田子の浦地区の柳島にある福泉寺というお寺には、高さ20センチぐらいの石のお薬師様があります。今回は、この石仏のお話を住職の岩佐善公(よしきみ)さんに伺いました。
岩佐さん
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波打ちぎわで光る仏様
昔、弘法大師が土佐の浜辺の村で、石のお薬師様を刻みました。
それから何百年かたったある年の秋のことです。大磯(神奈川県)の海岸に光る物があり、村人の評判になりました。しかし、漁師は怖がってたれも近寄りません。
そのころ、大磯で曽我兄弟の菩提(ぼだい)を弔って、ひっそりと暮らしていた虎御前が、「私が行って見てきましょう」と言って、その光る物を拾って来ました。それは、石のお薬師様でした。
ある日、近くを西行法師が通りかかったので、虎御前はお薬師様を見てもらいました。すると「これは弘法大師の作だ。大切にしなさい」と言われ、虎御前は、ねんごろにお祭りしました。
仏様を福泉寺へ
次の年、曽我兄弟の7回忌を済ませた虎御前は、尼の姿で信濃の善光寺へ敢立ちました。そして善光寺でおこもりをした後、諸国巡礼の旅に出、信州の佐久というところで亡くなりました。
そのとき、虎御前はお薬師様を使いの者に頼んで「富士のふもとの福泉寺というお寺は、曽我兄弟をお祭りしてあります。どうかこの仏様を福泉寺へ…」と言って息を引き取りました。
ところが、使いの者が鷹岡の福泉寺と柳島の福泉寺を間違えて、柳島の方へ届けましたので、その後、このお寺でお薬師様をお祭りしています。
自然と信仰心がわく
岩佐さんは「お薬師様を見ると古さの中に歴史を感じ、自然と信仰心がわいてきます」と語ってくれました。
*お薬師様は一般公開していません。
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( 写真説明 ) お薬師様