千鳥町の人助け稲荷のキツネ
富士南地区の千鳥町に「人助け稲荷」と呼ばれる小さなほこらがあります。今回と次回は、千鳥町の石川雅也さん(54歳)に伺った、ここのキツネのお話です。
石川さん
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命を救う稲荷さん
人助け稲荷の周辺は、稲荷島と呼ばれています。今は小さな林ですが、昔はうっそうとした森があり、キツネが住んでいました。森は夜でも目を凝らせば見え、津波や洪水で逃げ遅れた人は皆、この森へ逃げました。
森の松につかまれば助かったので、稲荷さんをいつしか人助け稲荷と呼ぶようになりました。
一人多いぞ……
昭和の初めごろのことです。
浜で、夜、5人から6人の人が投げ網を打っていました。寒い夜でしたので、それぞれが持ってきたわらを河原木と一緒に燃やしては、暖をとりました。
パチパチとわらはよく燃え、わらに残っていたもみがはぜら菓子のようになって、香ばしい香りを漂わせました。
ふと気がつくと、薄暗い中で人が一人多くなっていました。
「一人、二人、三人…おや」なんと若く美しい女の人が仲間になっているではありませんか。
火に当たっていたみんなは、なぜかほっとして話し込み、楽しく過ごしました。
はぜら菓子が好き
「さて、もう一網打つかい」そう言ってみんなは、女の人を残して海に向かいました。何げなく振り返った一人は、思わず目を見張りました。「おい、見ろよ。ありゃあイッケンだぜ」
指さす方を見ると、女の人が着物のすそを乱し、頭を下げてはぜら菓子を食べているではありませんか。そして、もっとよく見ると、それはキツネでした。キツネは、もみのはぜら菓子が好物だったのです。なお、イッケンとは、田子浦でキツネのことを言ったのでした。
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( 写真説明 ) 人助け稲荷
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図