃあ受からないな」というのが、ヒシヒシとわかってきて。
 人間、楽な方に流れますから、「資格を取るばかりが人生じゃあないな。もっと早く社会に出よう」と、方向転換を考え始めた時期でもありました。
 二十歳のときよりもっと深刻だったのは、卒業する前の年くらいのオイルショック。
 これで、女の子の就職が全然なくなってしまったんですね。
 それまでは、「何とかなるさ」と思っていたので、さすがにその時は、親の顔が浮かびましたね。
 就職難になると、「やっはり、資格(弁護士)がいいんじゃあないか、一生仕事をしていけるし、男女差とか関係ないようだし」。父に、「もう少し勉強させてほしい」って言ったら「いいよ」って。
 ホッとしちゃって。
 本当は、そこからが苦難の道だったんだけれどね(笑)。
 私は、こういう道をたどって来たんだけれど、女の人って、どういうふうに過ごすのがいいのかしらね。
 二十歳のころだったら、いろんな選択ができますね。
 ただ、完璧にはなっていない年ですから、いろんな方のいろんな意見や、さまざまな生き方を、好奇心を持って観察してもらいたいなあと思うことと、自分の意見をキチッと言える大人になってほしいと思います。
 身じかなところから、そんな訓練をしていったらいいと思いますよ。
 そんな女の人が、ふえるといいなあと思います。
 それから、若いからできるってことも多いと思うから、職場以外の人とのつき合いを広げたり、趣味を持つのも必要ですね。
 もっと、個性を磨かなけりゃあね。


田子の月社長 牧田一郎さん
何でもいい。思いきり、メチャメチャにのめり込むのも必要なのではないか。
恵まれ過ぎていて、かえって感動する心を失っていないか。
- 写真あり -

 私の甘党は有名です。
 飯に、砂糖をぶっかけて食べるし、お汁粉だったら何杯でも。
 行きつけの店でのつまみは、チョコレートと甘納豆。
 菓子もよく食べます。
 これは、仕事だから食べるのではなく、本当に好きだから食べるわけです。
 おかげで、「だれにも負けないぞ」と自信を持っていることがあります。
 それは、いい菓子か、悪い菓子かを見分ける目と舌。
 もっとも、最近は医者に甘い物をとめられているんですがね (笑)。
 私は、「菓子は夢」だと思っています。
 菓子なんか、なくたっていい。
 でも、なければ何か味気ない。
 小さな菓子一つに夢を込めて、うまいと評価されるものをつくり続けたいですね。
 しかし、これは私の夢。
 経営者の夢と、社員の夢とが一致しなければ、会社の成長はないと思っていますし、一緒に取り組んでいこうと思っています。
 私は、37歳で社長に就任しました。
 親父には、随分厳しくしつけられました。
 経営の厳しさや、「人の心の痛みがわかる人間になれ」と。
 今になってありがたいと思うし、昔の経験が生きていると思いますね。
 だからといって、今、子供に同じことができるかと言われてもできませんね。
 親が、子供に操られている(笑)。
 ことしも、新入社員が入って来ます。
 十人十色がおもしろいのに、近ごろは芸達者や餓鬼大将がいない。
 「こいつは、おもしろそうだな」と思う人間がいない。
 おとなしくて、ワンパターン。
 淡々とした人生を送っているのではないか。そう見えますね。
 何でもいい。思いきり、メチャメチャにのめり込むのも必要なのではないか。
 恵まれ過ぎていて、かえって感動する心を失っていないか。
 小さな菓子づくりにだって、新しいうまさへの挑戦があるし、お客様との出会いもある。
 頭の中を柔軟にして、常に前向きに仕事に取り組んでほしいと思いますね。
 仕事のやりがいや生きがいも、本当はどこにでもあるものだと思いますよ。
 私が二十歳のときですか。
 商学部の学生でした。
 金はなくても暇はあったから、アルバイトに精を出していました。
 好奇心が強く、いろいろな職業をのぞいて見たくて、何でもやりました。
 サウナの三助、弁当売り、コント55号の裏方、車の陸送。
 中でも一番よかったのは、ビルの窓ふき。夕飯を食わしてくれて5,000円。1,000円が相場の時代にですよ。
 自由気ままに、青春を楽しみました。
 遊びに関しては、全く悔いはないですね。
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