のこぎり
中央町2丁目の山崎国男さんの家は、もとげた屋さん。山崎さんが10歳くらいだった大正末期、お正月が近づくと、店はげたを買う人でとてもにぎわったそうです。
山崎国男さん(中央町2)
- 写真あり -
今回、市立博物館に寄贈していただいたのは、げたをつくるときに使ったのこぎりです。山崎さんの家は、屋号を「虎屋履物本店」と言い、近郷近在のげたの製造、卸、そして販売まで、一手に引き受けていました。
のこぎりは、福島県や栃木県から買って来た、質の良いキリの木を切るのに使いました。刃渡り60センチ、幅は、23センチもあるのこぎりです。
げたをつくるときは、この大きなのこぎりで、まずキリの丸太を八寸(24センチ)の長さに切り、次に縦に四つ、横に二つに切ると、これが男物のげたをつくるもとになるのだそうです。
この作業のことを「木取(きど)る」と言い、作業する人のことを「木(こ)びき」と呼びました。昔は、すべて分業の手作業でしたから、職人さんたちも20人くらいはいたそうです。そのほかにも、番頭さんやご飯の支度をする女の人など、大勢の人たちが働いていました。昭和の初期になって電動化が始まると、もう、のこぎりも使われなくなってしまいました。