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【広報ふじ平成2年】献血は見知らぬ人の命を救う

健康な人から病気の人への贈り物

 白い車体に赤い十字をつけた大型バスが、富士駅前や市役所西口などにとまっているのを、見かけたことがあるでしょうか。沼津の赤十字血液センターからやって来た、献血車です。緊急の事故や手術など、輸血の必要な人のために、善意の血液を求めて各地を巡回しています。平成元年度は、市内で1万1,018人が献血し、1万7,339本の血液が使われました。
 今回は、見知らぬ人の命を救う、献血についてお知らせします。
- 写真あり -
( 写真説明 ) (全血献血)200ミリリットルは2分から3分、400ミリリットルでも4分から5分で終わります

献血で健康チェック

 200ミリリットルの献血をすると、次のような検査結果を知らせてもらえます。定期的に献血すれば、自分自身の健康管理にも役立ちます。
ABO式血液型
 輸血のときに最も大切な血液型(赤血球の型)で、日本人は、40%がA型、30%がO型、20%がB型、10%がAB型です。あなたは自分の血液型を知っていますか。輸血は、同じ型を使います。
Rh式血液型
 赤血球にはAからDまで、5つのRh因子があります。そのうちのD因子がある人をRhプラス(陽性)、ない人をRhマイナス(陰性)といいます。日本人はマイナスが少なく、200人に1人ぐらいです。もちろんマイナスの人には、マイナスの血液を輸血します。
梅毒
 陽性を示した場合は、輸血用血液として使えません。
HBs抗原
 B型肝炎ウイルスに感染していないか調べます。
血清トランスアミナーゼ
 肝臓に含まれる酵素の一種で、肝炎などで肝臓の細胞が障害を受けた時に数値が上昇します。
アルカリフォスファターゼ
 骨の成長期や妊娠中に数値が高くなりますが、肝臓や胆道が悪いときにも高くなります。
総たんぱく
 病気などで栄養が悪くなったり、肝臓や腎臓が悪くなると、数値に異状がでます。
アルブミン
 アルブミンもたんぱく質の一種です。総たんぱくとほぼ同様の意味があります。
A/G比
 Aはアルブミン、Gはグロブリンで、その比が適正かどうかの指標です。体に異状があると、この比が低くなります。
尿素窒素
 腎臓の働きが悪いと、高い数値になります。
コレステロール
 中高年者には最も気になる数値ですが、これが高いと動脈硬化が促進されると言われています。脂肪の多い食事をとり過ぎていたり、肝臓、腎臓、すい臓、胆道などが悪いときにも高くなります。また、400ミリリットル献血や成分献血をした人には、赤血球数、ヘモグロビン量、白血球数、血小板数なども調べ、お知らせしています。
 このように、献血のたびに肝炎の感染、肝臓・腎臓の機能などを調べてもらえます。
 ちなみに、昨年度静岡県内では、22万3,204人の献血者がありましたが、前記の検査等で不合格(輸血用として使えない)となった人が、1万3,669人ありました。この数は、全体の6.1%にあたります。


市内の献血は少し低調

 献血は、主に沼津の日本赤十字血液センターからやって来た、献血車で行われます。献血車は3台あり、県東部の市町村を巡回します。
 巡回は、特定の地域に住む人を対象にしたもの、工場・事業所の従業員を対象にしたもの、高校・大学の生徒・学生を対象にしたもの、駅など人の多く集まる場所で、不特定の人を対象にしたものの、四つに分けています。
 昨年度市内で献血した人は、1万1,018人でしたが、工場・事業所での献血が最も多く全体の約半分、5千504人でした。次いで地域、学域、街頭の順で、不特定の人を対象とした駅前などでの献血は、以外と少ない人数となっています。
 昨年度の目標は1万6,000人でしたが、達成率は約69%と低調でした。


全血献血は200と400ミリリットル

 私たちの体内を流れている血液の量は、個人差はありますが、男性は体重1キログラムにつき約80ミリリットル、女性は70ミリリットルです。体重50キログラムの男性では4,000ミリリットル、女性では3,500ミリリットルの血液量となります。
 体内の血液量の15%以内(男性600ミリリットル、女性525ミリリットル)が失われても、医学的には問題ありません。
 現在の献血量は、200と400ミリリットルですから、十分この範囲に入ります。また、私たちとほぼ同じ体格の東南アジア諸国を含めた諸外国では、以前から、200から500ミリリットルの献血が、安全に行われています。
 献血できる年齢は、16歳から64歳までで、ほかに体重制限などもあります。ちなみに採血後数時間で血液量はもとにもどります。


目標80回

渡辺伊太郎さん(富士見台)
- 写真あり -
 献血は、10年以上前から始めたので、合計で55回になります。ほかに役立てるものがないので、せめて血液をと思い、10回、30回、50回と、目標を立てながら続けてきました。献血ができなくなる65歳まで、あと10年ありますから、80回まで頑張りたいと思います。


- 図表あり -
( 図表説明 ) 富士市の献血人数


ふやしていきたい成分献血

 成分献血は、簡単な装置を使って、自動的に血液中の血漿(けっしょう)や血小板だけを献血する新しい方法です。この場合、赤血球は献血者の体に戻ります。最も回復の遅い赤血球を戻しますので、体への負担が軽く、1週間から2週間の間隔で献血できます。
 成分献血は、白血病や血友病などの治療に欠かせない、血漿分画製剤(けっしょうぶんかくせいざい)の主原料となります。
 成分献血の装置は、沼津や静岡の血液センターにはありますが、富士市を巡回する献血車には積んでいません。そのため現在は、沼津まで出かけることになります。しかし、これでは献血者数が少ないため、10月1日から県や市町村の庁舎に装置を持ち込む、出張成分献血を始めました。
 ちなみに、昨年度沼津の血液センターで成分献血した人は366人、内46人が富士市民でした。また、今年度は、9月20日までに369人で、すでに昨年度を上回っています。
 来年の2月21日には、市庁舎で、出張成分献血を行います。
- 写真あり -
( 写真説明 ) (成分献血)毎週火・金曜日に沼津血液センターで実施しています 検査から採血終了まで、約1時間かかります


血漿分画製剤の原料が不足

 血漿の約90%は水で、残りの10%が固形成分ですが、その内の約70%がたんぱく質です。たんぱく質には、凝固因子、アルブミン、免疫グロブリンなど、多くの種類があります。
 凝固因子はさらに、12種類に分かれますが、その内の第8因子と第9因子は、血友病の人に欠かせないものです。
 アルブミンは肝臓でつくられ、血管内に水分や塩分を保持するために必要な、浸透圧を維持する重要な働きをし、急な出血ややけどなどの治療に使われます。また、ビタミンやホルモンなどを運ぶ働きもしています。
 免疫グロブリンは、白血球の一種のBリンパ球でつくられます。細菌やウイルスなどの感染症から、体を守る働きをします。
 このように、血液中のたんぱく質には、人が生きていくために欠かせない重要な働きがあります。この血漿の中にある凝固因子、アルブミン、免疫グロブリンを化学的に分離して取り出すことを分画といい、このようにしてつくられたものを血漿分画製剤といいます。
 血漿分画製剤は、日本各地で集められた血漿を原料に北海道の血液センターなどでつくられていますが、その量は使用量の10%にもなりません。そのため、原料となる血漿の90%は、外国からの輸入に頼っています。
 輸入血漿については、エイズ患者が発生するなど、深刻な問題も起きているため、成分献血の普及が急務となっています。
 市内で献血された血液が集められる沼津の血液センターからも、血漿を北海道に送っています。その量は、昨年度1,184リットルでした。また今年度は3,954リットル、来年度は5,000リットルの計画目標量になっています。


献血者登録制度

 特定の血液が不足した場合や、絶対量が不足している血漿を、安定して確保するために設けられたのが「献血者登録制度」です。全血献血と成分献血のいずれかを選択して登録します。また成分献血は血漿成分献血と血小板成分献血があり、必要に応じどちらかの献血をすることになります。
 血小板と白血球には、HLA型という血液型がありますが、大量の血小板輸血を受けている人の中には、抗体ができて治療効果が上がらなくなることがあります。このようなとき、HLA型の合った血小板輸血をすると治療効果が上がるので、登録者の中から適合する人に要請します。
 登録は、沼津血液センター、献血車、市社会課にある登録申込書で行います。


病気をうつされる心配はありません

 献血をするときに使われる針や血液のバッグなどは、一人ごとに新しいものと交換されます。ほかの献血者から、肝炎やエイズなどの病気がうつる心配は絶対ありません。安心して御協力ください。


献血された血液の流れ

 献血された血液は、そのまま(全血製剤)、あるいは遠心分離して血液成分製剤(赤血球製剤・血小板製剤・血漿製剤)として、さらに血漿分画製剤(血液凝固因子製剤・免疫グロブリン製剤・アルブミン製剤)として有効に活用されています。
- 図表あり -


こうして献血
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( 写真説明 ) 献血者を待つ移動採血車
( 写真説明 ) 外で受付
( 写真説明 ) 血液の比重測定のために採血
( 写真説明 ) 血圧測定と問診
( 写真説明 ) 採血

- 図表あり -
( 図表説明 ) 静岡県沼津市赤十字血液センター案内図


すぐ止血をしますが

市中央消防署救急隊員 石川哲也さん
- 写真あり -
 救急隊員を3年務めています。交通事故や労働災害の通報を受けて、救急車で出動しますが、出血していればすぐ止血します。腕や足を切断して、大量に出血した人を運んだこともありますが、献血された血を輸血して、助かった人も多いと思いますね。私も3回献血しましたが、これからも続けます。


健康なときに献血を

市立中央病院副院長 曽爾一顕(そじかずあき)さん
- 写真あり -
 手術は、外科だけでも年間700件を超えています。内、半分以上は大きな手術で、輸血を必要とします。また手術をしなくても、血漿などの成分輸血を必要とする患者さんも少なくありません。
 いつ皆さんが、そのような立場になるかもしれないことを考えれば、健康な人は、献血に積極的に協力したいものです。

献血に関する問い合わせ 社会課 内線 2321
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