【広報ふじ平成3年】目指してみませんか 平成のナイチンゲールを
1854年のクリミア戦争てイギリスのナイチンゲールが、数十人の看護婦とともに傷病兵を看護し、「クリミアの天使」と呼ばれたのは有名なお話ですね。そして今でも、けがや病気のとき頼りになるのは医師と看護婦(士)ではないでしょうか。
市は、地域の基幹病院として高度医療機器を備えた中央病院を運営していますが、看護婦(士)を養成する看護専門学校の建設も始めました。開校予定は平成5年4月。高度医療の進む中、どうしても看護婦(士)の増員が必要なのです。
看護する喜びを求めて、あなたも平成のナイチンゲール「看護婦、看護士」を目指しませんか。
主婦・お母さん そして看護婦
市立中央病院看護婦 長友悦子さんの一日
中学を卒業して、蒲原病院附属准看護学院に入学。卒業後、病院に務めながら夜間高校へ通学しました。その後栃木県の独協医科大附属看護学校に入学。働きながら3年間学び、看護婦になりました。
こんな経歴をお持ちの長友悦子さん(青島)は現在、主婦・お母さんそして市立中央病院の看護婦として活躍中。
9月27日金曜日、「看護婦の仕事が好き。患者さんが元気になって退院したり、歩けるようになって寄ってくれたときなど、すごくうれしいから」と話してくれた長友さんの一日を追ってみました。
主婦そしてお母さんの時間
きょうは準夜勤。午後4時15分から、深夜の零時45分までの仕事。
朝5時40分に起き、6時半ごろから食事。出かけるのはご主人の安功(やすのり)さん、お兄ちゃんの優(まさる)君、妹の南(みなみ)ちゃんの順。託児園の車に乗る南ちゃんに「スイミングちゃんとやるんだよ」と声をかけると、「お母さんも行ってらっしゃい」と返事が返ってくる。
一息ついた9時半ごろ、南ちゃんに遠足代を持たせるのを忘れたことに気づき届ける。「きょうはいつもよりお母さんの時間が長かった」と悦子さん。掃除、洗濯そして午後3時までに夕食の用意とふろ沸し。これで主婦の仕事は終り。
午後3時半、優君が帰宅。本読みの宿題を聞いてやり、南ちゃんあてに手紙を書く。帰ると返事が書いてあるので、いつも楽しみにしている。
さあ出勤!
準夜勤務を密着取材
〈午後4時〉
白衣に着替え、長友さんの顔が看護婦の顔に変わる。
準夜勤は3人でチームを組む。きょうの仲間は中島さんと杉山さん。担当は6階のB病棟。内科と皮膚科の患者さん56人が入院している。長友さんが26人、中島さんが30人受け持ち、杉山さんがフリーで動く。
〈午後4時15分〉
日勤看護婦との引き継ぎが始まった。朝からの症状や治療の状況、また熱が上がった場合の対応など、患者さん一人一人について慎重に確実に引き継いでいく。
〈午後4時40分〉
引き継ぎの指示に従い、時間を決めて薬を飲んでいる患者さんの薬を準備。
〈午後5時〉
1回目の病室回り。
「お熱を測ってください」と言いながら、急いで病室を回る。測るのに時間がかかるので、先にお願いしておくのだ。
リュウマチの患者さんと、「どう痛い」『体中痛いね』「指の関節動かしてる」『痛いから動かさない方が楽だよ』「でも動かさないと、固まって手が変形しちゃうよ」『うん、そうだね』など病気を気遣いながら話しを進める。また、体にむくみのある患者さんのおなかや足にさわり症状を確認。
脳梗塞で入院11日目の患者さん。うんこが出ないという訴えに、右手が少し麻痺して動きにくいけれどリハビリを兼ねて、「右手でおなかをさするといいよ」など、患者さんの症状を考えながら、次々と言葉が出てくる。痛み止めの注射をしてほしいと患者さんが訴える。医師からは、「痛がるときは注射」の指示が出ていることを確認。しかし熱のあるときは、座薬の鎮痛剤の方が安全。患者さんの様子を見ながら対応していく。
〈午後5時40分〉
食事の用意ができたとの放送が、各部屋に入る。自分で食べられない患者さんに食べさせるのも、大切な仕事の一つ。
〈午後5時55分)
部屋回り終了。ナースセンターに戻る。しかしすぐに血圧計を持って出て行く。部屋回りのとき、ベッドにいなかった患者さんの血圧を測りに行くと言う。
〈午後6時15分〉
昼間の検査結果が出て、医師から指示の変更があると、杉山さんから伝えられる。
夜間、内科の当直医師は一人。そして副当直医師一人が自宅に待機している。夜も脳梗塞などで倒れ、救急車で運ばれてくる患者さんも多い。
時々ナースコールが入る。
〈午後6時30分〉
一息ついたところで夕食。食事は30分ほどで終る。時々電話やナースコールが入り応対する。
〈午後8時40分〉
午後9時の消灯の前に2回目の部屋回り。食事の量を一人一人聞いていく。なかなか言ってくれない患者さんもいるが、なんとか教えてもらう。「痛くなったら夜中でも言ってね」「せきやたんは出ないかな」などと話しかけながら、順番にべッドを回って行く。熱が38.1度に上がった患者さんの、水まくらを用意する。
患者さんの尿の量を調べるのも大切なこと。トイレの袋にためられた、一人一人の尿の量を記録していく。
〈午後9時10分〉
痛くて寝られない患者さんのために、痛み止めの注射を準備。既に消灯して暗くなった病室へ、懐中電灯を持って向かう。
消灯後、明るいナースセンターの中では、心電図を写し出す2台の機械から、ピプ・ピプという音がやけに大きく響いている。
〈午後9時20分〉
一人一人のカルテに、巡回したときの患者さんの症状、体温、血圧、処置方法などを記録していく
〈午後9時30分〉
「おしっこを捨ててください」というナースコール。寝むれないと、ちょっとした痛みも倍に感じ不安になるなど、これからがナースコールのふえる時間。
〈午後10時20分〉
カルテヘの記録が続く。
「頭を冷やしているのに熱が上がってくる。どういうわけか」と、家族の人が聞きに来る。寒がっているか聞き、「寒がる間は熱は上がるので、寒くなくなるまで氷まくらをはずすように」と話す。
〈午後10時40分〉
足が痛いと言う患者さんが、痛み止めの座薬と湿布薬をもらいに来る。
〈午後10時45分〉
カルテへの記録が終わる。
〈午後11時35分〉
懐中電灯を持って最後の部屋回り。ほとんどの患者さんは寝ている。しかし、昼間眠るので夜眠られない患者さんが二人いる。
痛み止めの注射した患者さんの容体を調べる。
〈午後11時50分〉
深夜勤務の看護婦に引き継ぐため、カルテと記録簿に記入。
〈午前零時15分〉
深夜勤務の二人の看護婦と記録簿を見ながら引き継ぎ。
〈午前零時50分〉
勤務が終わり帰宅の途につく。
台風の予波で風がすごく強い。
3交代で患者さんを見守る看護婦たち。病院は一日中眠らない。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 本読みをお母さんに聞いてもらい優君もうれしそう
( 写真説明 ) 一つの指示も漏らさぬよう 引き継ぎの顔は真剣(一番左が長友さん)
( 写真説明 ) 薬はちゃんと飲んでね
( 写真説明 ) 付き添いの奥さんも交え症状を聞く
( 写真説明 ) 夜中の点滴薬を事前に準備(杉山さん)
( 写真説明 ) 袋に書かれた名前を見て、1人1人の尿の量を記録する
( 写真説明 ) 最後に処置したことなどを、1人1人のカルテに記入していく(中島さん)
周りの人の温かい協力で続けてこられたんです
長友悦子さんが準夜勤や夜勤のとき、家を守っているのがご主人の安功さんと二人の子供たち。悦子さんを取材した同じ夜、安功さんからお話しをお聞きしました。
「結婚する前から看護婦をしてましたが、続けられるか不安がありましたね。でも妻が続けたいと言うので、約束をしたんです。食事やふろの準備などはするけど、病院への送り迎えはしないって。家事や洗濯は好きなんで、あまり苦にならないんです。
これまでに一番大変だったのは、お兄ちゃんの優が入院したときでした。妻が付き添ったので、下の南の面倒を十日ほど見たんです。昼間、南を預かってくれた乳児園の人や、仕事の時間を気遣ってくれた会社の皆さんの協力があって、なんとか切り抜けられました。
看護婦を続けたいという本人のやる気と、周りの人の温かい協力があるからこそ続けられるんだと思っています」
- 写真あり -
( 写真説明 ) 父子家庭のようだけど、もうみんななれっこです
一日も早く看護婦さんになりたい
- 写真あり -
( 写真説明 ) クルリ変身
一日ナースを体験して
市立中央病院で、看護婦の体験を希望する高校2年生の女子を対象に、毎年一回「一日ナース体験」が行われます。ことしは8月9日に行われ、富士・富士宮の7校から49人が参加。
あこがれの白衣に着替えた参加者は、3階から7階までの病棟に分かれ実習。看護婦になりたいという気持ちがさらに強まったようです。
参加者のアンケート結果からお知らせします。
参加の動機は
参加の動機は、
1、看護職(看護婦、助産婦、保健婦)になりたくて…36人…と一番多く、
2、医療従事者(看護職以外)になりたくて…四人
3、家族にすすめられてが…一人いました。また、「その他」の理由は8人という結果でした。
やはり、将来看護職になりたい高校生の参加が目立ちました。
参加してよかったことは
この回答は、二つ以内の複数回答です。
1、病院の様子がわかったこと… 9人
2、看護婦の仕事がわかったこと…29人
3、患者さんに接したこと…27人
4、白衣を着たこと…30人
このような結果になりましたが、一つの病棟だけでなく、もっとたくさんの病棟で実習したいなど、積極的な意見もありました。
将来看護婦になりたいですか
「将来、看護婦になりたいと思いますか」の問いに、40人が「はい」と答えています。参加の動機で看護職になりたい人が26人ですから、一日ナースを体験して、新たに四人が、看護婦になろうと思ったことになります。また、看護婦になろうと思わないのは一人だけ。残りの9人は、まだ迷っているようです。
一日ナースを体験しての感想は
「看護婦さんてすごいな。大変だな」など、素直な気持ちで書いてくれた感想文。参加したみなさんの思いが込められています。
こんな看護婦さんになりたいな
いろいろな看護婦さんがいるけど、どの看護婦さんも同じなのは、患者さんとの接し方でした。一人一人の患者さんに話しかけるのを見て、話しかけることの大切さを知りました。また、話すことのできない患者さんが、一生懸命話そうとしているのをにこにこしながら理解しようとしている看護婦さんを見て、私もこんな看護婦さんになりたいなって思いました。
あなたも高2になったら、一日ナースを体験してみませんか。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 赤ちゃんの心音、聞こえる聞こえる
( 写真説明 ) ここで注射の準備をするんですよ
市は看護婦(士)の養成に乗り出します
来年11月の工事完成を目指して、10月5日(仮称)富士市立看護専門学校の起工式が行われました。建設地は富士高校の東側。建物は鉄筋コンクリートづくり3階建ての校舎と、鉄骨2階建ての講堂兼体育館などです。総事業費は約26億円。
現在県内には15の看護婦を養成する学校があり、市内の高校からも大勢入学しています。しかし近い学校でも駿東郡清水町や静岡市まで行かなければなりません。
東部の市町村では初めてのこと。ぜひご期待ください。
入学資格や定員は
1、入学資格…高等学校を卒業(予定)または、同等以上の学力のある男女。
2、定員…1学年50人
3、修学年数…3年
卒業すると看護婦(士)国家試験の受験資格と、保健婦・助産婦学校の受験資格がもらえます。
充実した施設をそろえて
絵も写真もなく文字だけの説明。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、施設の概要をお知らせします。
1階
・図書室…約5,000冊の専門図書などをそろえます。また20種ぐらいの医学雑誌等も毎月購入し、学生が利用しやすい図書室にしていきます。
・AVルーム…6台のモニターテレビと、200本のビデオテープをそろえます。
このほかに職員室、実験室、会議室などがあります。
2階
・普通教室…ゆったりと学習できるよう、一回り大きな机のある50人用の教室が3部屋あります。
・視聴覚室…ビデオプロジェクター、本などを直接画面に大きく映写する資料提示装置などがあり100人を収容できます。また 机といすが階段状につくられ、 どこからも映像がよく見えます。
このほかに、昼休みなどにくつろげるホールや調理実習室などがあります。
3階
・看護実習室…一番大きな実習室で、実習用ベッドを3人に1台。また実際の病院とほぼ 同じつくりの個室やナースセンターも用意します。そのため、病院での実習もとまどいが少なくて済みます。
このほかにも在宅看護の実習をする、和室などもつくります。
学費の足しに奨学金ももらえる
公立看護学校の授業料は、年間6万円ぐらい。しかし、教科書や参考書も買わなければなりません。
そこでたよりになるのが奨学金。一例を紹介します。
◎富士市立中央病院の奨学金
・金額…月額2万円
・返還免除の条件…卒業後、奨学金を受けた年数と同じ期間以上市立中央病院に勤務する。
◎静岡県の奨学金
・金額…月額A3万2,000円、B1万6,000円
・返還免除の条件…
(A)県内の200床未満の病院等に3年以上または、県内の200床以上の病院等に5年以上勤務する。
(B)県内の医療施設に3年以上勤務する。
試験科目は
平成5年4月、看護専門学校に第一期生が入学しますが、受験対象となる人は、主に今の高校2年生。試験科目がわかれば、と思っている人も多いと思いますが、現在検討中でまだ決まっていません。
そこで、現在開校している学校の例を紹介します。
○国立東静病院附属看護学校
国1・2、数1、英1・2、生物・化学より選択
○国立伊東温泉病院附属看護学校
国1・2、数1、英1・2
○静岡済生会看護専門学校
国1、英1、数1、生物・化学より選択、適正検査、面接
あなたも仲間になりませんか
富士市立中央病院看護士 西田英明さん
- 写真あり -
看護学校では50人の中に男は二人だけ。初めはとまどいましたが同じ目的を持つ仲間、すぐ打ち解けました。中央病院には看護士が5人。四人は手術室、私は透析室で働いています。患者さんがどんどん回復するのを見たり、「ありがとう」なんて言われると疲れも吹き飛びます。あなたも仲間になりませんか。
人間性を養うには看護婦(士)が一番
富士市立中央病院総婦長 山田八重子さん
- 写真あり -
人のために心と体を使うことによって人間性が育つ。人間性を養うには、看護婦や看護士の仕事が一番適してるって自負しています。現在全国で、5万数千人の看護婦や看護士を養成していますが、平成9年には9万人も必要になります。
一人でも多くの人に、看護の道を進んでほしいですね。
内容の充実した看護専門学校に
杉村朝子先生(仮称・富士市立看護専門学校の教務主任)
今、私たちは平成5年の開校に向けて、準備を進めています。目標は施設・教育内容ともに充実させ、看護の専門職として次代を担うにふさわしい卒業生を送り出すことです。
「教員と学生が、ともに考えともに学ぶ」そして「学ぶことの楽しさを味わう」、そんな学生生活の中で、看護の第一歩を踏み出してみませんか。
入学試験は、平成5年2月を予定しています。
問い合わせ
仮称・富士市立看護専門学校について
看護専門学校開設準備室 内線2060
看護婦の採用について
市立中央病院52-1131
- 写真あり -
( 写真説明 ) 起工式で鈴木市長があいさつ
- 図表あり -
( 図表説明 ) 仮称・富士市立看護専門学校 完成予想図
( 図表説明 ) 看護婦(士)への道
( 図表説明 ) 位置図
添付ファイル
※PDFを初めてご覧になる方は、ソフト(Adobe Reader)のダウンロードが必要です。
「Get Adobe Reader」のボタンをクリックし、説明に従いAdobe Readerをダウンロードして下さい。
広報広聴課 (市庁舎8階北側)
電話:0545-55-2700 ファクス:0545-51-1456
メールアドレス:kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp