滝川 鎧が淵(よろいがふち)のヘビ
原田を流れる滝川の永明(ようめい)寺西には、鎧が淵があり、ここには、大蛇が住んでいると言われていました。今回は、この話を原田の鈴木好郎さん(88歳)に教えてもらいました。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 鈴木好郎さん
釣りに夢中の治兵衛
大正のころのことです。原田に治兵衛(じべえ)さんという魚とりの好きな人がいました。
治兵衛さんはある日、鎧が淵に釣りに出かけました。淵は深く、周りには木が生い茂って、薄暗い場所です。しかも、大蛇が住んでいるという言い伝えもあり、治兵衛さんはビクビクしながら釣りをしていました。
ところが、その日は大きなヤマメがよく釣れました。治兵衛さんは、いつしか時のたつのも忘れて釣りに夢中になりました。
川に落ちたヘビ
「きょうは本当によく釣れるのう」などと言いながら、釣り糸を垂らそうとしたときです。釣りざおの先が木の枝に引っかかりました。治兵衛さんが上を見ると、小枝に小さなヘビが絡みついているのを見つけました。
治兵衛さんはいたずら半分に、釣りざおでヘビを突っつきました。すると、ヘビは水面に落ち、水の中へ潜っていきました。
ところが、どうでしょう。急に水面に泡が立ち始めました。泡は、見る見るうちに淵いっぱいになり、治兵衛さんを包み込んでしまいそうになりました。
治兵衛さんは驚いて、一目散に逃げ出しました。そして、友達に「もう俺は鎧が淵では魚をとらないぞ」と首を縮めて話したと言うことです。
淵でよく遊んだよ
鈴木さんは「この話は、若いころ近所の人から聞きました。治兵衛さんは実在した人で、魚取りの名人だったよ。滝川は今の10倍ぐらいの水量で、鎧が淵は3メートルぐらいの滝になっていたね。恐ろしい所だったけど、よく遊んだよ」と語ってくれました。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図