ほんの10数年前まではせっせと使われていた道具も、今はひっそり眠っています。そんな道具を、大勢の人に見てほしいから、珍らしい物だからと、市立博物館へ寄贈してくださいます。
どんな人がつくってどんな風に使われたのか、残された個性派の道具たちにスポットを当て、今回からシリーズでお送りします。
●おばあちゃんのひな形着物
中里の飯島昭代さん
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「これが、お宮参りの着物で比翼(ひよく)仕立ての単衣本重(ひとえほんがさね)ね。こちらが、一ッ身(ひとつみ)。かみしもにはかま。母は、いろいろつくって、裁ち方や縫い方を練習したんでしょうね。
寄贈していただいたひな形着物は、40点。今は亡き飯島綾路さんが、束京裁縫専門学校当時にせっせとつくり続けたものです。綾路さんは、明治29年生まれ。専門学校入学は大正の初めだったといいますから、ひな形着物は、どれも70年以上はたっています。
「飯島の家は、中里陣屋と呼ばれていましたから、古文書や古い物がたくさんあるんです。蔵を整理していてこれを見つけました。」
残されていたひな形着物はとてもていねいにつくられ、形は少しも崩れていません。
着物は、私たちの生活の歴史とともに移り変わってきました。洋服万能時代の今、すっかり影をひそめてしまいましたが、小さな形に込められた大きな魂が伝わってきます。